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相場・査定

神戸市中央区の地価は、区内で47倍ひらく――「中央区の相場」が当てにならない理由

2026.08.05
神戸市中央区の風景

「神戸市中央区 マンション 相場」と検索すると、㎡単価いくら、平均何万円という数字がずらりと出てきます。ところが、その数字を自分の家に当てはめようとした瞬間、多くの人の手が止まります。「うちは、この平均より上なのか、下なのか」が分からないからです。

結論から言うと、中央区において「区の平均」はほとんど役に立ちません。理由は単純で、中央区の中の地価は、いちばん高い地点といちばん安い地点で約47倍ひらいているからです。同じ区、しかも南北わずか数キロの中での話です。

この記事は、その「区内格差」がどこで、なぜ生まれているのかを、公的な地価データと地形から読み解いていくものです。読み終わるころには、ご自身の住所を地図の上に置いて「うちはこの層だ」と言えるようになっているはずです。

神戸市中央区でいちばん高い土地(三宮町1丁目800万円/㎡)といちばん安い土地(熊内町8丁目17万円/㎡)の比較図
中央区の最高地点と最安地点(令和8年地価公示・図は当社作成)

「中央区の相場」を調べても、自分の家の値段にたどり着けない理由

まず数字から入ります。2026年3月に公表された令和8年地価公示(価格時点2026年1月1日)で、神戸市中央区には標準地が39地点あります。内訳は住宅地13、商業地25、工業地1です。

この39地点のうち、

  • 最も高い地点=三宮町1丁目7番6外(商業地)/1㎡あたり800万円(前年比+9.6%)。兵庫県全体でも全用途の最高価格地点です。
  • 最も安い地点=熊内町8丁目51番(住宅地)/1㎡あたり17万円(前年比±0.0%)。

差は約47倍。しかもこの2地点は、直線距離にすれば2km少々しか離れていません。

用途が違うから当然だ、と思われたかもしれません。ではもっと近い条件で比べてみます。住宅地13地点の中だけで見ても、最高は山本通1丁目の66万4,000円、最安は先ほどの熊内町8丁目の17万円。約3.9倍です。同じ「中央区の住宅地」で、この開きです。

平均値というのは、こういう分布のときにいちばん嘘をつきます。中央区の平均を聞いて「なるほど、うちもそのくらいか」と考えるのは、体重の平均値を聞いて自分の体重を推定するようなもので、当たるほうが偶然です。

では、この47倍はどこで生まれているのか。地図に戻ります。

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中央区は「南北3層+人工島1つ」でできている

中央区の面積は28.98km²(2025年4月1日現在)。この区の最大の特徴は、北の端が六甲の山、南の端が海で、その間が驚くほど短いことです。神戸市全体で見ても、六甲山地(主峰931.3m)は宝塚から須磨まで東西約30kmに延び、高度差は約1,000m。海岸線は約30kmあります。つまり神戸という街は、山と海に南北を挟まれて東西に細長く伸びた街で、中央区はその真ん中を切り取った区画です。

この地形を頭に入れると、中央区は次の3つの層+1つの島で整理できます。

  1. 山手(第1層)/北野町・山本通・中山手通・熊内町・再度筋町など。六甲山地の南斜面。坂と眺望のエリア。
  2. 都心平地(第2層)/三宮町・元町通・北長狭通・加納町・磯上通・小野柄通など。JR・阪急・阪神の線路が東西に走る、商業と業務の中心。
  3. 臨海(第3層)/海岸通・新港町・東川崎町・脇浜海岸通など。明治以降の埋立でできた、海に面した帯。
  4. ポートアイランド(人工島)/港島・港島中町・港島南町。1966年着工の完全な人工島。

不動産の値段は、この層をまたぐと大きく変わります。そして――ここが本題ですが――同じ層の中でも、町名や丁目が変わるだけで倍以上変わることがあります。層ごとに見ていきます。

神戸市中央区を山手・都心平地・臨海・ポートアイランドの3層+1島に分けた南北断面の模式図
中央区は「南北3層+人工島1つ」(模式図・当社作成)

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【第1層・山手】同じ「山本通」の中で、3.1倍の差がついている

山手は「坂の上ほど高い」と思われがちですが、実際のデータはそう単純ではありません。令和8年地価公示の住宅地13地点を、価格順に並べてみます。

所在地 ㎡単価(2026年1月1日時点) 前年比
山本通1丁目6番17 66万4,000円 +5.9%
中山手通6丁目4番24 56万2,000円 +7.7%
山本通4丁目97番15 44万9,000円 +6.1%
山本通2丁目13番25 42万8,000円 +5.4%
熊内町4丁目407番 39万7,000円 +4.7%
下山手通7丁目2番6 36万4,000円 +5.5%
宮本通2丁目378番 34万8,000円 +4.8%
楠町1丁目19番2外 32万1,000円 +5.2%
再度筋町38番1外 30万2,000円 +4.5%
熊内橋通3丁目332番 29万3,000円 +4.6%
神仙寺通2丁目14番8 21万8,000円 +1.9%
山本通3丁目120番63 21万2,000円 +1.9%
熊内町8丁目51番 17万0,000円 ±0.0%

この表でいちばん驚くのは、たぶんここです。

  • 山本通1丁目:66万4,000円 / 山本通3丁目:21万2,000円 → 約3.1倍
  • 熊内町4丁目:39万7,000円 / 熊内町8丁目:17万0,000円 → 約2.3倍

同じ町名、しかも隣り合う丁目のレベルで、これだけ違う。もし「山本通に住んでいるから高いはず」という前提で査定を受けたら、実勢と大きくずれる可能性があるということです。

山手で価格を分けている、4つの現実的な条件

なぜ同じ町名でここまで開くのか。山手特有の理由が4つあります。

①「何丁目か」は、そのまま「標高と勾配」を意味する。 山本通も熊内町も、丁目が進むほど山側・奥へ入っていく構造です。奥へ行くほど坂は急になり、駅までの実質的な時間は伸びます。地図上の距離は同じでも、行きは下り・帰りは上りという体感差は、住宅の値段に確実に反映されます。

②接道と、車が入れるかどうか。 山手は、斜面に沿って造成された時期が古いエリアほど道が細く、階段でしか到達できない区画も残っています。前面道路の幅員と、そこまで車が入れるかは、山手では駅距離より効くことがあります。

③眺望が「抜けている」か、前に建っているか。 斜面地では、南側の建物との高低差がわずかに変わるだけで、海が見えるか壁が見えるかが決まります。同じマンションの同じ階数でも、東西の棟で価格が変わるのはこのためです。

④保全のかかり方。 北野町山本通の一帯は、1980年4月10日に国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された約9.3haの区域を含みます。景観が守られることは資産価値の下支えになる一方、建て替えや外観変更には制約が伴います。プラスにもマイナスにも働くため、単純に「重伝建エリアだから高い」とは言えません。

もうひとつ、この表には売却を考える人にとって重要な情報が隠れています。熊内町8丁目は、変動率±0.0%。中央区の39地点で唯一、横ばいの地点です。神戸市全体の住宅地が上昇している中でも、上がっていない一角は実在します。「神戸は上がっているらしいから、もう少し待とう」という判断が、すべての人に当てはまるわけではないのです。

神戸市中央区・北野坂の坂道と、その先に見える六甲の山
山手は「何丁目か」がそのまま坂の勾配を意味する(写真は北野坂) 写真:そらみみ(CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)

【第2層・都心】値段は「面」ではなく「線」についている

都心に降りると、価格の付き方のルールが変わります。山手が「標高で決まる」のに対して、都心平地は「どの通りに面しているか」でほぼ決まる。エリアではなく、線です。

令和8年地価公示の商業地25地点を、価格順に見てみます。

所在地 ㎡単価(2026年1月1日時点) 前年比
三宮町1丁目7番6外 800万円 +9.6%
磯上通8丁目329番 459万円 +11.4%
明石町47番 429万円 +8.9%
京町79番 305万円 +5.9%
北長狭通3丁目1番18外 154万円 +10.0%
中山手通1丁目4番16 138万円 +8.7%
元町通3丁目9番4 124万円 +6.9%
中山手通2丁目1番21外 118万円 +7.3%
下山手通5丁目12番11 113万円 +7.6%
下山手通3丁目6番7外 107万円 +8.1%
加納町4丁目8番18外 106万円 +8.3%
八幡通3丁目308番 101万円 +9.0%
御幸通5丁目316番 99万5,000円 +9.0%
元町通6丁目1番8 76万8,000円 +5.1%
下山手通2丁目12番29外 66万3,000円 +6.6%
海岸通1丁目2番24 63万1,000円 +5.0%
熊内町7丁目4番4外 60万8,000円 +4.5%
下山手通5丁目7番4外 57万3,000円 +4.2%
中町通3丁目1番11 56万円 +6.1%
磯上通4丁目336番 53万8,000円 +10.0%
生田町2丁目329番 51万円 +4.1%
海岸通4丁目3番13 44万6,000円 +4.9%
二宮町4丁目310番 41万2,000円 +4.3%
脇浜町3丁目429番 41万1,000円 +5.9%
筒井町3丁目321番 29万2,000円 +5.0%

この表から、町名だけでは何も分からないことを示す3つの例を取り出します。

例1:磯上通は、同じ町名の中で約8.5倍ひらく。 磯上通8丁目が459万円なのに対し、磯上通4丁目は53万8,000円。8丁目は三宮駅の南東、いわゆる三宮の業務地区の中心にあたり、4丁目はそこから東へ離れた住宅・小規模オフィス混在の一角です。「磯上通の相場」という言い方は、この時点で成立していません。

例2:元町通は、丁目が進むほど下がる。 元町通3丁目124万円に対して、元町通6丁目は76万8,000円で約1.6倍差。元町商店街は東(1丁目)から西(6丁目)へ長く伸びていて、西へ行くほど人通りが薄くなる構造がそのまま価格に出ています。

例3:同じ丁目の中でも、通りが違えば約2倍。 下山手通5丁目には標準地が2つあり、12番11が113万円、7番4外が57万3,000円。同じ町・同じ丁目で約2倍です。都心では「丁目」ですら粗すぎる単位だ、ということを、これほど端的に示す例はありません。

磯上通・山本通・熊内町・下山手通・元町通で同じ町名の中の地価が何倍ひらくかを示した棒グラフ
同じ町名の中でも、これだけ差がついている(令和8年地価公示・図は当社作成)

「線」の正体は、東西の幹線と南北の目抜き通り

都心平地の価格の骨格をつくっているのは、東西に走る幹線(山手幹線、三宮中央通、フラワーロード沿いの南北軸、そして旧居留地の格子)と、駅から海へ向かう南北の動線です。三宮町1丁目が800万円という突出した値をつけているのは、そこがセンター街の入口という「線が交わる点」だからです。

マンションの査定でも同じことが起きます。同じ町名・同じ駅徒歩分数でも、幹線に面しているか、一本入った静かな道か。前者は商業地としての土地の力が乗り、後者は住環境が評価される。どちらが高いかは物件のタイプによって逆転します。「町名+駅徒歩◯分」だけで相場を語ると、必ずこの差を取りこぼします。

【第3層・臨海】埋立の年代が、そのまま価格の年輪になっている

海側に降りると、また別のルールが働きます。臨海部は、そのほとんどが明治以降に人の手でつくられた土地です。そして「いつ埋め立てられたか」が、価格の年輪のように残っています。

データで見ると、海岸通1丁目が63万1,000円、海岸通4丁目が44万6,000円。同じ「海岸通」でも約1.4倍の差があります。1丁目は旧居留地の南端に接する明治期からの都心の縁で、4丁目は西へ進んだハーバーランド寄りの区域。埋立と市街化の時期が違えば、建っている建物の世代も、通りの性格も変わります。

もうひとつ押さえておきたいのが標高です。神戸市が公表している東川崎地区(ハーバーランド周辺)の津波避難マップには、地点ごとの標高が印字されていますが、その多くが1.2m〜3.8mの範囲に収まっています。海の近さは眺望という価値であると同時に、防災という論点でもあります。売却の場面では、買主から必ずと言っていいほどこの話題が出ます。

臨海部でもうひとつ特徴的なのが、HAT神戸を含む脇浜エリア。脇浜町3丁目は41万1,000円(+5.9%)と、都心の商業地としては低い水準です。ここは1995年の震災後に再生された地区で、公共施設・住宅・業務が混在する独特の性格を持っています。「中央区の海側=高い」というイメージだけで判断すると、実際の数字とかなりずれます。

【人工島】ポートアイランドは「区内でいちばん安く、いちばん伸びた」

そして中央区でいちばん誤解されているのが、ポートアイランドです。

令和8年地価公示で中央区の工業地は港島3丁目6番1の1地点だけ。その価格は18万5,000円/㎡です。区内の商業地最安(筒井町3丁目29万2,000円)より安く、住宅地最安の熊内町8丁目(17万円)に近い水準にあります。

ところが変動率を見ると、話が変わります。港島3丁目は前年比+15.6%。前年の16万円から18万5,000円へ上がりました。これは中央区39地点の中で最大の上昇率で、神戸市の工業地平均(+11.0%)も上回っています。

つまりポートアイランドは、「区内で最も安く、区内で最も伸びた場所」です。物流施設や研究・医療関連の需要が土地を押し上げている構造で、住宅相場とは別のエンジンが回っていることになります。

当社が集計した中央区の駅別マンション㎡単価でも、みなとじま駅の中央値は19万円/㎡(70㎡換算で約1,300万円)。区内でいちばん高いJR神戸駅(84万円/㎡)とは4.4倍の開きがあります。同じ中央区の住所でありながら、まったく別の市場です。

ポートアイランドの成り立ちも押さえておきましょう。第1期は昭和41年度(1966年度)から昭和55年度(1980年度)にかけて造成された約443ha、第2期は昭和61年度(1986年度)から平成21年度(2009年度)の約390ha。第1期の完成にあわせて1981年に「ポートピア’81」が開かれ、1,600万人が訪れました。

売却の場面で必ず論点になるのが地盤です。国土交通省の資料は、1995年の兵庫県南部地震で埋立地に液状化が発生し、護岸に近い地区では側方流動によって護岸が海側へ最大5m以上前傾・移動したこと、液状化した土の大部分が六甲山地由来の「まさ土」であったことを記録しています。この事実は隠しようがありませんし、隠すべきでもありません。逆に言えば、買主が不安に思う点をあらかじめ資料で示せる売主は、価格交渉で強いということです(後述のFAQで触れます)。

上空から見た神戸港とポートアイランド、六甲の山と海に挟まれた細長い神戸の市街地
上空から見た神戸港。手前左の滑走路が神戸空港、その右に連なるのがポートアイランド。山と海に挟まれた細長い市街地の姿がよく分かる 写真:663highland(CC BY 2.5, Wikimedia Commons)

フラワーロードという、地図に載っていない境界線

ここまで見てきた「層」とは別に、中央区にはもう一本、東西を分ける見えない線があります。フラワーロードです。

中央区が誕生したのは1980年(昭和55年)12月1日。それまでの生田区(西)と葺合区(東)が合区してできた区で、両区の境が、まさにこのフラワーロードでした。そしてこの道路は、もともと生田川の川筋です。明治4年(1871年)、たびたび氾濫していた生田川が東へ付け替えられ、旧河道の跡地が道になりました。

この歴史は、今の不動産市場にも痕跡を残しています。西側(旧生田区)は三宮・元町・旧居留地・北野を含む戦前からの都心。東側(旧葺合区)は磯上通・八幡通・小野柄通・脇浜といった、比較的新しい業務地とマンション街です。町名の付き方も、西側は「三宮町」「元町通」など古い商業地系、東側は「◯◯通◯丁目」という整然とした街区系が目立ちます。

売却の実務でいうと、買主の検討リストの作られ方が東西で違うことがあります。「三宮に住みたい」という買主と「新しめのマンションで通勤10分以内」という買主では、そもそも見る物件群が重なりません。自分の物件がどちらの検討リストに入るのかを把握しておくと、内覧時に何を強調すべきかが変わってきます。

フラワーロードや生田川の付け替えの経緯は、中央区の歴史をたどる――港と居留地がつくった「神戸の顔」で詳しく取り上げています。

同じ「三宮」でも、最寄りにする路線で㎡単価は1.6倍変わる

ここからは、地価公示ではなく実際に取引されたマンションのデータで見てみます。当社が集計した中央区の駅別マンション㎡単価(中央値)を、三宮系の駅だけ抜き出すと次のようになります。

最寄駅 マンション㎡単価(中央値) 70㎡換算の目安 集計件数
JR三ノ宮駅 73万円/㎡ 約5,100万円 127件
阪急神戸三宮駅 66万円/㎡ 約4,600万円 10件
三宮駅(地下鉄) 60万円/㎡ 約4,200万円 9件
阪神神戸三宮駅 45万円/㎡ 約3,200万円 19件
JR三ノ宮・阪急神戸三宮・地下鉄三宮・阪神神戸三宮の駅別マンション㎡単価中央値を比較した棒グラフ
同じ「三宮」でも、路線が変わると㎡単価は1.6倍違う(当社集計)

同じ「三宮駅徒歩◯分」を名乗れる物件同士で、㎡単価の中央値が1.6倍違う。これは駅の格の話ではなく、それぞれの駅を最寄りとして登録している物件群の性格の違いです。JR三ノ宮を最寄りにする物件は北側・東側の高台や都心中心部に多く、阪神神戸三宮を最寄りにする物件は南側・海寄りに寄る傾向があります。

区全体で見ると、中央値がいちばん高いのは意外にも三宮ではなくJR神戸駅の84万円/㎡(61件)。ハーバーランド周辺の比較的新しい大規模物件が相場を押し上げているためです。次いでみなと元町78万円/㎡、西元町75万円/㎡、JR元町74万円/㎡と続き、元町〜神戸駅の帯が区内の最高水準を形成しています。一方で新神戸49万円/㎡、阪急春日野道46万円/㎡、花隈30万円/㎡と、都心至近でも大きく水準が下がる駅があります。

ここで注意していただきたいのは、この数値は物件側が申告した最寄駅ごとの中央値であり、駅そのものの優劣を示すものではないこと、そして集計件数が9件や10件と少ない駅は、数件の特殊な取引で中央値が動きうることです。数字を鵜呑みにせず、「なぜこの水準なのか」を建物の年代・規模とセットで見る必要があります。

駅別の一覧は神戸市中央区の不動産売却ページに全23駅ぶん掲載しています。ご自身の最寄駅を探してみてください。

中央区にだけ効いている構造――住宅を建てられない都心と、増え続ける世帯

区内格差の話から少し視野を広げると、中央区にはほかの区にない、需給の非対称があります。

①都心では、そもそも住宅を建てられない。 神戸市は特別用途地区「都心機能誘導地区」を2019年3月5日に都市計画決定し、2020年7月1日から制限を開始しました。内容は次のとおりです。

  • 都心機能高度集積地区(三宮駅周辺)=住宅・共同住宅・寄宿舎・老人ホーム等の建築を原則禁止(市長が公益上必要と認める場合を除く)。敷地面積にかかわらず適用。
  • 都心機能活性化地区(新神戸駅周辺〜神戸駅周辺)=住宅等に供する部分の容積率が400%を超える建築物は建築不可。ただし敷地面積1,000㎡未満には適用しない。

要するに、三宮のど真ん中には新しいマンションが建たない。これは既存マンションの希少性を、制度として固定したということです。

②一方で、世帯は増え続けている。 2025年国勢調査の速報値によると、中央区の人口は152,124人で、2020年から+4,606人(+3.1%)。世帯数は97,079世帯で+6,209世帯(+6.8%)。神戸市全体が1,497,630人で▲1.8%と減っている中で、中央区は増加した3区のひとつです。

注目すべきは、人口の伸び(+3.1%)より世帯の伸び(+6.8%)のほうが倍以上大きいこと。1世帯あたりの人員は1.57人で、神戸市平均の1.95人を大きく下回ります。つまり中央区で増えているのは、家族ではなく世帯の数――単身者や2人世帯です。

この2つを重ねると、中央区の市場の姿が見えてきます。都心では新築の供給が制度的に止められ、そこへコンパクトな世帯が流入し続けている。これが、既存マンション、とくに単身〜2人向けの住戸に効いている構造です。同時に、ファミリー向けの広い住戸は、この流れの直接の恩恵からはやや外れます。「中央区だから上がる」ではなく、「中央区のどこの、どんな広さの住戸か」で結論が分かれるのは、こうした理由からです。

自分の物件が「どの層」にあるかを、5分で確かめる手順

ここまで読んで「で、うちはどうなんだ」と思われた方へ。査定を依頼する前に、自分で当たりをつける方法を書いておきます。

STEP1 住所を「丁目」まで正確に書き出す。 ここまで見てきたとおり、中央区では丁目が変わるだけで倍以上変わることがあります。町名だけでは足りません。

STEP2 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、いちばん近い標準地を探す。 地図上に標準地の位置と価格が表示されます。自宅から最も近い地点を1つ、方向違いにもう1つ、計2地点を控えます。2つの価格に差があるなら、その差が自分の物件周辺の「価格の勾配」です。

STEP3 同じライブラリで、周辺の実際の取引価格を見る。 同システムでは不動産取引価格情報も検索でき、地区・用途・時期で絞り込めます。マンションなら「専有面積」と「総額」から㎡単価を割り出して、自分の物件と比べます。

STEP4 駅別の中央値と突き合わせる。 前章の駅別データと比べて、自分の物件が上か下かを見ます。上なら理由(築浅・角部屋・眺望・大規模・管理良好)、下なら理由(築古・低層階・接道・管理費滞納)を言葉にしてみてください。

STEP5 ズレの理由を3つ、紙に書く。 これが実は最も重要です。査定を受けたときに「なぜこの価格なのか」を説明できない会社と、3つの理由を挙げられる会社では、その後の売却活動の精度がまったく違います。売主側がこの3つを持っていれば、査定額の妥当性を自分で検証できます。

ひとつ注意点を。地価公示はあくまで「土地」の価格です。マンションの価格は、敷地権(土地の持分)と建物の価値、そして管理の状態が合わさって決まります。地価が+9%だからマンションも+9%、とはなりません。地価公示は「この一角の土地の力」を測る物差しであって、価格そのものではない、と捉えてください。

「区の平均」で判断すると起きる、正反対の2つの損

最後に、この記事でいちばん伝えたいことを書きます。区の平均で判断すると、正反対の2つの損が起きます。

損その1:高い層にいる人が、安く手放す。 山本通1丁目や磯上通8丁目、元町〜神戸駅の帯にある物件は、区の平均を大きく上回る水準にあります。ところが「中央区の相場はだいたいこのくらい」という一般論の数字を基準にしてしまうと、本来届くはずの価格に届かないまま売り切ってしまう。中央区でいちばん多い損の形は、これです。

損その2:横ばいの層にいる人が、上がらないものを待ち続ける。 熊内町8丁目の±0.0%は、その象徴です。神戸の地価が上がっているというニュースは事実ですが、それが自分の一角に及んでいるとは限りません。上がらない場所で「もう少し待とう」を繰り返すと、その間の管理費・修繕積立金・固定資産税と、建物の経年だけが確実に進みます。

どちらの損も、原因は同じです。「中央区」という単位で自分の資産を語ってしまっていること。値段は区にではなく、その一角についています。

なお「今売るか、再開発の完成を待つか」というタイミングの判断については、神戸市中央区のマンション売却|今か再開発後かで築年数を軸に整理しています。売却の手順や費用まで含めた全体像は神戸市中央区のマンションを高く売る完全ガイドをご覧ください。

よくある質問

Q1.地価公示が上がれば、うちのマンションも同じだけ上がりますか?
いいえ、同じようには動きません。地価公示は「土地」の価格を示すもので、マンションの価格は敷地権(土地の持分)・建物の価値・管理状態の合計で決まります。一般に、土地の持分割合が小さい高層マンションほど、地価の変動が価格に反映されにくくなります。地価公示は方向感と地域内の序列を知るための物差しとして使うのが適切です。

Q2.近くに標準地がない町(ハーバーランドや港島中町など)は、どう調べればいいですか?
地価公示の標準地は中央区全域で39地点しかないため、標準地が置かれていない町は少なくありません。その場合は、①同じ層・同じ通り沿いで最も近い標準地を代用する、②国土交通省の不動産情報ライブラリで周辺の実際の取引価格を検索する、という2段構えが有効です。とくにマンションは取引価格情報のほうが実態に近く、専有面積と築年を揃えて比較すると精度が上がります。

Q3.同じマンションでも、部屋によって㎡単価は違いますか?
違います。階数、方角、角部屋かどうか、眺望が抜けているか、間取りの効率などで変わります。中央区の場合はとくに眺望の影響が大きく、山手では海側への抜け、臨海部では海と山の両方向の眺望が評価されます。斜面地では隣接建物とのわずかな高低差で眺望が決まるため、同一階でも住戸によって差が出ます。

Q4.ポートアイランドは地盤が心配と言われますが、売却に不利になりますか?
買主から質問が出やすいテーマであるのは確かです。ただし「聞かれたら不利」ではなく、「答えられないと不利」というのが実務上の感覚です。1995年の地震で埋立地に液状化が生じたことは国土交通省の資料にも記録されている公知の事実ですから、その後の対策や、建物側の基礎構造・管理組合の修繕履歴を資料として示せるかどうかが分かれ目になります。地盤調査資料や長期修繕計画を事前に揃えておくことをおすすめします。

まとめ――値段は「中央区」ではなく、「その一角」についている

この記事で見てきたことを、5行に畳みます。

  • 中央区の地価は、区内の最高(三宮町1丁目800万円/㎡)と最安(熊内町8丁目17万円/㎡)で約47倍ひらいている。
  • 同じ町名の中でも、山本通で約3.1倍、磯上通で約8.5倍、下山手通5丁目では同じ丁目内で約2倍の差がある。
  • 中央区は「山手・都心平地・臨海+ポートアイランド」の3層+1島で、層ごとに価格の決まり方(標高/通り/埋立年代)が違う。
  • ポートアイランドは区内で最も安く、同時に最も上昇率が高い(+15.6%)という二面性を持つ。
  • 都心では制度上マンションが建てられず(2020年7月〜)、一方で世帯数は5年で+6.8%増えている。この非対称が中央区の市場を動かしている。

ご自身の物件がどの層にあるのかを一度確かめてみてください。そのうえで数字を見ると、これまで漠然と眺めていた「中央区の相場」というニュースが、まったく違う意味を持って読めるようになるはずです。

私たちは旧居留地に事務所を構え、中央区を中心に売却のご相談をお受けしています。ご自宅の一角がどの水準にあるのか気になったときは、査定の前段の「相場の確認」だけでもお気軽にどうぞ。

【出典】令和8年地価公示(国土交通省/兵庫県公表、価格時点2026年1月1日、2026年3月公表)/令和7年兵庫県地価調査/神戸市「2025年国勢調査(速報)」/神戸市中央区「区の概要」(2025年4月1日現在)/神戸市「都心機能誘導地区」/神戸市建設局「フラワーロードは昔、生田川だった」/神戸市歴史公文書館・神戸市「ポートアイランドに関する分析・評価」/国土交通省「1995年 兵庫県南部地震の事例(液状化被害の事例)」/国土交通省 六甲砂防事務所/文化庁(重要伝統的建造物群保存地区)/駅別マンション㎡単価は当社集計。地価公示の変動率・価格は公表値、駅別中央値は当社集計値であり、個別物件の査定額を保証するものではありません。

この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)

この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。

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