尼崎市で説明義務があるハザードマップは4図面。売却が制限される条文はありません

尼崎市でご自宅を売ろうとお考えのとき、ハザードマップの話が出てきて不安になられたことはないでしょうか。2020年8月から、不動産の取引では水害ハザードマップ上の物件の位置を説明することが義務になりました。
尼崎市はこの説明の対象が3種類あります。洪水・高潮・内水です。いずれも尼崎市が水防法にもとづいて作成し、公表しているものです。
ここで多くの売主が誤解されます。「説明義務がある」ことと「売れない」ことは、法律上まったく別の話です。その線引きを、条文の場所まで示して整理します。
尼崎市で重要事項説明の対象になるハザードマップ
尼崎市は、水防法第14条にもとづく浸水想定区域図を受けて、3種類のハザードマップを公表しています。不動産取引で説明の対象になるのは、この3種類です。
| ハザードマップの種類 | 対象 | 作成・更新 |
|---|---|---|
| 洪水(淀川水系・蓬川水系) | 想定し得る最大規模の降雨による河川の氾濫 | 2025年3月 |
| 洪水(武庫川水系) | 想定し得る最大規模の降雨による河川の氾濫 | 2025年3月 |
| 高潮 | 堤防等が破堤する場合/想定し得る最大規模 | 2025年3月 |
| 内水(雨水出水) | 想定し得る最大規模の降雨 | 2025年3月 |
内水ハザードマップは、2025年2月に最大規模降雨のシミュレーションにもとづく雨水出水浸水想定区域図が作成されたことを受けて、新しく作られたものです。2024年以前に売買や査定を経験された方がご覧になった図面とは、範囲が変わっています。
なお兵庫県が公表している土砂災害警戒区域等の指定状況の一覧には、尼崎市の行がありません。兵庫県41市町のうち一覧に行が無いのは、尼崎市・稲美町・播磨町の3つです。いずれも山地を持たない平野部の市町という共通点があります。ただし県の資料には「指定なし」と明記されているわけではないため、尼崎市の土砂災害警戒区域の有無について当社は未確認として扱います(一覧に行が無い=指定箇所が無いという読み方の確度は8割程度と考えています)。
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株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
「説明する義務がある」と「売れない」は、別の話です
宅地建物取引業法第35条第1項の柱書には、こう書かれています。「説明をさせなければならない」。それだけです。禁止する、制限する、許可を要する——そうした文言は、この条文のどこにもありません。
水害ハザードマップの説明義務は、2020年7月17日に公布され、2020年8月28日に施行されました。根拠は宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第3号の2です。条文はこうなっています。
水防法施行規則第十一条第一号の規定により当該宅地又は建物が所在する市町村の長が提供する図面に当該宅地又は建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地又は建物の所在地
読み取っていただきたいのは、説明の対象が「区域の内側にあること」ではなく「図面上のどの位置にあるか」だという点です。国土交通省が公表しているQ&Aでも、浸水想定区域の外にある物件でも、図面上の位置を示さなければならないと明示されています。つまりこの説明は、区域内の物件を選り分けるためのものではありません。取引されるすべての物件が同じように対象になります。
そしてもう一点。宅地建物取引業法第35条第1項第2号は「法令にもとづく制限」を説明する規定で、その中身は同法施行令第3条に一つずつ列挙されています。洪水浸水想定区域(水防法第14条)は、この第3条に列挙されていません。水防法から列挙されているのは第15条の8第1項、浸水被害軽減地区の届出だけです。
ですから、尼崎市で「ハザードマップに載っているから法令上の制限がかかる」という説明を受けたなら、それは条文と食い違っています。制限と説明は、宅地建物取引業法のなかで別々の号に分かれて置かれています。
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災害に関する区域指定は、不動産取引では2つの系統に分かれます。同じ「警戒区域」という言葉が付いていても、扱いが違います。
| 区域の種類 | 根拠条文 | 取引での扱い |
|---|---|---|
| 土砂災害警戒区域(イエロー) | 施行規則第16条の4の3第2号 | 説明のみ |
| 水害ハザードマップ上の所在地 | 施行規則第16条の4の3第3号の2 | 説明のみ |
| 津波災害警戒区域 | 施行規則第16条の4の3第3号 | 説明のみ |
| 造成宅地防災区域 | 施行規則第16条の4の3第1号 | 説明のみ |
| 土砂災害特別警戒区域(レッド) | 法第35条第1項第2号+施行令第3条 | 法令にもとづく制限 |
| 宅地造成等工事規制区域 | 法第35条第1項第2号+施行令第3条 | 法令にもとづく制限 |
| 津波災害特別警戒区域 | 法第35条第1項第2号+施行令第3条 | 法令にもとづく制限 |
| 浸水被害防止区域 | 法第35条第1項第2号+施行令第3条 | 法令にもとづく制限 |
特別警戒区域が「制限」の側に入るのには、実体があります。土砂災害防止法第10条は、特別警戒区域内で住宅の分譲や社会福祉施設等を目的とした特定開発行為に都道府県知事の許可を要すると定めています。また建築基準法施行令第80条の3により、土砂の力に耐える構造としなければならないという構造規制がかかります。同法第17条では、著しい損壊のおそれがある建築物について移転等の勧告が行われることがあります。
言い換えれば、尼崎市で警戒区域(イエロー)に入っているだけの土地は、建て方にも売り方にも法令上の制限を受けません。買主に説明する内容が一つ増える、それが法律の求めているすべてです。
売主が黙っていた場合、どこまで責任を負うか
ここが売主にとって最も重い部分です。条文の言葉を正確に押さえます。
民法第572条は、こう定めています。売主が担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、「知りながら告げなかった事実」については、その責任を免れることができない。
契約書に「契約不適合責任を負わない」と書いても、売主が知っていて言わなかったことには、その特約が効きません。過去に床上まで水が来た、擁壁にひびがある、大雨のたびに敷地に土砂が流れ込む——こうした事実をご存じであれば、告げたうえで売るのが唯一の安全策です。
もう一つ、期間についてよくある誤解があります。民法第566条は「買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは」と定めています。押さえる点は3つです。
- 起算点は引渡日ではなく「買主が知った時」——引渡しから1年で自動的に消えるわけではありません
- 求められているのは「通知」であって権利行使ではない——買主は1年以内に通知さえすれば、その後に請求できます
- 対象は種類・品質の不適合のみ——数量や権利の不適合には、この1年の通知期間は適用されません
加えて宅地建物取引業法第40条は、宅地建物取引業者が自ら売主となる場合に、引渡しから2年以上とする特約を除いて民法第566条より買主に不利な特約を無効としています。ただしこれは業者が売主のときの規定です。個人の方が売主で、当社のような業者が媒介するだけの取引には適用されません。
なお、人の死の告知については国土交通省が令和3年10月8日にガイドラインを示しています。これは法令ではなく行政の解釈指針です。ガイドラインどおりに対応しても、民事上の責任が自動的に消えるわけではありません。また浸水歴や地盤沈下の告知について、これに相当する国のガイドラインは当社が調べた範囲では見当たりませんでした。「国が告知を義務づけている」と説明されたなら、根拠条文をお尋ねください。
尼崎市のご自宅のリスクを、ご自身で調べる4つの手順
- 兵庫県の指定状況ページから地図を開く——兵庫県「土砂災害警戒区域等」に、市町別の指定状況の一覧と、境界を地番単位で表示する兵庫県CGハザードマップへの入口があります。イエローかレッドかは、ここで判別できます
- 重ねるハザードマップで水害を確認する——https://disaportal.gsi.go.jp/では、洪水・内水・高潮・津波・土砂を1枚の地図に重ねて表示できます。買主が最初に見るのもこの画面です
- 尼崎市の窓口で図面の版を確認する——ハザードマップは更新されます。重要事項説明で使うのは契約時点の最新版です。数年前に見た図面と範囲が変わっていることは珍しくありません
- ご自身が知っている事実を書き出す——浸水、擁壁のひび、雨のときの水の流れ。民法第572条で責任を負うのは知っていて告げなかったことです。書き出して告げておけば、その特約は守ってくれます
調べた結果をお持ちいただければ、その条件で尼崎市のいくらになるかを具体的な金額でお出しします。尼崎市の町丁別・種別ごとの成約データは尼崎市の不動産売却にまとめています。
よくある質問
尼崎市はハザードマップの説明義務の対象ですか?
尼崎市が水防法にもとづいて公表している洪水(淀川水系・蓬川水系、武庫川水系)・高潮・内水の各ハザードマップが、重要事項説明の対象です。宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第3号の2により、図面上の物件の位置を示して説明します。浸水想定区域の外にある物件でも、国土交通省のQ&Aは図面上の位置を示すべきとしています。
ハザードマップに載っていると売れなくなりますか?
法律上、売買を制限する規定はありません。宅地建物取引業法第35条第1項の柱書は「説明をさせなければならない」と定めるだけで、禁止・制限・許可の文言はありません。また洪水浸水想定区域は同法施行令第3条の「法令にもとづく制限」に列挙されていません。説明する内容が一つ増える、それが法律の求めていることです。
過去に浸水したことを買主に言わずに売るとどうなりますか?
民法第572条により、契約不適合責任を負わない旨の特約をしていても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられません。浸水歴をご存じであれば、告げたうえで売ることが唯一の安全策です。告げたうえで成約している物件は実際に数多くあります。
内水ハザードマップが新しくなったと聞きました。影響はありますか?
尼崎市は2025年2月の最大規模降雨のシミュレーションにもとづく雨水出水浸水想定区域図を受けて、2025年3月に内水ハザードマップを新しく作成しました。重要事項説明で使うのは契約時点の最新版です。数年前にご覧になった図面と範囲が変わっていることがありますので、売り出す前にご確認ください。
まとめ
尼崎市で売却をお考えなら、押さえる順番は3つです。第一に、重要事項説明の対象は洪水・高潮・内水の4図面で、図面上の位置を示すものであって区域内外の選別ではありません。第二に、宅地建物取引業法第35条第1項の柱書は「説明をさせなければならない」と定めるだけで、売買を制限する条文はどこにもありません。第三に、民法第572条により、ご自身が知っている事実を告げずに売ると、免責特約があっても責任を免れられません。
当社は不動産売却の専門店です。区域の判定から、買主にどう説明して成約まで運ぶかの設計まで、そのままお引き受けします。まずは無料査定で、いまの実額をご確認ください。
出典
- 尼崎市「宅地建物取引業法施行規則にかかる水害ハザードマップの確認について」
- 兵庫県「令和8年6月30日現在の土砂災害警戒区域等の指定状況」(https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks15/documents/0630shiteijoukyou.pdf)
- 宅地建物取引業法第35条/同法施行令第3条/同法施行規則第16条の4の3
- 宅地建物取引業法第40条
- 民法第566条・第572条
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第10条・第17条
- 建築基準法施行令第80条の3
- 水防法第14条・第15条の8/水防法施行規則第11条第1号
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部改正について」(令和2年7月17日公布・同年8月28日施行)
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月8日)
本記事は一般的な情報提供です。個別の物件の区域該当や告知の要否は、契約時点の最新の図面と個別事情にもとづいて判断いたします。
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