兵庫県で唯一人口が増えた明石市。その伸びが3分の1になった

2025年の国勢調査の速報値で、明石市の人口は307,043人でした。2020年の調査から3,442人の増加です。神戸新聞の報道によれば、前回調査から人口が増えたのは兵庫県内41市町のうち明石市だけでした。13年連続の増加です。
ここまでを読むと、明石は関西でも例外的に強い街だ、という結論になります。実際、そう間違ってはいません。ただし、同じ数字をもう一段だけ細かく見ると、別の線が浮かんできます。2015年から2020年にかけての5年間で、明石市の人口は10,192人増えました。増加率にして3.47%です。それが直近の5年では1.1%。伸びは、およそ三分の一に縮んでいます。
増えてはいる。しかし、増え方は明らかに変わった。そして市自身も、その前提で計画を立て直しています。丸谷聡子市長の令和8年度の施政方針には、目標として「30万人を維持」という言葉が置かれています。「増やす」ではありません。
この記事では、明石市の「いまの姿」を、都合の良いところだけを拾わずに書いてみます。人口の伸びの変化、7つに増えた無料化、プレハブ校舎の2棟目が建つ中学校、市境のほぼ全域が神戸市と接しているという地理、JRと山陽電鉄で違う駅の性格、きれいになりすぎた海、そして大蔵海岸に立つ慰霊碑のこと。長い記事になりますが、この街に長く住んでこられた方ほど、途中で思い当たる箇所があるはずです。
兵庫県で唯一増えた街の、伸び幅が三分の一になった
まず人口の話から始めます。ここを曖昧にしたまま先に進むと、あとの話がすべて甘くなります。
明石市が公表している推計人口では、2026年8月1日現在で307,034人、138,074世帯です。男性147,948人、女性159,086人。30万人を超えた状態が続いています。
国勢調査で見ると、こうなります。令和2年(2020年)の国勢調査で303,601人、133,647世帯。2025年の速報値が307,043人。5年間で3,442人、1.1%の増加です。
この1.1%という数字を、その前の5年と並べてみてください。2015年から2020年の5年間は、人口が10,192人、3.47%増えています。同じ5年の物差しで比べて、10,192人が3,442人になった。増えた人数は三分の一になり、増加率も3.47%から1.1%へ落ちています。
これは「増加が止まった」という話ではありません。事実として増えていますし、兵庫県内で増えたのは明石市だけです。周囲がみな減っている中で増えているのですから、相対的な位置はむしろ強くなっています。しかし、同じ勢いで増え続けているわけではないということも、同時に事実です。
不動産の話に引きつけるなら、この違いは小さくありません。人口が年々大きく増えていく街と、増えてはいるが伸びが鈍ってきた街とでは、住宅需要の先行きの読み方が変わります。前者なら「これから足りなくなる」ですが、後者は「いまはまだ足りているが、この先は分からない」という状態です。明石はいま、後者に近づいています。
ひとつ補足しておきます。307,034人(2026年8月の推計)と307,043人(2025年国勢調査速報値)は、9人しか違いません。ただしこの二つは調査の方法が違うもので、単純に「1年で9人減った」と読むべき数字ではありません。推計人口は住民基本台帳をもとに毎月更新されるもので、国勢調査は実際に住んでいる人を数えるものです。数え方が違うので、どちらが正しいという話でもありません。並べて見るときは、そこだけ気をつけていただければと思います。
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市の目標は、もう「増やす」ではない
人口の伸びが鈍っていることを、いちばんはっきり認めているのは市自身です。
丸谷聡子市長の令和8年度施政方針に、こう書かれています。「現在、明石市の人口は13年連続で増加していますが、将来的には人口減少が予想されます。今後は、目標人口である30万人を維持」。
この一文には、二つのことが含まれています。ひとつは、将来的な人口減少を市が明確に予想していること。もうひとつは、目標がすでに「増加」ではなく「30万人の維持」に変わっていることです。
行政の文書としては、かなり率直な書き方だと思います。13年連続で増えている、というのは行政にとって数少ない誇れる数字です。それを掲げたまま「これからは維持です」と言うのは、当然ながら気持ちのいい話ではありません。それでも施政方針に書いてある。
そして「30万人の維持」という目標の意味を、もう少し具体的に考えてみます。現在が約307,000人ですから、30万人までには約7,000人分の余裕があります。7,000人減っても目標は達成される、という言い方もできてしまいます。裏を返せば、市はそのくらいの幅で減ることを織り込んだうえで計画を立てている、と読むこともできます。
これは悲観的な話として書いているのではありません。むしろ、住まいの判断をするうえでは、「これからも増え続けます」と言われるより、はるかに使える情報です。市が10年後、20年後に何人の街であることを前提に、道路や学校やごみ処理施設を設計しているのか。それが分かるということですから。
この街のインフラは、いま30万人規模を前提に組み直されている最中です。新しい市役所も、新しいごみ処理施設も、その前提の上に建っています。あとの章で触れますが、それらの施設の完成予定は2028年度から2030年度にかけてです。いま計画されているものは、これから20年、30年と使われるものです。
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人口の数字を見るときに、もうひとつ並べて見ておきたい数字があります。世帯数です。
2015年から2020年の5年間で、明石市の人口は10,192人増えました。増加率3.47%です。同じ5年間で、世帯数は11,757世帯増えています。増加率にして9.65%です。
並べると、はっきり差が出ます。人口は3.47%、世帯は9.65%。世帯の増え方が、人口の増え方の3倍近い。
ここから何が言えるか。これは私たちの解釈であって、市が公表している分析ではありませんので、そのつもりでお読みください。世帯数が人口より速く増えているということは、1世帯あたりの人数が小さくなっているということです。同じ人数を、より多くの世帯で分け合っている状態です。
公表されている数字から単純に割り算をしてみます。2020年の国勢調査は303,601人・133,647世帯ですから、1世帯あたり約2.27人。2026年8月の推計は307,034人・138,074世帯ですから、約2.22人。2015年の値も、増加分から逆算すれば約2.41人になります。あくまで公表数値を割っただけの計算ですが、1世帯あたり2.4人だった街が、2.2人台の街になってきているという向きは見えます。
2.2人という数字を、実際の家族に置き換えてみてください。夫婦二人。親と子の二人。あるいは一人暮らし。4人家族や5人家族が平均を押し上げる構造には、もうなっていません。
これは持ち家をお持ちの方にとって、直接に効いてくる話です。4LDKの戸建てや、部屋数の多いマンションが、いまの平均的な世帯像とだんだん噛み合わなくなってきているということだからです。子ども部屋を二つ用意した家は、二人で暮らす世帯には広すぎます。広さがそのまま価値になるとは限らない、という状況が、統計の上ではすでに始まっています。
もちろん、明石には子育て世帯が転入してきています。あとの章で見るように、東部の中学校がプレハブ校舎を建て増しするほどには来ています。ただ、市全体を平均すれば、世帯はどんどん小さくなっている。子育て世帯が増えている地区と、世帯が小さくなっている全体の傾向が、同じ市の中で同時に進んでいる。そう読むのが実態に近いと思います。
無料化は5つではなく、いま7つある
ここで、市内でよく耳にする誤解をひとつ解いておきたいと思います。
明石市といえば「5つの無料化」という言葉が、長く街の代名詞のように使われてきました。そして市長が代わったあと、「支援が減ったらしい」「以前ほどではなくなった」という話を聞くことがあります。
これは、事実と違います。市が現在公表している内容は「5つの無料化」ではなく「7つの無料化」です。増えています。しかもすべて所得制限なしです。
中身を挙げます。
- こども医療費(高校卒業まで)
- 第2子以降の保育料
- 0歳児のおむつ定期便(生後3か月から1歳まで、月およそ3,000円相当)
- 1か月児健診の費用助成(6,000円。令和7年度からの開始です)
- 小学校給食
- 中学校給食
- 公共施設の入場料(天文科学館、文化博物館ほか)
このうち、あとから加わったのが1か月児健診の費用助成です。令和7年度から始まっています。つまり直近でも支援は追加されている、というのが実際のところです。
「所得制限なし」という条件も、地味ですが重要です。所得制限のある支援は、対象から外れる世帯にとっては存在しないのと同じですし、線の少し上にいる世帯には不公平感が残ります。所得制限を設けないという設計は、財政的には負担が大きい代わりに、その不公平感が生じません。
なぜ「減った」という受け止めが広がったのか。想像の域を出ませんが、施策の名前や打ち出し方が変わったことが大きいのではないかと思います。以前は無料化そのものが街の看板として強く前に出ていました。いまは施策の数が増えたぶん、一つひとつの見え方が分散しています。看板の目立ち方と、中身の量は別のものだということです。
持ち家をお持ちの50代60代の方には、直接は関係ない話に見えるかもしれません。しかし関係があります。この街に子育て世帯が入ってくるかどうかは、住宅がどう動くかに直結するからです。明石の住宅需要を支えているものが何なのかを知っておくことは、ご自宅の将来を考えるときの土台になります。
2026年度は、小学校給食が完全に無償になる
2026年度、つまり令和8年度に市が予定していることも、神戸新聞の報道で分かっています。
まず小学校給食の完全無償化です。これは前年度に先行実施していたものを、完全な形にするものです。
そして不妊治療費助成のモデル事業。特徴は、年齢制限も回数制限もないという点です。不妊治療の公的支援は、多くの場合ここに線が引かれます。年齢で、あるいは回数で区切る。その線を引かない形での助成をモデル事業として始める、というのは、かなり踏み込んだ設計です。
さらに多胎児家庭への支援拡充。双子や三つ子を育てる家庭は、単純に子どもの人数が倍になるという以上に負担が集中します。人数の少ない層ですから、施策としては目立ちにくい部分です。
そして全小中学校への校内フリースペースの設置。教室に入りづらい子どもが、学校の中にいられる場所をつくるという施策です。「学校に来られない子」を学校の外で支えるのではなく、学校の中に居場所をつくる。全校に置く、という点が重要です。一部の学校だけにあると、そこへ通える子と通えない子が分かれてしまうからです。
この4つの並べ方には、ひとつの傾向が出ています。全体に広く配るものと、少数に深く配るものが、両方入っているということです。給食の無償化は全員に等しく効きます。不妊治療、多胎児、フリースペースは、当てはまる人には大きく効きますが、人数は限られます。予算の配り方として、この両方を持っているのは珍しいことではありませんが、その組み合わせ方に市の考え方が出ます。
学校施設についても動きがあります。市内全28小学校の体育館に、空調が整備されます。来年度中の予定です。夏の暑さ対策であると同時に、体育館は災害時の避難所になる場所でもあります。空調のない体育館に真夏に避難することがどういうことかは、近年の災害報道で繰り返し伝えられてきました。28校すべてに入る、というのは、避難所の環境が市全体で一段変わるということでもあります。
「3つのゼロ」と、120億円の残高
子育て以外の暮らし向きの施策も見ておきます。物価高への対応として、市は「暮らしの負担 3つのゼロ」を打ち出しています。
- 水道基本料金の4か月無償化
- 小学校給食無償化の先行実施
- 高齢者のインフルエンザ予防接種の無償化
この3つの組み合わせは、対象がきれいに分かれています。水道基本料金は全世帯に効きます。給食は子どものいる世帯。インフルエンザ予防接種は高齢者。世代でいえば、ほぼ全部が入ります。
水道の基本料金というのは、使っても使わなくてもかかる部分です。単身の高齢世帯でも、家族の多い世帯でも、等しくかかります。ここを4か月ぶん止める、というのは、金額としては派手ではありませんが、確実に全世帯に届く配り方です。
加えて、プレミアム率50%のデジタル商品券も実施されています。プレミアム率50%というのは、支払った額の1.5倍が使える、という水準です。
ここまで読んで、「そんなに配って財政は大丈夫なのか」と思われた方もいると思います。その疑問は当然のものですから、公表されている数字を置きます。
令和6年度の決算で、実質単年度収支は約2億円の黒字でした。そして財政基金など3基金の残高は120億円を維持しています。基金というのは、自治体の貯金にあたるものです。
令和8年度の予算規模も出ています。予算総額は2,488億1,067万4千円。うち一般会計が1,515億2,367万4千円です。
2億円の黒字という数字は、1,500億円規模の一般会計から見れば、決して大きな余裕ではありません。黒字ではあるが、薄いという水準です。120億円の基金残高も、取り崩さずに維持している点は評価できますが、これも一般会計の1割に届きません。
つまり、明石市の財政は「潤沢だから配れている」のではなく、収支をぎりぎり黒字で保ちながら配っている状態だと読むのが正確です。市長が施政方針で「インフラ整備は、覚悟を持ちつつも丁寧に進める」と述べているのは、この状況を踏まえた言い方でしょう。「覚悟を持ちつつも丁寧に」というのは、やるがゆっくりやる、という意味に近いと思います。
これから市が抱える大きな支出は、はっきりしています。市役所の新庁舎に約187億円。新しいごみ処理施設。消防の新分署。西明石と大久保の駅前整備。どれも数年のうちに順番に来ます。配る施策と、建てる施設が、同じ財布の中にある。ここが明石市の財政のいちばん難しいところだと思います。
校長室が、第2職員室になった
ここからは、人が増えたことの副作用の話をします。市の広報には出てこない、しかし現場では毎日起きている話です。
神戸新聞が報じた、大久保北中学校の状況です。
この学校の生徒数は、2021年度に698人でした。それが2025年度には912人になっています。4年間で214人の増加です。
214人というのは、1学年ぶんに近い人数です。それが4年で乗ってきた。教室が足りなくなり、プレハブ校舎を1棟建設しました。ところが35人学級への対応もあって、それでもなお足りません。そこで2棟目の建設が決まっています。
校内での対応も報じられています。校長室を第2職員室に転用。会議室を教室に転用。そして生徒の相談は、保健室や図書室で対応しているとのことです。
この三つの事実を並べると、学校の中で何が起きているかがよく分かります。校長室がなくなるということは、校長先生が自分の部屋を明け渡したということです。会議室が教室になれば、先生方は打ち合わせの場所を探すことになります。そして相談室がないので、生徒の相談は保健室や図書室で行われる。相談というのは、他人に聞かれない場所でするものです。その場所が学校の中から減っている、ということでもあります。
この学校の歴史も、報道の中で触れられています。大久保北中学校は、1987年に大久保中学校から分離してできた学校です。つまり、かつて大久保中学校が大きくなりすぎたから、分けてつくられた学校です。その学校が、宅地開発によってふたたび大規模校になっている。
40年近く前に一度解いた問題が、同じ場所で再発しているという構図です。
ここは、この記事でいちばん正確に書きたい部分です。これは子育て支援が失敗した結果ではありません。成功した結果です。7つの無料化があり、所得制限がなく、そのために子育て世帯が転入してきた。そして東部の学校が、物理的に足りなくなった。
施策の効果は、しばしばこういう形で現れます。人を呼ぶ施策は、人が来たあとの受け皿を同時に用意しなければ成立しません。学校の校舎は、施策の翌年に建つものではありません。用地を確保し、設計し、予算をつけ、建てる。その間、生徒はもう学校にいます。だからプレハブになります。
そして、この状況は不動産の話にもそのまま接続します。学校が過密になっている地区は、住宅が売れている地区です。新しい家が建ち、若い世帯が入り、子どもが増える。売る側から見れば需要のある地区だということですが、住む側から見れば教室が足りない地区でもある。同じ現象を、どちらの側から見るかで意味が変わります。
市境のほぼ全域が、神戸市と接している
地理の話に移ります。明石市を理解するうえで、いちばん基本的で、しかし意外と意識されていない事実があります。
明石市は東西に細長く、南は播磨灘に面しています。海の向こうには淡路島があります。そしてもうひとつ。陸側の市境は、そのほぼ全域が神戸市と接しています。
これは、地図を広げてみるとよく分かります。東も、北も、そして西の一部も、隣は神戸市です。明石市は、海と神戸市に挟まれた細長い土地に乗っている、という形になります。
この地理条件は、街の性格に決定的な影響を与えています。市境をまたぐことが、そのまま神戸市に入ることを意味するからです。買い物先、通勤先、通院先、進学先。どの方向へ出ても、隣は政令指定都市です。
そして、その神戸の中心まで、電車で15分です。JR明石駅から三ノ宮まで新快速で15分。大阪までは37分。この数字は、通勤という観点ではかなり強い部類に入ります。
三ノ宮まで15分というのは、感覚として説明が難しい距離です。神戸市内の駅でも、三ノ宮から15分かかる場所はたくさんあります。市が違うだけで、通勤の体感距離としては神戸市内と変わらない場所がある、ということになります。
この街を「神戸のベッドタウン」と呼びたくなる誘惑は、ここから生まれます。ただし、私たちはその言い方はしません。この街には、あとで触れるように大きな工場が複数あり、そこで働く人が通ってきています。どちらの流れが大きいのかを示す統計を私たちは確認できていませんので、断定はしないでおきます。
ひとつ確かなのは、明石は「出るのも簡単だが、入ってくるのも簡単な街」だということです。市境の向こうがすべて神戸市であるということは、住民が神戸へ出ていきやすいのと同じ強さで、神戸から人が入ってきやすいということでもあります。人口が13年連続で増えてきた背景には、この地理の条件が確実に効いています。
そして、この地理は東西に細長いという形とも組み合わさります。細長い市域を、鉄道が東西に貫いている。次の章はその話です。
JRの駅と、山陽電鉄の駅は、街の速度が違う
明石市には、二本の鉄道が東西に走っています。JRと山陽電鉄です。この二本は、ほぼ並行して走っていますが、駅の性格がまったく違います。
JR側の駅は、東から明石、西明石、大久保、魚住、土山と並びます。山陽電鉄側には、人丸前、林崎松江海岸、藤江といった駅があります。
この二つの並びを見比べると、駅の置かれ方が違うように見えます。JRは市内の主要な地点を大きく拾い、山陽電鉄はその間を細かく刻んでいます。駅が細かく置かれているということは、それだけ駅が生活に近いということです。歩いて行ける駅がある、という状態が成り立ちやすくなります。
一方でJRは、新快速や快速が走ります。三ノ宮まで15分、大阪まで37分という数字は、JRの側の数字です。遠くへ速く行くのがJR、近くを細かく拾うのが山陽電鉄、という役割分担が、そのまま駅前の街のつくりに出ています。
JR沿線の駅前は、それぞれ規模と役割を持っています。明石駅は市の中心で、あとで触れる再開発ビルがあり、山陽電鉄の山陽明石駅と隣接しています。西明石駅は新幹線が停まる駅で、いま駅前が大きく変わろうとしています。大久保駅の周辺は、宅地開発が進んだ東部の中心で、先ほどの中学校の話につながる地区です。魚住、土山と西へ行くにつれて、駅前の密度は落ち着いていきます。
山陽電鉄沿線の駅は、それとは別の時間が流れています。人丸前は天文科学館のある高台のふもと、林崎松江海岸は名前がそのまま海岸を指しています。藤江もまた海に近い側の駅です。駅名に海岸の名がそのまま入る駅がある、というだけで、その沿線の性格はかなり伝わります。海までの距離が近い分、街の空気が違います。
この二本の鉄道の違いは、住んでいる方には説明するまでもない話だと思います。ただ、外から明石を見る人には、これが見えません。「明石市内」と一括りにされると、JR大久保駅の周辺と、山陽電鉄の海側の駅の周辺が、同じ街として扱われてしまいます。同じ市の中に、少なくとも二本ぶんの違う軸がある。ここは強調しておきたいところです。
もうひとつ。市域が東西に細長いということは、南北の距離が短いということでもあります。北の市境から南の海まで、そう遠くありません。だから、海に近い側と北側とで、街の性格の差が生まれやすい。海を見て育った方と、北側の住宅地で育った方とでは、同じ明石市民でも風景の記憶が違うはずです。
川崎町一番地に、この街の産業の重心がある
明石を語るときに、海と子育てばかりが話題になりますが、この街には大きな製造業の集積があります。
川崎重工業の明石工場です。所在地は明石市川崎町1番1号。町名そのものが会社名になっている、という時点で、この工場と街の関係が分かります。
同社が公表している明石工場の生産品目は、次のとおりです。二輪車、汎用ガソリンエンジン、AIV(無人搬送車です)、各種ロボット、航空機用ジェットエンジン、舶用ガスタービン、ガスタービン発電設備。
この並びは、なかなか独特です。バイクと、産業用ロボットと、航空機のジェットエンジンと、船のガスタービンが、同じ工場の名前のもとに並んでいます。技術としては、いずれも「動力をつくる」という一点でつながっているのだと思いますが、製品としてはまったく別の世界に出ていくものです。
明石には、ほかにも企業が立地しています。カワサキモータース、ノーリツ、三菱重工業、富士通。給湯器のノーリツ、重工業の三菱重工、電機・情報の富士通。業種の幅が広いのが特徴です。
この事実は、街の見え方をひとつ変えます。冒頭で「神戸のベッドタウン」と呼ばないと書いたのは、このためです。明石は、朝になると人が出ていくだけの街ではありません。朝、この街の工場へ通ってくる人もいます。どちらが多いかを示す統計を私たちは確認していませんので、比率の話はしません。ただ、雇用の場が市内にあるという事実は、街の性格を考えるうえで無視できません。
製造業の集積があるということは、住宅市場にも影響します。工場に通う人が市内や近隣に住み、その人たちが家を買う。転勤や異動で入れ替わりもあります。子育て支援に惹かれて来る層と、仕事の場所として来る層が、この街には両方いるということです。
そして、製造業の街には固有のリスクもあります。大きな工場が縮小したり移転したりすれば、周辺の街に影響が出ます。これは全国どこでも起きてきたことです。明石でそれが起きるという話をしているのではありません。ただ、街の支えが何によって成り立っているのかは、知っておいたほうがいい種類の情報です。
市役所は、いまの場所で建て替わる
ここからは、いま街の中で進んでいる工事の話をします。長く住んでいる方ほど、日々の移動の中で「あれは何になるのだろう」と思っている場所があるはずです。
いちばん大きいのは市役所です。
新庁舎の建設地は、中崎1丁目5-1。現在の庁舎の敷地です。別の場所へ移るのではなく、同じ場所で建て替えます。
工程はこうなっています。2025年5月に着工。工期は2029年9月まで。契約金額は186億7,800万円で、施工は鴻池組。供用開始は2028年度の予定です。
すでに影響は出ています。2025年7月22日から、駐車場とバス停が移転しました。市役所に用事のある方は、もうこの変更を体験されていると思います。工期が2029年9月までですから、この状態があと数年続きます。
186億円という金額を、先ほどの財政の数字と並べてみてください。一般会計が1,515億円、3基金の残高が120億円。新庁舎1棟の契約金額が、基金の残高を上回っています。もちろん庁舎建設は複数年に分けて支払われますし、地方債などの財源も使われますから、単純に基金から出るわけではありません。ただ、規模感としてはそういう買い物だということです。
市長が「インフラ整備は、覚悟を持ちつつも丁寧に進める」と述べているのは、こういう支出を前にした言葉だと読めます。
市役所の建て替えは、街にとっては地味な工事です。商業施設のように新しくにぎわいをつくるわけではありません。しかし、災害時の拠点であり、行政機能の中心です。建て替えないという選択肢がない種類の建物でもあります。
西明石は2026年、大久保はその先
駅前の話をします。明石市内では、いま複数の駅で同時に整備が進んでいます。
西明石駅から。駅ビル、改札、駅前広場が2026年6月に供用開始の予定です。そして地域交流センター「icoitto(イコイット)」は2027年度とされています。
つまり西明石は、二段階で変わります。まず2026年に駅そのものと駅前広場。その翌年度に交流施設。西明石は新幹線が停まる駅ですから、市外から明石へ来る人が最初に降りる駅にもなります。その駅の顔が変わる、というのは市にとって象徴的な工事です。
大久保駅のほうは、まだ手前の段階です。駅周辺の市有地の利活用について、全体構想が2025年3月に策定されました。そして新しい大久保市民センターの基本計画が2026年4月に策定される予定です。
順番でいえば、構想があり、基本計画があり、そのあとに設計、そして工事という流れになります。大久保はまだ「何を建てるか決める」段階です。西明石が来年もう使えるようになるのに対して、大久保はこれから数年かかります。
ひとつ、数字として残しておきたいことがあります。2026年2月に開かれた説明会の参加者は42人でした。
この42人という数字を、どう読むかです。大久保は、先ほどの中学校の話に出てきた地区です。生徒が4年で214人増えるほど人が入ってきている地区で、その駅前をどうするかという説明会に42人。街の関心が、まだそこに向いていないとも読めますし、平日の昼間に開かれる説明会に働き盛りの世帯が来られないだけ、とも読めます。
いずれにせよ、駅前の計画は、いま決まったことが20年30年と残ります。市民センターの場所と大きさは、その地区の高齢者の暮らしにも、子育て世帯の暮らしにも効いてきます。いちばん人が増えている地区の駅前を、42人で議論しているという状態は、事実として置いておく価値があると思います。
ほかにも工程が公表されているものがあります。新しいごみ処理施設は2030年度の竣工予定。新しい中崎分署は2027年度の供用開始。山陽電鉄の藤江駅は、2027年度に駅舎、2028年度に施設の供用とされています。
並べると分かるように、2026年度から2030年度にかけて、この街の主要な公共施設がほぼ一斉に入れ替わります。市役所、ごみ処理施設、消防分署、駅、駅前広場、市民センター。5年ほどの間に、街の骨格をなす施設が順番に新しくなっていく。これは偶然ではなく、老朽化の時期が重なった結果でしょう。財政の話と、この工程表は、同じ紙の裏表です。
明石駅前については、2016年に開業したパピオスあかしがあります。明石駅前南地区の第一種市街地再開発事業として整備されたもので、あかし市民広場が併設されています。駅を降りてすぐの場所に、屋内の広場がある。雨の日でも人が滞留できる場所が駅前にあるかどうかは、その街の駅前の使われ方を大きく左右します。
また、2026年8月には、市が観光交流センター「SHIRO TERRACE」のロゴを発表しています。
海がきれいになりすぎて、タコがいなくなった
明石といえば、タコです。しかし、この街に長く住んでいる方は、ここ数年の話をご存じだと思います。
神戸新聞の報道によれば、明石沖のマダコは2021年に記録的な不漁となりました。前年の25%以下という水準です。そして、それ以降も低い水準が続いています。
4分の1以下というのは、不漁という言葉ではやや足りない落ち込みです。前の年に4杯獲れていたところが1杯になる、ということですから。
問題は原因です。海が汚れたからではありません。逆です。
背景として指摘されているのは、瀬戸内海の水質改善による栄養塩の不足と、水温の上昇です。
栄養塩というのは、窒素やリンなど、植物プランクトンが育つのに必要な養分のことです。かつて瀬戸内海は、生活排水や工場排水によって栄養塩が過剰になり、赤潮が頻発しました。それを減らすために、長い時間をかけて排水の規制が進められ、水質は改善しました。
そして水がきれいになりすぎた結果、植物プランクトンが減り、それを食べる小さな生き物が減り、その先にいる魚やタコが減った。食物連鎖の根元が細くなったという説明です。
これは、なかなか受け入れがたい話だと思います。半世紀近くかけて海をきれいにしてきた努力が、別の問題を生んだ。しかも「もう少し汚してよい」という結論には簡単にはなりません。
市も動いています。施政方針の中で「豊かな海づくり」として、施肥散布の増量とアマモ場の造成が挙げられています。
施肥散布というのは、文字どおり海に養分を撒くことです。田畑に肥料を撒くのと同じ発想を、海に対して行います。アマモは海の中に生える草で、アマモ場は小さな魚や生き物の産卵場所・生育場所になります。養分を足すことと、生き物が育つ場所をつくることの、両方から手を入れているという構えです。
「きれいな海」と「豊かな海」は同じではない。この街は、それを漁獲量という具体的な数字で突きつけられた場所です。
住んでいる方にとって、これは魚の値段の話であると同時に、街の風景の話でもあります。明石という地名が全国に知られているのは、海の産物によるところが大きいからです。ブランドの土台が、いま揺れている。数字が示しているのは、そういうことです。
もちろん、海の資源は年によって変動します。数年で回復することもあります。ただ、2021年以降低い水準が続いている、というのが現時点で公表されている状況です。
大蔵海岸へ渡る橋で、2001年に起きたこと
大蔵海岸の話をします。この場所を語るときに、避けて通れないことがあります。静かに、事実だけを書きます。
2001年7月21日、明石市の花火大会の日でした。大蔵海岸公園とJR朝霧駅を結ぶ朝霧歩道橋で、群衆なだれが起きました。
11人の方が亡くなりました。うち9人が子ども、2人が70代の女性です。負傷者は247人にのぼりました。
この歩道橋は、会場へ向かう事実上唯一のルートでした。駅を降りた人が会場へ行くにも、会場から駅へ戻るにも、そこを通るしかなかった。行きと帰りの人の流れが、一本の橋の上でぶつかりました。
慰霊碑があります。「想の像」といいます。場所は大蔵海岸通1。毎年、追悼が行われています。2026年7月21日で、25年になりました。
この事故のあと、制度が変わりました。
2005年に、雑踏警備業務の検定制度が新設されました。そして2009年からは、一定規模以上のイベントで、この検定に合格した者を配置することが義務づけられました。
つまり、いま全国のどこかで大きなイベントが開かれるとき、そこに配置されている警備の仕組みは、この橋の上で起きたことを起点にしています。花火大会でも、音楽フェスでも、初詣でも同じです。明石で起きたことが、日本中のイベントの安全基準を変えた。
それは、失われた命の代償として制度が整った、ということでもあります。慰めになる話ではありません。ただ、事実として記録されるべきことだと思います。
大蔵海岸は、いまは海水浴場と公園がある、静かな場所です。海のそばを歩ける気持ちのよい場所です。訪れる方の多くは、そこで何があったかを知らないと思います。慰霊碑は、そこに立っています。
この場所について書くときに、私たちが気をつけたいのは、扇情的に扱わないことと、被害に遭われた方やご遺族について憶測を書かないことです。だからこの章は、事実と、そこから制度が変わったという一点だけにとどめます。
東経135度の線が、街の真ん中を通っている
明石市には、地図の上にしか存在しない線が引かれています。東経135度です。
この経線が、1886年から日本標準時の基準とされてきました。日本の時計が何時を指すかは、この線の上での太陽の位置で決まっています。
そして、その線の上に明石市立天文科学館が建っています。標準時の大時計があるのはこの建物です。
この事実は、住んでいる方には当たり前すぎて、価値として意識されにくいものだと思います。しかし、外から見ると相当に強い個性です。日本中の時計が、この街の上を通る線に合わせている。時計を見るという行為は、日本のどこにいても1日に何十回と行われます。その基準が、ここにある。
先ほど触れた「7つの無料化」の中に、公共施設の入場料が入っていました。対象には天文科学館と文化博物館が含まれます。つまり、明石の子どもは標準時の大時計を無料で見に行ける、ということになります。
これは施策としては小さな項目ですが、街の性格としては筋が通っています。街の象徴となる施設に、子どもが何度でも入れる。一度行って終わりではなく、何度も行ける。文化施設の使われ方としては、これは大きな違いです。
明石城については、姉妹編の歴史記事で扱いましたので、ここでは深追いしません。ただ、2026年8月に市が観光交流センター「SHIRO TERRACE」のロゴを発表していることは、先に触れたとおりです。名前のとおり、城を意識した施設です。
時計と、城と、海。この三つが、明石という街が外に向けて持っている顔だと思います。そのうち海については、前の章で書いたとおり、いま足元が揺れています。
空き家対策は、10年計画の折り返しにいる
住宅の話に近づいていきます。市がいま何をしようとしているかを見ます。
明石市空家等対策計画は、2021年度から2030年度までの10年計画です。そして、2023年6月の法改正を受けて、2024年12月に計画が変更されています。
10年計画のうち、いまは6年目にあたります。ちょうど折り返しを過ぎたあたりです。そして計画期間の途中で、法律のほうが変わった。だから計画も直した、という経緯です。
空き家の数や空き家率といった具体的な数字については、私たちが確認できていませんので、この記事では触れません。補助金の個別のメニューについても同様です。実際に検討される場合は、市の窓口で直接ご確認いただくのが確実です。
ここで書いておきたいのは、市が10年計画を持ち、途中で法改正に合わせて手を入れているという事実のほうです。人口が13年連続で増えている街でも、空き家対策の計画は必要だということです。
これは矛盾ではありません。人口が増えている街でも空き家は生まれます。むしろ、増えている街だからこそ、新しい住宅が建ち続け、古い住宅から人が移り、古いほうが空く、という循環が起きます。人が増えることと、空き家が増えることは、同時に起こりえます。
もうひとつ、市の新しい動きがあります。2026年度から「あかし共創プラットフォーム」を立ち上げ、民間提案制度を拡充するというものです。テーマとして挙げられているのは、移動支援、居場所づくり、空き家対策の3つです。
この3つの並びは、市がいま困っていることをそのまま表しています。移動支援は、車を運転しなくなった高齢者の足の問題です。居場所づくりは、高齢者にも子どもにも関わる問題です。そして空き家対策。いずれも、行政だけでは手が回りきらない領域だという共通点があります。
民間提案制度というのは、事業者や団体から「こういうやり方があります」という提案を受ける仕組みです。行政が枠組みを決めてから発注するのではなく、先に提案を募る。それを拡充するということは、市が自前だけでは解ききれないと判断しているということでもあります。
持ち家をお持ちの方にとって、この動きは無関係ではありません。空き家対策が市の重点テーマに入っているということは、市が「空き家になる前に動いてほしい」と考えているということだからです。
増えている街で、家をどうするか
ここまで、明石の現在をひととおり見てきました。ここからは、この街の姿が「家を持ち続けるか、手放すか」という判断にどう関わるのかを整理します。答えは出しません。材料を並べます。
ひとつめ。需要はあります。しかし、伸びは鈍っています。13年連続の人口増、兵庫県内で唯一の増加。この事実は強いものです。同時に、増加率は3.47%から1.1%に落ち、市の目標は「30万人の維持」に変わりました。「これからも増え続けるから、待てば有利になる」という前提は、市の計画とは食い違います。
ふたつめ。世帯は小さくなっています。人口が3.47%増える間に世帯は9.65%増えました。公表値を割ると、1世帯あたり2.4人台から2.2人台へ縮んでいます。これは私たちの計算による解釈ですが、向きは明確です。部屋数の多い家が、平均的な世帯像から離れていく方向にあります。ご自宅がどういう世帯に向く家なのかは、一度考えてみる価値があります。
みっつめ。地区によって、状況がまったく違います。東部の大久保では、中学校の生徒が4年で214人増え、プレハブ校舎の2棟目が建ちます。同じ市内でも、住宅が動いている地区とそうでない地区があります。そして、JR沿線と山陽電鉄沿線では駅の性格が違い、街の速度が違います。「明石市の住宅」と一括りにできるほど、この街は均質ではありません。
よっつめ。街の骨格が、これから5年で入れ替わります。市役所の新庁舎が2028年度、西明石の駅と駅前広場が2026年6月、藤江駅が2027年度から2028年度、新しい消防分署が2027年度、新しいごみ処理施設が2030年度。大久保の市民センターは2026年4月に基本計画です。周辺環境が変わる可能性が、いまは高い時期だということです。自宅の近くで何が計画されているかは、確認しておく価値があります。
いつつめ。市の財政には余裕がありません。令和6年度決算の実質単年度収支は約2億円の黒字、3基金残高は120億円。一般会計1,515億円の規模から見れば、薄い黒字です。そして新庁舎だけで契約金額186億円。市長が「覚悟を持ちつつも丁寧に」と述べている理由は、この数字にあります。いまある施策が、そのままの形で20年続くと決まっているわけではありません。
持ち続けるか、手放すか。決めるのはご本人です
これらを踏まえて、私たちがお勧めしたいことを三つ書きます。
ご自宅が、いまの明石でどういう層に向く物件なのかを、一度整理しておくこと。子育て世帯が転入している街ですから、学区と広さの条件が合う家には需要があります。一方で、世帯の平均人数は縮んでいます。駅からの距離、部屋数、階段の有無。同じ「明石市の戸建て」でも、向く相手はまったく違います。
ご自宅の周辺で、この5年に何が計画されているかを知っておくこと。市役所、駅前、市民センター、消防分署、ごみ処理施設。これらは市が工程を公表しています。近くで大きな施設が新しくなるのか、逆に工事が長く続くのか。どちらも住まいの環境に効きます。西明石のように来年変わる場所もあれば、大久保のようにまだ構想段階の場所もあります。時期を知っておくと、判断の順番が変わります。
判断を、選択肢が減る前にしておくこと。これは明石に限った話ではありませんが、住まいの判断は、先に延ばすほど選択肢が減ります。ご自身が動ける年齢のうちか、そうでなくなってからか。名義が整理されているうちか、相続を経たあとか。同じ家でも、条件はかなり変わります。市が空き家対策を10年計画で進め、共創プラットフォームのテーマに空き家を入れているのは、動かなくなってしまった家が現実にあるからです。
明石は、いい街だと思います。兵庫県内で唯一人口が増え、無料化は5つから7つに増え、三ノ宮まで15分で、海と城と時計がある。これは事実です。
同時に、増加率は三分の一に鈍り、市の目標は30万人の維持に変わり、東部の中学校ではプレハブ校舎の2棟目が建ち、明石沖のタコは2021年以降低い水準が続き、財政の黒字は薄い。これも事実です。
良い面と難しい面が、同じ街の中に並んで存在しています。どちらか一方だけを見て街を評価すると、判断を間違えます。
家を持ち続けるか手放すかは、街の状況だけで決まるものではありません。ご家族の事情、ご自身の年齢、これからの暮らし方。そちらのほうが、はるかに大きな要素です。ただ、街の状況を正確に知っておくことは、その判断の土台になります。決めるのはご本人です。私たちにできるのは、判断の材料を、都合よく加工せずにお渡しすることだと考えています。
よくある質問
明石市の人口は、これからも増えるのですか。
市自身は、そうは見ていません。丸谷聡子市長の令和8年度施政方針には「現在、明石市の人口は13年連続で増加していますが、将来的には人口減少が予想されます。今後は、目標人口である30万人を維持」と明記されています。目標はすでに「増加」ではなく「30万人の維持」です。実績としては、2025年の国勢調査速報値で307,043人、2020年比で3,442人・1.1%の増加でした。神戸新聞の報道によれば、前回調査から増えたのは兵庫県内41市町のうち明石市だけです。ただし、その前の5年(2015〜2020年)は10,192人・3.47%の増加でしたから、増加率は三分の一ほどに縮んでいます。増えている事実と、伸びが鈍っている事実の両方を見ておくのが正確だと思います。
市長が代わって、子育て支援は縮小したのですか。
縮小していません。市が公表している内容は「5つの無料化」ではなく「7つの無料化」で、すべて所得制限なしです。内訳は、こども医療費(高校卒業まで)、第2子以降の保育料、0歳児のおむつ定期便(生後3か月から1歳まで、月およそ3,000円相当)、1か月児健診の費用助成(6,000円。令和7年度開始)、小学校給食、中学校給食、公共施設の入場料(天文科学館、文化博物館ほか)です。このうち1か月児健診の助成は令和7年度に加わったもので、直近でも支援は追加されています。さらに神戸新聞の報道によれば、令和8年度には小学校給食の完全無償化、年齢・回数制限のない不妊治療費助成のモデル事業、多胎児家庭支援の拡充、全小中学校への校内フリースペース設置が予定されています。
人が増えて、学校は足りているのですか。
足りていない学校があります。神戸新聞の報道によれば、大久保北中学校の生徒数は2021年度の698人から2025年度に912人へ、4年間で214人増えました。プレハブ校舎を1棟建設しましたが、35人学級への対応もあって不足し、2棟目を建設することになっています。校内では校長室を第2職員室に、会議室を教室に転用し、生徒の相談は保健室や図書室で対応しているとのことです。この学校は1987年に大久保中学校から分離してできた学校で、宅地開発によってふたたび大規模校になっています。これは子育て支援が失敗した結果ではなく、人が集まった結果として起きている現在進行形の副作用です。
明石のタコが獲れないと聞きましたが、原因は何ですか。
神戸新聞の報道によれば、明石沖のマダコは2021年に記録的な不漁となり、前年の25%以下という水準まで落ち込みました。それ以降も低い水準が続いています。背景として指摘されているのは、瀬戸内海の水質改善による栄養塩の不足と、水温の上昇です。栄養塩とは、窒素やリンなど植物プランクトンが育つのに必要な養分のことで、排水規制によって海がきれいになった結果、食物連鎖の根元にあたる部分が細くなったという説明です。市は施政方針の中で「豊かな海づくり」として、施肥散布の増量とアマモ場の造成に取り組むとしています。「きれいな海」と「豊かな海」が同じではない、ということが数字に出た形です。
大蔵海岸の慰霊碑は、何のためのものですか。
2001年7月21日、明石市の花火大会の日に、大蔵海岸公園とJR朝霧駅を結ぶ朝霧歩道橋で群衆なだれが起きました。11人が亡くなり(うち子どもが9人、70代の女性が2人)、247人が負傷しています。この歩道橋は会場へ向かう事実上唯一のルートでした。慰霊碑は「想の像」といい、大蔵海岸通1にあります。毎年追悼が行われており、2026年7月21日で25年になりました。この事故を機に、2005年に雑踏警備業務の検定制度が新設され、2009年からは一定規模以上のイベントで検定合格者を配置することが義務づけられています。いま全国のイベントで行われている雑踏警備の仕組みは、この事故を起点にしたものです。
この記事で参照した資料
- 明石市|明石市の人口(推計人口)
- 神戸新聞|2025年国勢調査速報値、兵庫県内で人口が増えたのは明石市のみ
- 明石市|令和2年国勢調査の結果
- 明石市|令和8年度 施政方針
- 明石市|こどもを核としたまちづくり(7つの無料化)
- 神戸新聞|明石市の令和8年度当初予算案
- 神戸新聞|大久保北中学校、プレハブ校舎2棟目を建設へ
- 川崎重工業|明石工場
- 明石市|新庁舎建設工事のお知らせ
- 明石市|大久保駅周辺市有地の利活用
- 神戸新聞|明石沖のマダコが記録的不漁
- 神戸新聞|明石歩道橋事故から25年
- 明石市|明石市空家等対策計画
※本記事は上記の公表資料および報道に基づいて構成しています。裏付けの確認できなかった事項については、あえて記載していません。
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