東灘区のマンションは駅でどれだけ違うのか。成約571件を築年別に見る

東灘区でマンションを売ろうとするとき、最初にぶつかるのが「相場がよく分からない」という壁です。ポータルサイトの売出価格を見ても幅がありすぎるし、一括査定に出せば会社ごとに数百万円の開きが出る。理由は単純で、東灘区は神戸市のなかで最も市場の層が厚く、同じ区の中に複数の別々の市場が同居しているからです。
この記事では、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報をもとに当社が集計した、東灘区の中古マンション成約571件のデータを使って、その中身を駅別・築年別に分解します。あわせて一戸建ての相場と、東灘区ならではの実務論点も整理しました。
結論から書くと、東灘区の中古マンションの成約㎡単価はおおむね30万円台後半。ただし駅別では摂津本山の約56万円/㎡から青木の約28万円/㎡まで2倍の開きがあり、さらに築年数によって㎡単価は5倍以上変わります。この二つの軸を押さえないと、自分の家の価格帯は見えてきません。

結論:㎡単価は30万円台後半、ただし駅で2倍動く
まず全体像です。直近の成約データ(当社集計・成約571件)から見た東灘区の中古マンションの㎡単価中央値は、おおむね30万円台後半。過去5年ではおよそ15パーセント上昇しており(参考値)、兵庫県内でも取引件数がトップクラスの、いわゆる「売りやすい」エリアです。
ここが北区や垂水区と決定的に違う点です。北区で起きているのは価格の横ばいと取引量の増加ですが、東灘区では価格そのものが上昇している。売主にとっての意味が違います。
一方で、区の平均値をそのまま自分の家に当てはめるのは危険です。次のとおり、駅によって水準がまったく違います。
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株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
駅別・中古マンションの成約㎡単価【10エリア】

| 最寄駅 | ㎡単価中央値 | 70㎡換算 | 成約件数 |
|---|---|---|---|
| 摂津本山 | 56万円/㎡ | 約3,900万円 | 64件 |
| 御影(阪神) | 46万円/㎡ | 約3,200万円 | 21件 |
| 御影(阪急) | 41万円/㎡ | 約2,900万円 | 79件 |
| 住吉(JR・六甲ライナー) | 38万円/㎡ | 約2,700万円 | 103件 |
| 魚崎 | 36万円/㎡ | 約2,500万円 | 43件 |
| 六甲アイランド | 36万円/㎡ | 約2,500万円 | 96件 |
| 岡本 | 31万円/㎡ | 約2,100万円 | 29件 |
| 深江 | 31万円/㎡ | 約2,200万円 | 37件 |
| 甲南山手 | 30万円/㎡ | 約2,100万円 | 33件 |
| 青木 | 28万円/㎡ | 約2,000万円 | 34件 |
この表で多くの方が違和感を覚えるのが、岡本の31万円/㎡だと思います。岡本といえば阪急神戸線でも屈指の人気駅で、摂津本山とは徒歩圏にあります。それがなぜ56万円と31万円に分かれるのか。
答えは、その1年に売れた物件の顔ぶれの差です。岡本駅圏は山手側に築年数を経たマンションが多く、それが中央値を押し下げています。駅近の築浅物件の実勢はまったく別の水準です。駅別中央値は「その駅の格」ではなく「その1年に、その駅の周辺で売れた物件の平均的な姿」を映した数字にすぎません。
逆にいえば、自分の物件が「その駅で売れた平均的な物件」と築年・規模の面でどう違うかが分かれば、中央値からのずれを見当づけることができます。そこで次に、築年数の軸を見ます。
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当社が東灘区の成約事例77件(マンション)を築年帯別に集計したのが下のデータです。抽出したサンプルによる集計ですが、傾向ははっきりしています。

| 築年帯 | ㎡単価中央値 | 専有面積の中央値 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 築0〜9年 | 107.8万円/㎡ | 75㎡ | 4件 |
| 築10〜19年 | 58.7万円/㎡ | 80㎡ | 5件 |
| 築20〜29年 | 41.7万円/㎡ | 75㎡ | 25件 |
| 築30〜39年 | 37.7万円/㎡ | 65㎡ | 14件 |
| 築40〜49年 | 27.7万円/㎡ | 60㎡ | 15件 |
| 築50年以上 | 21.0万円/㎡ | 67.5㎡ | 14件 |
ここから読み取れることが二つあります。
ひとつ目。下落幅が最も大きいのは、最初の10年です。築0〜9年の107.8万円/㎡から、築10〜19年の58.7万円/㎡へ。実に45パーセント落ちています。新築時に上乗せされていたプレミアムが剥がれる区間が、ここにあたります。
売主の立場で言えば、築10年を超えるかどうかは、価格の意味が変わる分水嶺だということです。築5年、築8年の物件を「もう少し様子を見よう」と保有するのは、この区間においてはコストの高い判断になりえます。
ふたつ目。築20年を過ぎると、下がり方が急に緩やかになります。築20〜29年の41.7万円/㎡から築30〜39年の37.7万円/㎡へは、10年でわずか9.6パーセントの下落です。
つまり築20年以上の物件については、「早く売らないと値下がりする」という焦りは、東灘区に関してはあまり実態に合っていません。むしろ管理状態や修繕履歴、リフォームの有無といった物件ごとの個別要因のほうが、築年数より価格を左右する領域に入っていきます。
築50年を超えると、価格の性格が変わる
もう一点、注目すべき数字があります。総額ベースで見ると、築40〜49年の中央値が1,700万円だったのに対し、築50年以上は1,850万円と、むしろ上がっています。
築年数だけを見れば逆転していますが、これは不思議なことではありません。東灘区で築50年を超えて残っているマンションは、そもそも立地の良い場所に建てられたものが多いためです。旧市街の駅近、あるいは阪急・JR沿線の平地。建物の評価がほぼゼロに近づいたとき、価格を支えるのは土地の持分価値になります。
したがって築50年前後の物件をお持ちの方は、「古いから安い」と決めつける前に、敷地面積と総戸数から一戸あたりの土地持分を確認する価値があります。建替えや敷地売却の可能性を含めて、評価の考え方が変わってくるためです。
同じ「住吉駅」でも、渦森台は別の市場です
駅別の数字を使うときに、もうひとつ気をつけたい点があります。同じ駅名でも、駅前と山手のバス便では市場がまったく違うということです。
住吉駅圏の成約事例には、渦森台の物件が複数含まれています。1970年築60㎡が650万円、1972年築70㎡が460万円、1970年築55㎡が240万円。住吉駅圏の中央値である38万円/㎡(70㎡換算で約2,700万円)とは、まるで違う価格帯です。
渦森台は住吉駅から山側へ大きく登った高台の住宅地で、実質的にはバス便のエリアです。眺望に優れる一方、駅からの距離と斜面という条件があり、買主層も価格帯も駅前のマンションとは重なりません。
東灘区は南北の高低差が大きい区です。同じ最寄駅表記でも、山手か平地かで市場が分岐する――この点は査定を受けるときに必ず確認しておくべきポイントです。東灘区の地形と価格の関係については、東灘区はなぜ、同じ区なのに価格が2倍変わるのか――六甲の石と水がつくった「山手と浜手」の話で詳しく書きました。
山手は戸建、浜手と六甲アイランドはマンション
東灘区の市場を理解するうえで欠かせないのが、主戦場が場所によって入れ替わるという構造です。
御影・岡本・住吉山手といった山手のブランド住宅地では、取引の主役は戸建と土地です。一方、浜手や六甲アイランドではマンションが中心になります。買主層も、価格の動き方も、売却にかかる期間も異なります。
この構造を無視して「東灘区のマンション相場」だけで判断すると、特に山手の戸建をお持ちの方は評価を大きく取り違えます。次の表が、その差を端的に示しています。
駅別・一戸建ての成約中央値

| 最寄駅 | 一戸建て 成約中央値 | 成約件数 |
|---|---|---|
| 六甲アイランド | 6,650万円 | 4件 |
| 御影(阪急) | 6,600万円 | 25件 |
| 甲南山手 | 5,700万円 | 15件 |
| 住吉 | 5,000万円 | 17件 |
| 摂津本山 | 5,000万円 | 9件 |
| 岡本 | 5,000万円 | 17件 |
| 魚崎 | 4,650万円 | 20件 |
| 御影(阪神) | 4,500万円 | 8件 |
| 青木 | 3,750万円 | 12件 |
| 深江 | 2,900万円 | 15件 |
戸建の区全体の成約中央値は4,750万円。御影(阪急)エリアでは6,600万円に達します。マンションの70㎡換算が2,000万〜3,900万円であることを考えると、東灘区の戸建市場はマンション市場の倍近い価格帯で動いていることになります。
この価格を支えているのは、希少な土地への指名買いです。御影・岡本の山手で、まとまった敷地が売りに出る機会はそう多くありません。だからこそ、売り出し方を誤ると「相場より安く、しかし早く」売れてしまうことがあります。急がなくてよい物件を急いで売らないことも、戦略のうちです。
六甲アイランドという特殊な市場
東灘区のマンション市場で、単独で押さえておくべきなのが六甲アイランドです。
成約件数96件は、区内でも住吉駅圏(103件)に次ぐ規模。㎡単価の中央値は36万円/㎡(70㎡換算で約2,500万円)です。人工島に計画的に建てられた大規模マンション群が中心で、同じような間取り・広さの住戸が同時期に複数売り出されることが構造的に起こります。
つまり六甲アイランドは、常に「似た物件との比較」にさらされる市場です。ここで効くのは、以下の三点です。
- 管理状態:管理組合の運営状況、修繕積立金の残高と長期修繕計画は、同型住戸との差別化要因になります
- 価格設定:似た住戸が並ぶ市場では、価格が数十万円違うだけで検討順位が変わります
- 売り出しのタイミング:同じマンション内に競合が出ている時期を避けられるかどうか
逆にいえば、これらを整えれば早期成約が狙いやすい市場でもあります。
世帯数は神戸市9区で最多、しかもまだ増えている
東灘区の市場を語るうえで、直近の統計はきわめて重要です。2025年国勢調査の速報(神戸市による独自集計の概数)によれば、東灘区の状況は次のとおりでした。
- 人口:211,921人(2020年から1,641人・0.8パーセントの減少)
- 世帯数:105,196世帯(2.7パーセントの増加)
- 1世帯あたり人員:2.01人
ここで押さえるべきは二点です。
第一に、東灘区の世帯数105,196世帯は神戸市9区のなかで最多です。人口では西区(228,268人)に次ぐ2位ですが、世帯数では東灘区がトップに立ちます。世帯数は住宅需要の実体そのものですから、東灘区は市内で最も住宅需要の母数が大きい区だということになります。
第二に、人口の減少幅が0.8パーセントと、市内で最も小さい部類です。北区の3.3パーセント減、垂水区の3.9パーセント減、西区の4.4パーセント減と比べると、東灘区はほぼ横ばいを保っています。しかも世帯数は2.7パーセント増加しています。
売主にとっての意味は明快です。東灘区は買い手の母数が縮んでいない、数少ないエリアだということ。価格が上昇基調にある背景には、この需要の厚みがあります。
売り出し価格をどう決めるか
ここまでのデータを、実際の価格決定に落とし込みます。
ステップ1:自分の物件の㎡単価を出す。まず、想定価格ではなく現在の㎡単価の目安を、上の駅別表と築年帯表の交差で見当づけます。たとえば御影(阪急)で築25年なら、駅の中央値41万円/㎡と築20〜29年帯の41.7万円/㎡が重なるため、この水準が出発点になります。
ステップ2:中央値からのずれを調整する。階数・向き・角部屋か、リフォームの有無、管理状態、眺望。東灘区では特に、山手か平地かによる差が大きく出ます。
ステップ3:競合を確認する。同じマンション内、あるいは同じ駅圏に現在いくつ売り出しがあるかを確認します。六甲アイランドや大規模物件では、これが最も価格に効きます。
ステップ4:売り急ぐ理由の有無で戦略を分ける。期限がある場合は競合より明確に安い価格で早期成約を狙い、期限がない場合は適正価格で待つ。東灘区は需要が厚いため、後者の選択肢が現実的に機能します。
東灘区ならではの、査定で必ず確認したい論点
旧耐震基準かどうか:1981年6月以前の建築確認による建物は旧耐震基準にあたります。買主の住宅ローン審査や、住宅ローン控除の適用可否に影響することがあるため、築45年前後の物件では確認が必要です。東灘区の築40年以上の成約は相当数あり、実際に取引は成立していますが、価格と買主層に影響します。
高低差と擁壁:山手の物件では敷地の高低差や擁壁が付随することが珍しくありません。擁壁の築造時期と検査済証の有無を事前に確認しておくと、交渉での不利を避けやすくなります。
地盤と液状化:東灘区は南部に埋立地を含みます。1995年の阪神・淡路大震災では区内で液状化が発生しました。買主から地盤について問われる可能性があるため、ハザードマップや地盤資料を事前に把握しておくことをおすすめします。
借地権かどうか:古い住宅地には借地の物件が残っています。所有権か借地権かで評価も売り方もまったく変わるため、登記簿での確認が最初の一歩です。
管理費・修繕積立金の水準:マンションでは、管理費と修繕積立金の合計額が買主の借入可能額に影響します。月額が高い物件は、その分だけ購入できる層が狭まります。売り出し前に、同規模物件との水準比較をしておくと戦略が立てやすくなります。
売却の進め方と費用
実際の流れは次のとおりです。
- 査定(1〜3日):登記簿・管理規約・重要事項調査報告書(マンションの場合)・修繕履歴をご用意いただくと精度が上がります
- 売り出し価格の決定:区の中央値ではなく、同じ駅圏・同じ築年帯・同じ規模の成約事例を軸に決めます
- 媒介契約・売却活動:レインズと主要ポータルへ適正に公開し、広く買主を募集します。当社は売却専門のため、囲い込みをしません
- 内覧対応:東灘区のマンションの買主は、実需の住み替え層が中心です。清掃と採光、生活動線の見せ方が効きます
- 契約・引渡し:住宅ローンの残債がある場合も、売却代金で完済できるケースが多くあります
譲渡益が出た場合の課税や、居住用財産の特別控除の適用可否は、東灘区のように価格が上昇しているエリアでは特に確認が必要です。
よくある質問
東灘区の中古マンションの相場はいくらですか?
成約571件の㎡単価中央値はおおむね30万円台後半です(当社集計)。駅別では摂津本山の約56万円/㎡が最も高く、青木の約28万円/㎡が最も低い水準で、2倍の開きがあります。70㎡換算では、およそ2,000万円から3,900万円の幅になります。
東灘区の一戸建ての相場はいくらですか?
区全体の成約中央値は4,750万円です。駅別では御影(阪急)が6,600万円、六甲アイランドが6,650万円と高く、深江が2,900万円と最も低い水準でした。東灘区の戸建市場はマンション市場の倍近い価格帯で動いており、山手のブランド住宅地では希少な土地への指名買いが価格を支えています。
築年数で価格はどのくらい下がりますか?
当社が集計した成約事例(n=77)では、㎡単価の中央値が築0〜9年で107.8万円、築10〜19年で58.7万円と、最初の10年で約45パーセント下落しています。一方、築20〜29年の41.7万円から築30〜39年の37.7万円までは10年で9.6パーセントの下落にとどまります。築10年前後が最も価格の動きが大きい区間です。
築50年のマンションでも売れますか?
売れています。当社の集計では築50年以上の成約が14件あり、総額の中央値は1,850万円で、築40〜49年の1,700万円をむしろ上回っていました。築50年を超えて残っている物件は立地の良い場所に建てられたものが多く、建物の評価が下がるほど土地の持分価値が価格を支える構造になるためです。敷地面積と総戸数から一戸あたりの持分を確認する価値があります。
六甲アイランドのマンションは売りやすいですか?
成約件数96件は区内で2番目に多く、市場としては活発です。ただし似た間取り・広さの住戸が同時に売り出されやすい構造があるため、管理状態・価格設定・売り出しタイミングの三点が成約スピードを大きく左右します。逆にこれらを整えれば、早期成約を狙いやすい市場でもあります。
いま売るべきですか、待つべきですか?
東灘区の㎡単価は過去5年でおよそ15パーセント上昇しており(参考値)、北区や垂水区のような横ばい局面とは状況が異なります。また2025年国勢調査速報では世帯数105,196世帯と神戸市9区で最多、かつ2.7パーセント増加しており、買い手の母数が縮んでいません。市場環境としては売主に不利ではない状態です。ただし築10年前後の物件は下落幅が大きい区間にあるため、個別事情によって最適解は変わります。まずは現在の価格を把握することをおすすめします。
本記事の相場データは、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報をもとに株式会社Estate&Co.が集計したものです。人口・世帯数は神戸市「2025年国勢調査(速報)」(神戸市独自集計の概数)によります。築年帯別の集計は当社が抽出した成約事例(n=77)に基づく傾向値であり、全数集計ではありません。個別の物件の評価額は、立地・法規制・建物の状態により本記事の数値と異なります。税務の最終判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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