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姫路市

69校区のうち、人口が増えるのは7つ。姫路市で家を売るならどこか

2026.08.28
姫路市の風景

姫路市には、小学校区が69あります。市はこの校区ごとに将来人口の推計を出して公表しています。2020年の国勢調査を基準に、2050年までどう変わるかを、69本並べたものです。

その一覧を上から見ていくと、あることに気づきます。2020年から2050年にかけて人口が増える見込みの校区は、7つしかありません。手柄、荒川、城陽、糸引、別所、広畑第二、大津茂。残る62校区は減ります。山間部や島しょ部には、5割以上減る校区もあります。家島校区は、2020年の時点ですでに高齢化率が50%を超えており、市内で唯一そうなっている校区です。

これは市が自分で計算し、自分で公表している数字です。外部の誰かが厳しく見積もったものではありません。姫路市の「いま」を考えるとき、私たちはこの69本の推計から出発するのが、いちばん正直だと思っています。

この記事では、姫路の現在の姿を、都合の良い部分だけを拾わずに書いてみます。人口、市域の広さ、北部と島、南西部の「区」、川、災害区域、移住補助金、駅前、城の料金、そして持ち家をどうするかという話まで。長くなりますが、この街に長く住んでこられた方ほど、途中で「ああ、あれのことか」と思い当たる箇所があるはずです。

五十一万六千人と、五百三十四平方キロメートル

まず、いまの姫路市の大きさを押さえておきます。

市の公表によれば、2026年8月1日現在で人口516,285人、世帯数232,103世帯、面積534.35平方キロメートルです。人口を世帯数で単純に割ると、1世帯あたり約2.2人になります。四人家族が標準だった時代の姫路とは、もう別の街です。

面積のほうが、この街を理解するうえでは効いてきます。534平方キロメートルというのは、兵庫県内で第4位の広さです。そしてこの広さは、もともとあったものではありません。2006年3月に、家島町・夢前町・香寺町・安富町の4町を編入合併したことで、いまの市域になりました。

合併から20年が経ちました。20年というのは、合併当時に小学生だった子どもが、今は社会人になっている長さです。行政の枠としては、もうすっかり一つの姫路市です。しかし街としては、どうでしょうか。

この記事でこれから見ていくのは、まさにその部分です。姫路市は、一つの街ではありません。そしてそれは、私たちが外から勝手に言っていることではなく、市自身が公式資料の中で、繰り返しそう書いています。

将来推計のほうも見ておきます。2020年の国勢調査を基準にした市の推計では、2030年に約50.4万人、2050年に約43万人。2020年と比べて18.9%の減少、実数で約10万人減です。

10万人という数字は、感覚としてつかみにくいかもしれません。これはたとえば、いまの姫路市の人口のおよそ5分の1が、30年かけて消えていくということです。市内には、それより人口の少ない自治体が周辺にいくつもあります。市がひとつ丸ごと無くなるくらいの規模が、姫路市の中から減っていく計算になります。

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減る一方で、七十五歳以上だけが十万人を超える

市はもう一つ、別の推計も出しています。「地域の未来予測」という資料です。こちらは2023年を基準にしていて、国勢調査基準の推計とは前提が少し違いますが、向きは同じです。

数字を並べます。2023年に52.6万人、2030年に50.6万人、2050年に43.6万人。2023年から2050年で17.1%の減少です。

この資料のいちばん重要な部分は、総数ではなく内訳です。2023年から2050年にかけて、年齢層ごとにこう動くとされています。

年齢区分 2023年→2050年の変化
15歳未満 −31.8%
15〜64歳(生産年齢) −27.5%
65歳以上 +12.5%

※姫路市「地域の未来予測」(2023年基準)による推計値です。

子どもが3割減り、働く世代が3割近く減り、高齢者だけが1割強増えます。高齢化率は2020年の約30%から、2050年には約40%へ。そして特筆すべきは、75歳以上の人口が2050年に10万人を超えてピークを迎えるという予測です。

75歳以上が10万人という規模は、街の作りに直接効いてきます。運転をやめる方が増えます。買い物と通院の距離が問題になります。階段のある家、坂の上の家、道の細い家が、住み続けにくくなります。除雪や草刈りといった、体を使う近所の仕事の担い手が減ります。自治会の役が回ってこなくなるのではなく、回す人がいなくなります。

そして、この変化は市内で均等には起きません。すでに高齢化率が50%を超えている家島校区のような場所と、これから増える7校区のような場所とでは、同じ2050年でも見えている景色がまったく違います。市が校区単位で推計を出しているのは、そういう差が現実にあるからです。

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市が自分で、街を五つに割っている

ここから、姫路の地域差の話に入ります。

姫路市は、移住定住を紹介するサイトの中で、市域を5つのエリアに分けて説明しています。中心部、中部、南部、北部、そして家島諸島。行政区分ではなく、暮らしの手触りによる区分です。

私たちがこの5区分を重視するのは、市自身が「同じ姫路市でも暮らしがまるで違う」と認めた上で書いているからです。移住を考える人に対して、一つの姫路を売り込むのではなく、五つの姫路を並べて選ばせている。それがどういうことなのか、ひとつずつ見ていきます。

中心部。姫路城から大手前通りの周辺です。市の説明では、生活に必要な施設が徒歩圏に揃い、文教施設が集中している区域とされています。車がなくても暮らせる姫路は、実質的にここです。

中部。おおむね山陽自動車道より南、姫路バイパスより北の帯です。市の案内では、JR在来線で三ノ宮まで約40分、大阪まで約60分。桜山公園や自然観察の森があります。通勤圏として神戸・大阪を見ながら、緑のある場所に住む、という選択がしやすい区域です。

南部。的形町、白浜町、飾磨区、勝原区、大津区、網干区。海に面した側です。鉄鋼や化学の大規模工場があり、マッチや鎖といった伝統産業があり、漁業があります。市の説明の中に、非常に印象的な一文があります。「学校区ごとに商圏が形成」されている、という表現です。

北部。夢前町、安富町、香寺町、船津町、太市。ここについての市の説明は、率直です。「基本的には自動車が欠かせない」「市街地まで車で約40〜50分」。夢前には中国自動車道のスマートインターチェンジがあり、香寺にはJR播但線が通っています。

家島諸島。有人島は4つ、家島、坊勢島、男鹿島、西島。合わせて約4,000人が暮らしています。姫路駅から港まで車で15分、そこから定期船で30分。坊勢は、単一の漁港あたりの漁船数が日本一とされる島です。

この5つを並べて、もう一度読み返してみてください。「市街地まで車で40〜50分」の場所と、「定期船で30分」の島と、「徒歩圏に生活施設が揃う」都心が、同じ市役所の管轄下にあります。同じ市民税を納め、同じ議会に代表を送り、同じ広報紙を受け取っています。

市街地まで車で四十分の、姫路市がある

北部の話を、もう少し深く掘ります。ここは、姫路市の中でいちばん誤解されやすい部分だからです。

市が公式に「市街地まで車で約40〜50分」と書いている、という事実の重みを、少し考えてみてください。40分から50分というのは、都市間の移動の時間です。市の中心部から同じ市内の一部まで、それだけかかる。しかもこれは電車ではなく車での時間で、市自身が「基本的には自動車が欠かせない」と添えています。

この一文は、住宅を持っている方にとって、非常に実務的な意味を持ちます。車が運転できるかどうかが、そのまま住み続けられるかどうかになるということです。

先ほどの推計を思い出してください。2050年に75歳以上が10万人を超えます。運転免許を返納する年代の方が、市内に10万人以上いる時代が来ます。そのとき、車が欠かせない区域にある家は、どうなるでしょうか。

ここは脅すつもりで書いているのではありません。北部には、都心にはないものが確実にあります。土地が広い。空が広い。隣家との距離がある。夢前のスマートインターチェンジを使えば、高速道路へのアクセスは決して悪くありません。香寺にはJR播但線が通っていて、鉄道がまったくない訳でもありません。畑があり、山があり、川があります。都心のマンションでは絶対に手に入らない暮らしが、そこにあります。

ただ、その暮らしが「運転できること」を前提に成り立っているという構造だけは、正確に押さえておく必要があります。そして、その前提が外れたときにどうするかを、外れる前に考えておく価値があります。

合併から20年経って、北部の姫路市民が「姫路に住んでいる」と言うときと、都心の姫路市民が同じことを言うときとで、指しているものがどれだけ違うか。この差が、市の資料の中に、はっきり書かれています。

定期船で三十分の、姫路市もある

家島諸島の話をします。姫路市の中で、いちばん語られることの少ない場所です。

有人4島に、約4,000人。姫路駅から港まで車で15分、定期船で30分。この「30分」という数字だけを見ると、案外近いように思えるかもしれません。神戸まで電車で40分かかることを考えれば、島のほうが近い計算にもなります。

しかし、船と電車は違います。船には時刻表があり、便数があり、天候があります。台風が来れば止まります。夜遅くには走りません。急な用事で夜中に本土へ渡る、という選択肢が、日常的にあるわけではありません。この「戻れない時間帯がある」という感覚は、橋でつながった場所には無いものです。

そして冒頭に書いた数字がここに戻ってきます。家島校区は、2020年の時点で高齢化率が50%を超えていました。市内で唯一です。2020年の時点で、住民の半分以上が65歳以上だった。これは将来推計ではなく、実績です。

一方で、坊勢島には別の顔があります。単一の漁港あたりの漁船数が日本一とされる島です。漁業という、いまも現役で回っている産業がそこにあります。人口が減り高齢化が進む場所、という一面だけで島を語ると、実態を取り落とします。

2006年の合併で、家島町は姫路市になりました。それによって、姫路市は「離島を抱える市」になりました。市が船の便を考え、島の学校を考え、島の水道を考える立場になった、ということです。534平方キロメートルという面積の中には、海を隔てた4つの島が含まれています。

南西部の「区」は、行政区ではありません

ここで、姫路市民でも意外と知らない事実を一つ挟みます。

姫路市の南西部には、飾磨区、広畑区、大津区、勝原区、網干区、余部区という地名があります。住所にも「区」が入りますし、日常会話でも「飾磨のほう」「網干のほう」と当たり前に使います。

ところがこの「区」は、行政区ではありません。法人格を持たない、単なる地名の区分です。政令指定都市の区(神戸市の東灘区や大阪市の北区など)とは、まったく性質が違います。区役所があるわけでも、区長がいるわけでもありません。

由来は1946年の合併です。このとき周辺の自治体が姫路市に合併し、その名残として「区」という呼び名だけが地名に残りました。以来80年、住所として使われ続けています。

この事実がなぜ大事かというと、姫路市の南西部は、もともと別の街だったということを、地名そのものが記録しているからです。飾磨には飾磨の中心があり、網干には網干の中心がありました。合併して姫路市になったあとも、その中心はそのまま残りました。

だからこそ、市が南部について「学校区ごとに商圏が形成」されていると書くことになります。この表現は、行政の文章としてはかなり踏み込んでいます。ひとつの大きな商業中心があって、そこに市民が集まる構造ではない。校区くらいの単位で、それぞれ買い物が完結している。つまり生活圏が細かく分かれているということです。

南西部にお住まいの方なら、実感があるはずです。日常の買い物で姫路駅前まで出る回数が、年に何回あるでしょうか。多くの方にとって、駅前は「たまに行く場所」であって、生活の場ではないと思います。

そして、この構造は不動産の見え方にも影響します。姫路市内の物件は、「姫路駅からどれだけ近いか」だけでは評価が決まりません。その校区の中で生活が完結する場所なのかどうか、という見方のほうが、実際の暮らしには近い。市が「学校区ごとに商圏」と書いているのは、まさにそのことだと私たちは読んでいます。

川が、それぞれ別々に海へ落ちていく

地形の話をします。地図を見ているだけでは意外と気づかない、姫路の身体感覚です。

姫路市域を流れる川を、東から順に挙げます。市の中東部を市川、中部を船場川と野田川、中西部を夢前川と大津茂川、そして西端を揖保川。これらがそれぞれ南へ流れ、播磨灘に注いでいます。

ここが姫路の特徴だと思われます。大きな川が一本あって、支流がそこへ集まり、河口が一つある――という形ではありません。複数の川が、合流せずに、それぞれ独立して海に落ちていく。この地形理解は、二次的な情報にもとづくものなので断定は避けますが、地図上ではそのように読めます。

この形が街に何をもたらすか。川が、市域を南北に何本も切っているということです。東西に移動しようとすると、必ずどこかで川を渡ります。橋のある場所でしか渡れません。だから東西方向の道は、橋の位置に縛られます。

これが、先ほどの「学校区ごとに商圏」という話とつながってきます。南部は東西に長い区域ですが、そこを何本もの川が縦に切っています。川で区切られた区画ごとに、生活圏ができやすい。飾磨と網干のあいだには、いくつもの川が挟まっています。

長く住んでいる方なら、「川を渡った向こう」という言い方をされることがあると思います。距離としてはそれほど遠くないのに、心理的には別の場所に感じられる。橋を渡るという動作が入るだけで、街は分かれます。

そしてもう一つ。川は、扇状地や氾濫原をつくります。川沿いの平地は、その川が長い時間をかけて土砂を運んで作った土地です。逆に、川から離れた場所は台地であったり、山の裾であったりします。同じ市内でも、地面の成り立ちが違います。水がどう流れるか、雨のときに何が起きるかも、そこで変わってきます。

ご自宅がどの川の流域にあるのか、その川のどちら側にあるのか。これは、家を長く持つうえでは知っておいて損のない情報です。

制度が「誘導しない」と決めた土地があります

ここは、この記事でいちばん硬い話になります。しかし、持ち家を持っている方にはいちばん実務的な章でもあります。

姫路市には立地適正化計画があります。人口が減っていく前提で、街をどこに集めていくかを決める計画です。2018年に策定され、2021年に居住誘導区域が変更され、2024年に防災指針が追加されています。

「居住誘導区域」というのは、市がこれから人に住んでもらいたいと考えている区域のことです。ここに公共投資を集め、生活サービスを維持していく。逆に言えば、区域の外は、そうした集中的な投資の対象ではありません。

そしてこの計画には、はっきりと書かれていることがあります。居住誘導区域からは、土砂災害特別警戒区域と急傾斜地崩壊危険区域が除外されています。

用語を説明します。土砂災害特別警戒区域は、土砂災害が起きたときに建物が壊れ、住民の生命に著しい危害が生じるおそれがあるとして指定された区域です。通称「レッドゾーン」と呼ばれます。急傾斜地崩壊危険区域は、崖崩れのおそれがある区域として指定されるものです。

つまり、こういうことになります。姫路市内には、市が制度として「ここには居住を誘導しない」と決めている土地が、現に存在します。

これは「住んではいけない」という意味ではありません。すでにそこにお住まいの方が、退去を求められるわけでもありません。しかし、街づくりの計画上、そこは重点的に維持していく区域には入っていない。この事実は、家という30年、50年単位の資産を考えるときには、無視できない情報です。

姫路市は北部に山地を抱えています。市域が534平方キロメートルまで広がったということは、それだけ傾斜地を多く含むようになったということでもあります。土砂災害の警戒区域は、平野部より山際に多く分布します。

ご自宅がこの区域にかかっているかどうかは、確認できます。そして、かかっているかどうかで、将来の売却のしやすさは変わります。重要事項説明で必ず説明される事項ですから、買い手には必ず伝わります。知らずに売りに出して、あとから条件を落とすより、先に知っておくほうがはるかに良い。

もう一点、この計画には近年の動きがあります。2024年3月の改定で、「高校」が高次都市機能増進施設に位置づけられました。そして2026年2月9日の変更は、市立高校の統合への対応が理由とされています。市立高校の統合が現在進行形で進んでいる、ということです。統合の具体的な中身については、確かな情報が確認できていないためここでは書きません。ただ、学校の配置が動くという事実そのものは、街の骨格に関わる話です。学校がどこにあるかは、その周辺の住宅需要に直接効きます。

市が名指しした、十九の校区

ここから、この記事でいちばんお伝えしたい話に入ります。

姫路市には「おかえり姫路。」若者世帯郊外UJIターン補助金という制度があります。名前のとおり、若い世帯に郊外へ移り住んでもらうための補助金です。

注目していただきたいのは、この補助金に対象校区が19、名指しで指定されていることです。列挙します。

置塩、古知、前之庄、莇野、上菅、菅生、太市、林田、伊勢、谷内、山田、峰相、安富南、安富北、妻鹿、家島、坊勢、八木、豊富。

この19校区に、若い世帯が移り住んで住宅を取得すると、補助が出ます。中身はこうです。

支援の種類 金額
移住支援金 45万円(最大55万円)
子育て支援金 子ども1人あたり最大150万円、世帯上限500万円(3年分割)
空き家取得助成 購入額の2分の1、上限100万円

※姫路市「おかえり姫路。若者世帯郊外UJIターン補助金」による。自治会への加入が必須要件とされています。

金額として、決して小さくありません。子どもが3人いる世帯なら、子育て支援金だけで世帯上限の500万円に届きます。そこに移住支援金と空き家取得助成が乗ります。空き家を買った場合、購入額の半分、上限100万円が助成されます。

そして、要件に自治会への加入が必須と書かれている点も見逃せません。ただ引っ越してくればいい、という制度ではありません。地域の担い手になってほしいという意図が、条件として明文化されています。

さて、ここからが本題です。この19校区のリストは、別の角度から読むこともできます。

市が「ここに人を戻したい」と考えて、名指しで予算をつけた校区の一覧です。そして、人を戻したいということは、裏を返せば「放っておくと人が減っていく」と市が判断した校区の一覧でもある――そう読むこともできます。

断定はしません。制度の設計意図を市が明文でそう説明しているわけではないからです。しかし、19校区の顔ぶれを見れば、この読み方には無理がないと思います。北部の山あいの校区が並び、家島と坊勢という島の校区が入っています。冒頭に書いた「増える7校区」(手柄、荒川、城陽、糸引、別所、広畑第二、大津茂)は、この19校区には一つも入っていません。

市は69校区ごとの推計を公表しています。同じ市が、19校区に絞って移住補助金を出しています。この二つの資料を並べると、市が市内をどう見ているかが、かなり具体的に浮かび上がります。

もしご自宅がこの19校区の中にあるなら、そこには二つの意味があります。

ひとつは、買い手側に補助が用意されているということです。空き家取得助成は購入額の2分の1・上限100万円ですから、若い世帯が中古住宅を買うときの後押しになります。売る側から見れば、買い手の予算を押し上げてくれる制度です。この制度の存在を知らずに売買が進むこともありますから、知っておく価値はあります。

もうひとつは、市がわざわざ補助を出さなければ人が入ってこない地域だと、市自身が見ているということです。こちらは厳しい読み方ですが、目を逸らしても事実は変わりません。

姫路市には、この補助金のほかにも住まいに関わる支援があります。結婚新生活支援補助金は30万円、夫婦ともに29歳以下の場合は60万円。また「ひめじ創生奨学金返還支援」は、播磨圏域連携中枢都市圏の16自治体で取り組むもので、上限100万円に加算100万円という枠が設けられています。奨学金の返済を抱えた若い世代に、この地域に住み続けてもらうための制度です。

これらを並べると、市の姿勢が見えてきます。若い世帯を、お金を出して呼び戻そうとしている。そこまでしなければ人が動かない、という前提に、市はすでに立っています。

都心の居住者目標は、プラス一人

郊外の話が続きましたので、都心に目を移します。ここにも、静かですが決定的な数字があります。

姫路市の第4期中心市街地活性化基本計画は、2025年3月14日に内閣総理大臣の認定を受けました。期間は2025年4月から2030年3月まで、区域は約272ヘクタールです。

この計画には、数値目標が4本あります。並べます。

指標 現状値 目標値
歩行者通行量 85,542人/日(R5〜6平均) 91,000人/日(R11.4)
空き店舗数 32店舗(R5年度末) 27店舗(R11年度末)
中心市街地の居住者数 11,099人(R5.12.31) 11,100人(R11.12.31)
滞留時間 215.8分/人(R6) 230分/人(R11)

※姫路市「第4期中心市街地活性化基本計画」の数値目標より。

3行目をもう一度見てください。居住者数の目標は、11,099人から11,100人です。差は1人です。

これは誤植ではありません。実質的に「維持」を目標に掲げているということです。歩行者通行量は5,458人増やす、滞留時間は14分強伸ばす、空き店舗は5つ減らす。しかし住む人の数は、増やす計画になっていません。

この一点は、姫路の都心を考えるうえで非常に重要です。市は、中心市街地に人が住む数を増やそうとはしていません。正確には、増やす目標を掲げていません。減らさないこと自体が目標になっています。

都心の人口を維持するというのは、実は簡単なことではありません。市全体が2050年に43万人へ向かって減っていく中で、都心だけ横ばいを維持するというのは、相対的にはシェアを上げるということです。決して消極的な目標ではない、という見方もできます。

ただ、それでも「増やす」ではありません。駅前が賑わい、通行量が増え、滞在時間が伸びても、そこに住む人の数は今と同じ。それが計画に書かれた姫路の都心の姿です。

賑わいと居住は、別のものです。人が来る街と、人が住む街は、必ずしも一致しません。姫路の中心市街地は、いま前者を伸ばそうとしていて、後者は現状維持を目指しています。この設計を知っておくと、駅前の華やかなニュースを見たときの受け止め方が変わってくるはずです。

幅五十メートル、長さ六百七十メートルの実験場

その都心で、実際に何が起きているかを見ます。

大手前通りの再整備は、平成26年度から令和元年度にかけて行われました。区間は十二所前線から城南線まで、延長670メートル、幅員50メートルです。

幅員50メートルという道路は、なかなかありません。片側5車線の高速道路でも、これほどの幅にはなりません。姫路駅から姫路城の方向へ伸びるこの通りは、街路としては例外的な広さを持っています。

その50メートルの使い方を組み替えたのが、この再整備でした。車のための空間を減らし、人のための空間を増やす。歩道を広げ、植栽を入れ、人が滞在できるようにする。市の目標指標に「滞留時間」が入っているのは、この考え方の延長線上にあります。通り過ぎる場所ではなく、留まる場所にしたい、ということです。

その後の取り組みも続いています。市はウォーカブル推進を掲げ、駅北の駅前広場で「piole PARC」という社会実験を行っています。大手前通りイルミネーション2025も実施されました。さらに都心部ウォーカブル推進事業補助金という制度も用意されています。

「社会実験」という言葉の意味を、少し補足しておきます。恒久的な施設を作る前に、期間を区切って仮設で試し、効果を測るやり方です。うまくいかなければ元に戻せます。行政がこの手法を使うのは、結果に確信が持てないことを、正直に前提にしているからです。

そして、こういう動きもあります。2026年8月26日、市は「キャスパ地下駐車場」の指定管理者を公告しました。駅前の駐車場の運営者を選ぶ手続きが動いた、ということです。地上部分がこれからどうなるかについては、確かな情報が確認できていないため、ここでは書きません。

駅前で起きていることを、まとめるとこうなります。幅50メートルの通りが人向けに組み替えられ、社会実験が繰り返され、イルミネーションが灯り、補助金が用意されている。そして住む人の数の目標は、プラス1人です。この二つは矛盾していません。市は、都心を「訪れる場所」として磨いています。

城の値上げは、市民にとっては値下げでした

姫路の話をするなら、城に触れないわけにはいきません。ただし、ここで書きたいのは歴史ではなく、料金の話です。

2026年3月1日から、姫路城の縦覧料が改定されます。内容は次のとおりです。

区分 改定前 改定後
一般(18歳以上) 1,000円 2,500円
姫路市民(18歳以上) 1,000円 1,000円(据え置き)
18歳未満 300円 無料
年間券 — 5,000円

※姫路市の公表による。市民であることの確認書類は、マイナンバーカードや運転免許証などとされています。

この改定は報道でも大きく取り上げられましたが、「外国人料金の引き上げ」として語られることが多かったように思います。ここは正確に書きます。

市の制度は、「姫路市民か、そうでないか」による二重価格です。国籍による区分ではありません。東京から来た人も、大阪から来た人も、隣の市から来た人も、一般料金の2,500円です。外国からの旅行者だけが高いわけではありません。

そして、姫路市民にとってこの改定が何を意味するかというと、実質的な優遇の強化です。一般が1,000円から2,500円になる一方、市民は1,000円のまま。差額は1,500円に開きます。さらに18歳未満は300円から無料になります。子どもや孫を連れて城へ行くとき、以前より安くなる家庭のほうが多いはずです。

年間券5,000円という設定も出ました。市民価格の1,000円で計算すれば5回分。城が生活圏の中にある方にとっては、現実的な選択肢だと思います。

確認書類はマイナンバーカードや運転免許証などとされています。市民であることを証明できれば、料金は変わらないということです。

この制度をどう評価するかは意見が分かれるところでしょう。ただ、「値上げされて市民が困る」という理解は、事実と違います。市民は据え置き、子どもは無料。長く住んでいる方にとっては、むしろ条件が良くなった改定です。

そして、この料金改定の背景には、観光客の数があります。

市が公表している観光入込客数は、こう推移しています。令和4年度に695.3万人、令和5年度に941.7万人でピーク、令和6年度は923.2万人。

令和4年度から令和5年度で、約246万人増えています。1年で250万人近く増えるというのは、相当な変化です。そして令和6年度は、わずかに減ったものの900万人台を維持しています。

この数字を、市の人口と並べてみてください。市民が約51.6万人、年間の観光入込客数が約923万人。市民1人あたり、年間18人ほどの来訪者がいる計算になります。

観光客が増えることは、街にとって良いことばかりではありません。人が集まる場所の混雑、交通、ごみ、騒音。そうした負荷を引き受けるのは、そこに住んでいる人です。城の周辺、駅から城までの通り、その界隈にお住まいの方は、この10年ほどで街の様子が変わったことを実感されているはずです。

市民の縦覧料が据え置かれ、18歳未満が無料になったことの意味は、この文脈で見るとはっきりします。負荷を引き受けている住民には従来どおりの条件を残し、増えた費用は訪れる側に求める。そういう設計だと読むことができます。

ただし、これも過大に読むべきではありません。900万人が訪れる街に住んでいるからといって、市民一人ひとりの暮らしが直接豊かになるわけではありません。観光の売上が落ちる先は限られていますし、城から離れた校区で暮らす方にとって、この数字は日々の生活とほとんど接点がないはずです。「観光都市・姫路」という言葉が指しているのは、市域534平方キロメートルのうち、ごく一部の範囲です。この記事でここまで見てきた北部や島の暮らしと、900万人の数字は、同じ市の中にありながら別々に動いています。

2026年8月には、市が観光交流センター「SHIRO TERRACE」のロゴを発表しました。観光の受け入れ側の整備も、進んでいます。

姫路城そのものの歴史については、姉妹編の歴史記事で詳しく扱いましたので、ここでは深追いしません。ただ一つだけ言えるのは、この街の観光は、城という一点に非常に強く依存しているということです。900万人という数字は、城があるから成り立っています。それは強みでもあり、構造上の偏りでもあります。

高炉を止めたまま、鉄をつくり続けている

姫路のもう一つの顔である産業について、書ける範囲で触れます。以下は二次的な情報にもとづくため、断定を避けた書き方をします。

南部の広畑地区には、日本製鉄瀬戸内製鉄所広畑地区があります。ここは1993年に全高炉が休止し、以降は冷鉄源溶解法という方式で、粗鋼を年間約100万トン生産しているとされています。主力製品は薄板、めっき鋼板、電磁鋼板とされます。

この「高炉を止めたが、製鉄は続けている」という状態は、少し説明が必要です。高炉というのは鉄鉱石から鉄をつくる設備で、製鉄所の中心です。それを止めるというのは、通常なら製鉄所の縮小を意味します。しかし広畑では、鉄スクラップなどを溶かす方式に切り替えて、生産を続けてきたとされています。

もう一社、山陽特殊製鋼は姫路市に本社を置いています。軸受鋼で国内最大手とされる企業です。2019年に日本製鉄の連結子会社となり、2025年1月31日には、日本製鉄がTOB(株式公開買付け)によって完全子会社化することを発表したとされています。金額は約700億円と報じられました。

この二社の関係が、姫路の産業構造を象徴しています。市内の主要な製鉄・特殊鋼の事業が、一つのグループの下にまとまってきたということです。

従業員数などの具体的な数字については、確かな情報が確認できていないため書きません。ただ、大規模な工場が南部に立地しているという事実は、街の姿を大きく規定しています。市が南部を説明するときに「鉄鋼・化学の大規模工場」を挙げているのは、そのためです。

そして、この産業構造は雇用に表れます。市が公表している主要な統計指標によれば、2026年6月時点の有効求人倍率は、姫路が1.20、兵庫県が0.94、全国が1.17でした。

この3つの数字の並びは、なかなか珍しいものです。姫路が全国平均を上回り、兵庫県平均を大きく上回っています。県全体が1を切っている中で、姫路は1.20。求人が求職者を上回っている状態です。

働き口があるということは、若い世代がこの街に残る、あるいは戻ってくる理由になります。人口が2050年に43万人へ向かうという推計の一方で、いまの労働市場はこういう数字です。減っていく街の中に、人手が足りない産業がある。この二つは同時に成り立っています。

毎年四百億円という、見えない支払い

市の「地域の未来予測」には、人口以外にも、目を引く数字が載っています。

公共施設の維持・更新に、毎年平均で400億円を超える費用が必要とされています。

公共施設というのは、市役所や学校だけではありません。公民館、図書館、体育館、市営住宅、上下水道、道路、橋。市民が普段意識せずに使っているもののほとんどが、ここに含まれます。それらは作った時点で終わりではなく、定期的に直し、いずれ建て替えなければなりません。

400億円という額を、市の規模と並べて考えてみてください。人口51.6万人で割ると、市民1人あたり年間7万7千円ほどになります。4人家族なら、年間30万円を超える計算です。実際にそのまま請求されるわけではありませんが、そういう規模の維持費が毎年かかる施設群を、この街は抱えているということです。

そして、面積534平方キロメートルという広さが、ここに効いてきます。広い市域に施設が分散しているほど、維持費は増えます。同じ人口でも、コンパクトな市とそうでない市では、必要な道路の長さも水道管の長さも違います。2006年の合併で北部の3町と家島町が加わったということは、そのぶんの施設も引き受けたということです。

これが、立地適正化計画の背景にあります。人が減り、税収が減り、しかし施設の維持費は面積に応じてかかり続ける。だから、どこに人を集め、どこには集めないかを決めておく必要がある。計画というのは、そういう性質のものです。

そしてもう一つ。市立高校の統合が動いているという話が先に出ましたが、公共施設の統廃合は、これから増えることはあっても減ることはないと考えておくのが現実的です。市が自ら「毎年400億円超」と書いている以上、施設の数を維持し続ける前提には立っていないはずです。

ご自宅の近くの公共施設が、10年後、20年後もいまと同じ形であるとは限りません。学校、公民館、支所。これらは住宅の価値に、じわじわと効いてくる要素です。

年に二回しかない、無料相談会

ここから、空き家の話に入ります。持ち家を持っている方にはいちばん直接的な章です。

姫路市は空き家対策の枠組みを持っています。2022年3月に空家等対策計画を策定し、老朽危険空家等対策条例も定めています。具体的なメニューとしては、空き家バンク、老朽空家解体補助金、空き家改修支援事業があります。

そして、私たちがいちばん実用的だと考えているのが、年2回、夏と冬に開かれる無料相談会です。

この相談会の何が優れているかというと、専門家の顔ぶれです。市の案内によれば、不動産鑑定士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士が対応します。

この4つの職種が同じ場に揃うことの意味を、少し説明します。空き家をめぐる問題は、たいてい複数の分野にまたがります。いくらで売れるのかは不動産鑑定士の領域、兄弟間の話し合いがこじれていれば弁護士の領域、相続登記が済んでいなければ司法書士の領域、境界がはっきりしなければ土地家屋調査士の領域です。

ところが、これを個別に相談しようとすると、それぞれ別の事務所を回ることになります。しかも、自分の問題がどの職種の領域なのかを、相談する前に自分で判断しなければなりません。多くの方が動けなくなるのは、まさにこの入り口の部分です。

4職種が同じ会場にいれば、その仕分けを向こうがやってくれます。「まず誰に相談すればいいのか」という最初の関門を、この相談会は取り払っています。しかも無料です。

ただし、年に2回しかありません。夏と冬です。思い立ったときにいつでも行ける、というものではないので、開催の告知には注意を向けておいたほうがよいと思います。

市はもう一つ、行政書士を自治会に派遣する専門家派遣事業も行っています。個人が相談に行くのではなく、地域単位で専門家を呼ぶ形です。自治会でこうした場が設けられたときには、参加する価値があります。

そして、税制についても市は案内を出しています。相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除です。相続で取得した被相続人の居住用家屋を売却した場合に、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、市がこれを市民向けに案内しています。

3,000万円の控除というのは、非常に大きな金額です。要件は細かく、期限もありますので、必ず個別に確認が必要ですが、この制度を知らずに売却の判断をすると、結果が大きく変わることがあります。市が広報しているということは、それだけ該当する方が市内に多いということでもあります。

五十キロの道路計画は、まだ素案の段階です

将来の街の形に関わる話を、一つ挟んでおきます。播磨臨海地域道路です。

これは、明石西ジャンクション(仮称)から広畑インターチェンジ(仮称)まで、約50キロメートルを結ぶ道路の構想です。経緯を整理すると、こうなります。

  • 2016年5月:約35キロメートルの区間が優先区間として設定されました。
  • 2020年6月:ルートについて「内陸・加古川ルート」の採用が決定されました。
  • 2023年:都市計画の素案が公表されました。

ここまでが、私たちが確認できている範囲です。2024年から2026年にかけての進捗については、確かな情報が確認できていないため書きません。「素案が公表された」段階までしか、この記事では扱いません。

それでも、この構想の存在は知っておく意味があります。50キロメートルの道路は、街の形を変えます。インターチェンジができれば周辺の土地利用が変わります。物流の流れが変わります。通勤の経路が変わります。

ただし、道路計画というのは非常に長い時間がかかるものです。2016年に優先区間が決まり、2020年にルートが決まり、2023年に素案が出た。この進み方を見れば、実際に道路として供用されるまでには、まだ相当な年月がかかると考えるのが自然です。

不動産の判断において、こうした長期計画をどう扱うべきか。私たちの考えは、「あてにしない、しかし知っておく」です。10年後、20年後の話を前提に今日の判断をするのは危ういですが、まったく知らないまま判断するのも避けたい。そのくらいの距離感が適当だと思います。

五つの姫路、それぞれの持ち家

ここまで見てきたことを、住まいの判断に接続していきます。答えは出しません。材料を並べます。

まず、姫路市の中で自分の家がどこに位置しているかを、確かめてみてください。市が示した5区分に沿って整理します。

中心部の場合。生活施設が徒歩圏にあり、車がなくても暮らせます。これは、これから75歳以上が10万人を超えていく街の中で、非常に強い条件です。運転をやめても住み続けられる家は、これから相対的に価値が上がる可能性があります。ただし、市の中心市街地活性化基本計画では、居住者数の目標は11,099人から11,100人。市は都心の居住人口を増やす計画にはしていません。賑わいは伸ばすが、住む人は横ばい。この設計を頭に入れておく必要があります。

中部の場合。JR在来線で三ノ宮まで約40分、大阪まで約60分。神戸・大阪への通勤圏として成立し、かつ緑があります。桜山公園や自然観察の森があるのもこの区域です。通勤の便と住環境の両方が成り立つという意味で、市内では比較的、条件の安定した区域だと言えます。

南部の場合。大規模工場があり、雇用があります。有効求人倍率1.20という数字を支えているのは、この産業です。一方で、市が「学校区ごとに商圏が形成」と書いているとおり、生活圏が細かく分かれています。ご自宅の価値は、「姫路駅からの距離」より「その校区の中で生活が完結するか」で決まる側面が強い。買い手も、多くはその生活圏の中から出てきます。

北部の場合。市が「基本的には自動車が欠かせない」「市街地まで車で約40〜50分」と明記した区域です。19校区の移住補助金の対象は、多くがこの一帯にあります。買い手には空き家取得助成(購入額の2分の1・上限100万円)と子育て支援金があります。これは売却時の追い風です。同時に、市が補助を出さなければ人が入らないと判断した区域だ、という読み方もできます。そして、運転できるかどうかが住み続けられるかどうかに直結します。

家島諸島の場合。定期船30分の距離で、家島校区はすでに高齢化率50%超。坊勢という日本一の漁船数を持つ漁港があり、産業は動いています。ただし住宅市場としては、本土とはまったく別の条件で動きます。

この5つのどこにご自宅があるかで、考えるべきことが変わります。「姫路市の戸建て」という一つのくくりで語れるものは、実はほとんどありません。

持ち続けるか、手放すか。この街で材料になるもの

最後に、判断の材料を整理します。私たちが「これを見ておくとよい」と考えている点を、5つ挙げます。

ひとつめ。ご自宅の校区が、増える7校区に入っているかどうか。市は69の小学校区ごとに2050年までの推計を公表しています。増える見込みは手柄、荒川、城陽、糸引、別所、広畑第二、大津茂の7校区。5割以上減る校区もあります。この推計は市の公式資料ですから、誰でも確認できます。ご自宅の校区がどちらに近いのかを知っておくことは、判断の土台になります。

ふたつめ。19校区の対象に入っているかどうか。入っていれば、買い手側に移住支援金・子育て支援金・空き家取得助成という後押しがあります。売却を考える際に、この制度の存在を買い手に伝えられるかどうかで、話の進み方は変わります。同時に、市がその地域をどう見ているかも、そこに表れています。

みっつめ。土砂災害特別警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域にかかっているかどうか。立地適正化計画は、これらの区域を居住誘導区域から除外しています。制度として「誘導しない」土地です。かかっている場合、売却時には必ず買い手に説明されます。先に知っておくほうが、対応の幅は広く残ります。

よっつめ。車がなくても住み続けられる家かどうか。2050年に75歳以上が10万人を超えます。北部については、市自身が「基本的には自動車が欠かせない」と書いています。運転をやめたあとの生活が、その家で成り立つのか。これは資産の話であると同時に、ご自身の暮らしの話です。

いつつめ。名義が整理されているかどうか。年2回の無料相談会に司法書士と土地家屋調査士が入っているのは、相続登記と境界が、空き家問題のいちばん詰まりやすい場所だからです。売る売らないの判断より先に、権利関係を確認しておくほうが、選択肢は広く残ります。そして相続空家の3,000万円特別控除のような制度は、要件と期限があります。動ける時期を逃すと、使えたはずのものが使えなくなります。

ここまで、姫路市の現在を見てきました。まとめるなら、こうなると思います。

姫路市は、一つの街ではありません。市が自分で5つのエリアに分け、69の校区ごとに人口推計を出し、19の校区に名指しで補助金を出しています。増える校区は7つで、5割以上減る校区もあります。都心の居住者目標はプラス1人。北部は市街地まで車で40〜50分。島までは定期船で30分。それらすべてが、同じ「姫路市」です。

そして同時に、この街には年間900万人を超える人が訪れ、有効求人倍率は県平均も全国平均も上回っています。城の料金は市民に対して据え置かれ、18歳未満は無料になります。減っていく数字と、動いている数字が、同じ場所に並んで存在しています。どちらか一方だけを見て街を評価すると、判断を誤ります。

家を持ち続けるか、手放すか。この判断は、街の状況だけで決まるものではありません。ご家族の事情、ご自身の年齢、これからの暮らし方。そちらのほうが、はるかに大きな要素です。ただ、街の状況を正確に知っておくことは、その判断の土台になります。

決めるのはご本人です。私たちにできるのは、判断の材料を、都合よく加工せずにお渡しすることだと考えています。

よくある質問

姫路市の人口は、これからどのくらい減るのですか。

市が公表している2020年国勢調査基準の推計では、2030年に約50.4万人、2050年に約43万人となっています。2020年と比べて18.9%の減少、実数で約10万人減です。市版の「地域の未来予測」(2023年基準)では、2023年の52.6万人が2050年に43.6万人へ、17.1%の減少とされています。内訳は2023年から2050年で15歳未満が31.8%減、生産年齢が27.5%減、65歳以上が12.5%増。高齢化率は2020年の約30%から2050年には約40%になり、75歳以上は2050年に10万人を超えてピークを迎えるとされています。なお、市は小学校区69区ごとにも推計を公表しており、2020年から2050年にかけて人口が増える見込みの校区は手柄・荒川・城陽・糸引・別所・広畑第二・大津茂の7区のみです。山間部・島しょ部には5割以上減る校区もあり、家島校区は2020年時点で高齢化率50%超と、市内で唯一の水準に達しています。

姫路市内でも、地域によって暮らしはそんなに違うのですか。

かなり違います。市は移住定住サイトで、市域を中心部・中部・南部・北部・家島諸島の5つに分けて説明しています。中心部は生活施設が徒歩圏にあり文教施設が集中。中部はJR在来線で三ノ宮まで約40分、大阪まで約60分。南部は鉄鋼・化学の大規模工場やマッチ・鎖の伝統産業、漁業があり、市の表現では「学校区ごとに商圏が形成」されています。北部については市自身が「基本的には自動車が欠かせない」「市街地まで車で約40〜50分」と明記しています。家島諸島は有人4島に約4,000人が暮らし、姫路駅から港まで車15分、定期船で30分です。2006年3月に家島町・夢前町・香寺町・安富町を編入した結果、市域は534.35平方キロメートル、県内第4位の面積になりました。

飾磨区や網干区の「区」は、行政区なのですか。

行政区ではありません。南西部の飾磨区・広畑区・大津区・勝原区・網干区・余部区は、1946年の合併の名残として残っている地名の区分で、法人格を持ちません。政令指定都市の区とは性質が異なり、区役所や区長があるわけでもありません。住所として長く使われてきたため行政区だと思われがちですが、あくまで地名です。もともとそれぞれが別の街だった歴史が、地名として残っているものだと言えます。市が南部について「学校区ごとに商圏が形成」と書いているのも、こうした成り立ちと無関係ではないと考えられます。

姫路城の入城料が値上げされたと聞きましたが、市民も高くなるのですか。

市民は据え置きです。2026年3月1日からの改定では、一般の18歳以上が1,000円から2,500円になる一方、姫路市民の18歳以上は1,000円のままです。さらに18歳未満は300円から無料になります。年間券は5,000円です。市民であることの確認書類は、マイナンバーカードや運転免許証などとされています。報道では「外国人料金の引き上げ」として語られることもありましたが、市の制度は「姫路市民か、そうでないか」による区分であり、国籍による要件ではありません。他府県から来る日本人も一般料金です。姫路市民にとっては、差額が広がり子どもが無料になるという点で、実質的に優遇が強化された改定だと言えます。なお市が公表している観光入込客数は、令和4年度695.3万人、令和5年度941.7万人(ピーク)、令和6年度923.2万人と推移しています。

空き家について、市に相談できる場はありますか。

あります。姫路市は年2回、夏と冬に空き家の無料相談会を開いており、不動産鑑定士・弁護士・司法書士・土地家屋調査士が対応します。価格のこと、親族間の争いのこと、相続登記のこと、境界のこと、いずれも同じ場で相談できるのが特徴です。「まず誰に相談すればよいか分からない」という状態でも足を運べる場だと言えます。ただし年2回しかありませんので、開催の告知には注意が必要です。このほか、行政書士を自治会に派遣する専門家派遣事業もあります。制度としては空き家バンク、老朽空家解体補助金、空き家改修支援事業があり、2022年3月に空家等対策計画が策定され、老朽危険空家等対策条例も定められています。税制面では、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除について市が案内を出しています。要件と期限がありますので、個別の確認は必要です。

この記事で参照した資料

※本記事は上記の公表資料に基づいて構成しています。裏付けの確認できなかった事項については、あえて記載していません。産業に関する記述の一部は二次的な情報にもとづくため、断定を避けた表現としています。


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