同じ兵庫県で、家の値段が50倍ちがう【2026年最新】五国はいま、まったく違う仕事をしている

兵庫県でいちばん高く家が売れる市は、芦屋市です。直近1年の戸建て成約の中央値は6,300万円。土地165㎡、延床125㎡。
いちばん安いのは養父市でした。中央値は125万円。50.4分の1です。
ここまでは、なんとなく想像がつく話かもしれません。問題はその中身です。養父市で売れている家のほうが、土地も建物も広い。土地285㎡は芦屋の1.7倍、延床140㎡は芦屋より15㎡広い。それでも値段は50分の1になります。
広さでは説明がつきません。では、何が値段を決めているのか。
答えは「その土地で、いま、どんな仕事が行われているか」です。兵庫県は摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という5つの旧国が明治に合併してできた県ですが、150年たったいまも、この5つはまったく違う経済で回っています。日本で2番目にモノをつくる工業地帯があり、入城者の3人に1人が外国人という城があり、取引の3件に1件が農地という地域があります。
この記事では、兵庫県の5つの地域が「いま何で食べているのか」を統計で追いかけます。そのうえで最後に、価格表をもう一度見ます。順番を逆にすると、あの50倍がまったく違って見えてくるはずです。
まず、いまの兵庫県はどんな形をしているのか
結論:人口は5,306,208人(令和7年11月1日推計)。2025年国勢調査の速報では県人口は2.6%減の約532万人で、41市町のうち人口が増えたのは明石市ただ1つでした。
兵庫県は29市12町、面積8,400.95km²で全国12位。日本海と瀬戸内海の両方に面する、数少ない県のひとつです。北の端は日本海に沈む夕陽が見える香美町、南の端は太平洋に近い南あわじ市。直線距離でおよそ180km、車で3時間以上かかります。
この南北の長さが、そのまま経済の違いになっています。
2025年の国勢調査速報で、県内でいちばん象徴的だったのは神戸市でした。人口1,497,630人で、150万人を割り込みました。2020年から27,522人減(1.8%減)です。政令指定都市20市のうち人口規模は7番目になりました。
ところが、世帯数は増えている
ここで多くの人が見落とす数字があります。同じ神戸市の世帯数は766,349世帯で、4.3%増(+31,429世帯)。人口が減っている5年間に、世帯は3万世帯以上増えているのです。
結果として、1世帯あたりの人員は1.95人。はじめて2人を割りました。

家を必要とする単位は「人」ではなく「世帯」です。だから、人口が減っていても住まいの必要戸数は減っていません。ただし1世帯1.95人ということは、必要とされる家の大きさは確実に小さくなっているということでもあります。この点は記事の最後でもう一度出てきます。
そしてもうひとつ。神戸市9区のうち、人口が増えたのは中央区(+3.1%)、兵庫区(+2.5%)、灘区(+0.4%)の3区だけでした。残る6区はすべて減っています。県全体が均一に縮んでいるのではなく、都心に寄っているのです。
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なぜ、いまも5つに分かれたままなのか
結論:兵庫県の地域差をつくっているのは行政区分ではなく、山と海です。県内には六甲山系と中国山地が横たわり、北は日本海、南は瀬戸内海と、気候の違う2つの海に面しています。
摂津は、六甲山系と海にはさまれた細長い帯です。神戸市の市街地は、山から海までの幅が最も狭いところで2kmもありません。使える平地が最初から限られているため、人も鉄道も商業も、東西に走る数本の線に沿って集中しました。JR・阪急・阪神が並走している風景は、地形が生んだものです。
その摂津と播磨を分けるのが、須磨区と垂水区の境にある旗振山です。標高わずか253mの山ですが、太閤検地でここに国境が引かれ、いまも区界として残っています。地図で見れば連続した市街地ですが、須磨区は摂津、垂水区は播磨。戸建て成約中央値はどちらも2,800万円で、この境目だけは価格に差が出ていません。
播磨と但馬のあいだには中国山地が横たわります。ここを越えると気候が変わります。播磨は瀬戸内式気候で雨が少なく日照が多い。対して但馬は日本海側気候で、香美町や新温泉町の山間部は積雪の多い地域です。同じ県のなかに、ため池を必要とする土地と、雪下ろしを必要とする土地が両方あるということです。
この気候差は住宅にも表れます。播磨の家は日照と風通しを重視した設計になり、但馬の家は屋根の勾配と断熱が問われます。中古住宅の評価軸そのものが、地域で違ってきます。
丹波は、そのどちらでもない内陸の盆地です。昼夜の寒暖差が大きく、霧が出る。この気候が丹波黒大豆や丹波栗といったブランド作物を生みました。気候が農産物のブランドをつくり、そのブランドが土地の使われ方を決めているという順番です。
淡路は、明石海峡で本州から切り離された島でした。1998年4月5日に明石海峡大橋(橋長3,911m)が開通して、はじめて陸続きの経済圏に入ります。橋ができてまだ30年足らずです。
つまり兵庫県の五国は、明治の行政区分がなんとなく残っているのではありません。山と海と気候が、いまも実際に経済を分けているのです。
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結論:神戸市で人口が増えた3区はすべて摂津側で、いずれも三宮・元町へ電車で10分圏です。摂津の戸建て成約中央値は3,200万円、土地㎡単価は25.2万円で県内最高水準でした。
摂津は、神戸市の須磨区より東と、阪神間(尼崎・西宮・芦屋・伊丹・宝塚・川西)を含む地域です。県の人口の過半がここに集まっています。
摂津と播磨の境目がどこかというと、これがはっきりしています。須磨区と垂水区の境にある旗振山(標高約253m)。豊臣秀吉の太閤検地で引かれた線が、いまも区界として残っています。山ひとつ越えるだけで国が変わる。だから須磨区は摂津、垂水区は播磨です。
摂津は「マンションの国」である
摂津の不動産取引を種類別に見ると、中古マンションが53.4%。過半数です。戸建てより集合住宅のほうが多く動いています。
これは当たり前のようでいて、県内では摂津だけの特徴です。播磨は戸建て(宅地=土地と建物)が52.1%で過半、淡路は建物のない土地が39.1%、但馬にいたってはマンションの取引が0.3%しかありません。丹波は1件も動いていない。

「兵庫県の相場」という言い方が成り立たないのは、比べる前の段階で売られているモノ自体が別物だからです。摂津の相場観を持ったまま但馬の家を見ると、必ず読み違えます。
神戸港は、いまも日本第3位の港である
中央区の人口が3.1%増えた背景には、神戸港の存在があります。
国土交通省の2024年速報値によると、神戸港のコンテナ取扱貨物量は2,771,879TEUで全国3位。東京(4,700,678TEU)、横浜(3,075,369TEU)に次ぐ規模で、名古屋(2,755,491TEU)と大阪(2,315,878TEU)を上回っています。国際コンテナ戦略港湾にも指定されています。
「神戸港は震災で地位を失った」という言われ方をしますが、少なくともコンテナ取扱量で見れば、いまも国内3番目の港です。港湾・物流・商社・海運といった仕事がこの周辺に集まり、それが中央区の人口増と、5,000万円という戸建て価格を支えています。

灘五郷 ―― 東灘区と灘区が高い、もうひとつの理由
神戸市東灘区5,000万円、灘区4,800万円。この2区は住宅地として知られていますが、同時に日本を代表する酒どころでもあります。
灘五郷は、国税庁が定める地理的表示(GI)に指定されており、その範囲は神戸市・西宮市・伊丹市・宝塚市の4市に及びます。兵庫県は清酒の生産量が全国1位で、その中心がこの阪神間の海沿いです。
六甲山系からの伏流水である宮水、山から吹き下ろす六甲おろし、そして酒米・山田錦の産地が県内(主に播磨・北播磨)にあること。原料も水も気候も県内で完結しているという珍しい条件が、江戸期から続くこの産業を支えてきました。
不動産の観点で重要なのは、酒蔵が海沿いに広く土地を持っていることです。工場でありながら、景観と町並みの一部にもなっている。東灘区・灘区の南部が、単なる工業地帯にも単なる住宅地にもならなかった理由がここにあります。
芦屋市に工場も大型商業施設もないという事実
県内最高の芦屋市6,300万円は、何によって支えられているのか。
芦屋市には、大規模な工場がありません。県庁も、大きなターミナル駅も、巨大な商業施設もありません。市域は約18.5km²と県内で最も小さい市のひとつで、その多くが住宅です。住むこと自体が、この街の産業になっているという珍しい構造です。
阪神間には、明治から大正にかけて大阪の商人が別荘や本邸を構えました。六甲山から海までの傾斜地に、南向きで、大阪にも神戸にも出やすい。この地形の条件が100年以上たっても価格に効いています。
一方、同じ摂津でも尼崎市は3,250万円、神戸市長田区は1,400万円です。摂津の内部でも4.5倍の差があります。
湾岸 ―― 日本で2番目にモノをつくる帯
結論:播磨臨海地域の製造品出荷額は7.5兆円で全国2位。この帯には世界シェア1位の製品が5つ立地しています。
神戸から西へ、海沿いを姫路まで走ると、風景が変わります。工場、煙突、コンビナート、そして港。ここが播磨臨海地域です。
兵庫県の計画書によると、この地域の対象は神戸市西区、明石市、稲美町、播磨町、加古川市、高砂市、姫路市、太子町。製造品出荷額7.5兆円は全国で2番目です。

世界シェア1位が、5つ並んでいる
この帯に立地する企業の製品には、世界で1位のシェアを持つものが5つあります。
- ダイセル――液晶ディスプレイの光学フィルム用酢酸セルロース
- 日本触媒――高吸水性樹脂(紙おむつに使われる素材)
- カネカ――プラスチック樹脂改質材
- 神戸製鋼所――アルミディスク材
- 三菱重工業――排煙脱硝装置、ガスタービン
スマートフォンの画面も、紙おむつも、発電所のタービンも、この帯でつくられた素材が世界中で使われています。
港の数字も具体的です。姫路港のLNG輸入量は16,935千トンで全国3位、LNG発電所の認可出力443.0万kWは瀬戸内海で1位。東播磨港の鉄鉱石輸入量は9,415千トンで全国3位です。
裏返せば、この地域の企業のCO2排出量は兵庫県全体の産業・業務部門排出量の約48%を占めます。県が「カーボンニュートラルポート形成計画」をこの地域につくった理由がここにあります。
工場があるということは、通勤する人がいるということ
不動産の話に引き戻します。工業地帯があるということは、そこに勤める人が住む場所を必要とするということです。
41市町のうち唯一人口が増えた明石市は、この帯の東端にあります。明石市の戸建て成約中央値は2,700万円。神戸市垂水区(2,800万円)とほぼ同じ水準で、神戸市北区(2,200万円)より高い。神戸の郊外区より、播磨の中核市のほうが高いのです。
明石は、新快速で三ノ宮まで約15分、大阪まで約40分。それでいて明石海峡と播磨臨海の職場が近い。神戸にも大阪にも播磨にも通えるという位置が、人口増という結果に出ています。
播磨 ―― 城のまわりに、3人に1人の外国人がいる
結論:姫路城の2025年度入城者数は1,567,674人。うち外国人が547,426人(34.9%)を占めました。
播磨は、明石から西播磨(相生・赤穂・たつの・上郡・佐用)までを含む広い地域です。中心は姫路市。戸建て成約中央値は1,800万円、土地㎡単価12.3万円と、摂津(25.2万円)のちょうど半分弱です。
姫路市の観光の中心はもちろん姫路城です。姫路市の公表数字によると、2025年度の総入城者は1,567,674人で前年度から35,563人増(約2.3%増)。うち外国人は547,426人と推計され、入城者の34.9%、およそ3人に1人が外国人という構成になっています。
ただし過去最多ではありません。最高は2018年度の1,589,765人で、2025年度はそれを約2.2万人下回ります。また入城料の改定後、2026年3月の入城者は前年同月比で16.8%減(28,263人減)となっており、価格が需要に効いていることも数字に出ています。

播磨のもうひとつの顔は、土地の広さです。播磨の戸建ての土地面積中央値は145㎡。摂津の115㎡より30㎡広い。車社会で、駐車場2台分が前提の家が普通に売られています。摂津では「駅から何分」が値段を決め、播磨では「土地が何坪あるか」が効いてくる。同じ戸建てでも、買い手の見る場所が違います。
但馬 ―― 人は減り、外国人は増えている
結論:豊岡市の外国人延べ宿泊者数は2024年上半期で39,100人泊、コロナ前の2019年同期を13.2%上回りました。一方、但馬の戸建て成約中央値は350万円で県内最低水準です。
但馬は兵庫県の北部、日本海側です。豊岡・養父・朝来・香美・新温泉。ここが県内でいちばん人口減少が進んでいる地域であり、同時に、いちばん外国人が増えている地域でもあります。
城崎温泉という装置
豊岡市の公表データによると、2024年4〜6月の外国人延べ宿泊者数は19,997人泊で前年同期比17.0%増、2019年同期比でも22.3%増。上半期(1〜6月)では39,100人泊、前年同期比38.8%増、2019年同期比13.2%増でした。
国籍別の上位は台湾(3,188人泊)、香港(1,550人泊)、そしてアメリカ。アメリカは前年比153.6%増と最も伸びています。アジア圏だけでなく欧米からも来ているという点が、この温泉地の特徴です。
城崎温泉には、7つの外湯があります。宿の部屋に大浴場を持たず、浴衣で下駄を鳴らして街を歩き、外湯をめぐる。「街全体がひとつの宿である」という考え方で、旅館は客室、外湯は大浴場、通りは廊下にあたる、と説明されます。

この構造が、結果的にインバウンドと相性がよかった。部屋数の少ない小さな旅館が街に分散しているので、団体ではなく個人旅行者を受け入れやすい。食事なしの素泊まりでも、街に出れば食べる場所と入る湯がある。
但馬にはほかにも、竹田城跡(朝来市)、生野銀山(朝来市)、湯村温泉(新温泉町)があります。豊岡市は柳行李(やなぎごうり)から続く鞄づくりの産地でもあり、豊岡鞄は2006年に地域団体商標を取得しています。
それでも、家は350万円で売れている
観光が好調でも、住宅の価格は別です。但馬の戸建て成約中央値は350万円。土地260㎡、延床145㎡、築1980年。摂津(3,200万円)の9分の1です。
土地の㎡単価は1.3万円。摂津の25.2万円に対して19分の1です。
そしてもうひとつ重要な事実があります。但馬では中古マンションの取引が全体の0.3%しかなく、農地が22.3%を占めています。マンション市場が事実上存在しない地域なのです。
丹波 ―― 取引の3件に1件が「農地」
結論:丹波の不動産取引の32.9%が農地で、中古マンションは直近1年で1件も成約していません。戸建て中央値は590万円ですが、延床153㎡は五国で最も広い数字です。
丹波は丹波市と丹波篠山市。京都府に接する内陸の盆地です。
ここの数字でいちばん驚くのは、地目の構成です。取引の32.9%が農地。3件に1件が田畑です。そして中古マンションはゼロ件。集合住宅を売買するという行為自体が、この地域には存在していません。

丹波の主産業は農業です。丹波黒大豆は栽培面積581ha、2,660戸の農家が携わり、2021年2月19日に日本農業遺産に認定されています。丹波栗、丹波松茸、山の芋。「丹波」という地名がそのままブランド名として全国で通用する、数少ない産地です。
丹波篠山市は江戸時代の城下町で、篠山城跡と武家屋敷、河原町妻入商家群が残ります。丹波篠山市の戸建て成約中央値は500万円、丹波市は600万円でした。
興味深いのは家の大きさです。丹波の戸建ての延床面積中央値は153㎡で、五国のなかで最も広い。土地は320㎡で、これも最大です。県内でいちばん広い家が、県内でほぼいちばん安く売られていることになります。
淡路 ―― 橋が経済圏をつくった島
結論:淡路の取引は建物のない土地(宅地・土地のみ)が39.1%と最も多く、戸建て中央値は1,300万円でした。
淡路島は洲本市・南あわじ市・淡路市の3市。1998年4月5日に明石海峡大橋(橋長3,911m)が開通し、本州と地続きの経済圏に入りました。

淡路の産業は、たまねぎと観光です。淡路のたまねぎ栽培は1888年に賀集村(現・南あわじ市)で試験栽培が始まったとされ、丹波黒大豆と同じ2021年2月19日に日本農業遺産の認定を受けています。
不動産としての淡路の特徴は、建物のない土地がよく動くことです。宅地(土地のみ)が39.1%、農地が18.4%。合わせて約6割が、建物のない土地の取引です。
これは、別荘・移住・事業用地としての需要が一定あることを示しています。神戸から車で1時間圏という距離が、住宅というより「もうひとつの拠点」としての土地需要を生んでいます。洲本市の戸建て成約中央値は450万円でした。
統計そのものが、地域格差を映している
ここでひとつ、業界の内側の話をします。
国土交通省の不動産情報ライブラリには2種類のデータがあります。ひとつは「成約価格情報」で、これは実際に成約した価格をレインズ由来で集めたもの。もうひとつは「不動産取引価格情報」で、こちらは取引当事者へのアンケート調査によるものです。
直近1年の成約価格情報の件数を五国別に数えると、こうなります。
- 摂津 7,670件
- 播磨 3,159件
- 淡路 10件
- 丹波 2件
- 但馬 1件
但馬は、1年間で1件です。
これは但馬で不動産が売れていないという意味ではありません(実際、戸建ての取引自体は129件あります)。比較できる「近くの成約事例」が、統計として手に入らないという意味です。
摂津で家を売るとき、同じマンションの別の部屋が半年前にいくらで売れたか、たいてい分かります。但馬や丹波では、それが分からない。だから査定の根拠は、事例ではなく土地そのものの評価と、買い手の顔を想像する力に寄っていきます。相場が見えない地域ほど、売り方で結果が変わるということです。
そのうえで、もう一度あの表を見る
ここまで見てきた「地域ごとの仕事」を頭に入れたうえで、価格表を並べ直します。

摂津3,200万円、播磨2,100万円、淡路1,300万円、丹波590万円、但馬350万円。上から下まで9.1倍です。
そして、下にいくほど家は広くなります。摂津の延床105㎡に対して、但馬は145㎡、丹波は153㎡。土地は摂津115㎡に対して丹波320㎡。

市区町別に並べると、経済地図がそのまま出てきます。上位は住宅と商業(芦屋・東灘・中央・灘・西宮)、中位は工業と交通(尼崎・垂水・明石・姫路)、下位は農業と観光(豊岡・丹波・洲本・朝来・養父)。

そして冒頭の芦屋と養父です。50.4倍。しかも安いほうの家が広い。
芦屋市は住むことが産業になっている街で、養父市は農業の街です。養父市は2014年に国家戦略特別区域に指定され、中山間地の農業改革の実証地になっています。どちらも自分の仕事をしている。ただ、その仕事が土地に付ける値段が50倍ちがう、というだけのことです。
売主が考えるべきは「自分の家がどの経済圏にあるか」
ここまでの話を、売る側の視点に翻訳します。
摂津で売るなら――買い手は「通勤」で買う
神戸市中央区・灘区・兵庫区は、県内で数少ない人口増加エリアです。買い手の多くは、三宮・大阪への通勤時間で物件を選びます。だから駅からの分数と、乗り換えの有無が価格に直結します。
そして摂津はマンションが取引の53.4%を占める市場です。同じ建物・近隣物件の成約事例が豊富にあるため、売出価格を相場から大きく外すとすぐに見抜かれます。相場の中で、いかに早く動くかが勝負になります。
播磨で売るなら――買い手は「職場と車」で買う
播磨臨海の工業地帯に勤める人が主な買い手層です。戸建てが取引の52.1%を占め、土地面積の中央値は145㎡。駐車スペース、庭、収納といった「面積で語れる価値」が効きます。
逆に、駅からの距離は摂津ほど致命的ではありません。車で15分の家が、駅徒歩15分の家に負けない市場です。
但馬・丹波・淡路で売るなら――買い手は「移住・二拠点・事業」で買う
この3地域では、近隣の成約事例がほとんど手に入りません(但馬の成約価格情報は年1件)。通常の「近隣事例から逆算する」査定が機能しにくい地域です。
買い手は地元の実需だけでなく、移住希望者、二拠点生活、宿泊事業や農業への参入者を含みます。つまり買い手が県外にいる可能性が高い。ならば、売り方も県外に届く形にする必要があります。
そして丹波・但馬では農地が取引の2〜3割を占めます。農地の売買には農地法の許可(3条・5条)が必要で、転用の可否によって価値が大きく変わります。ここは専門的な確認が要る領域です。
共通するのは「1世帯1.95人」への対応
最後に、全県共通の話をもうひとつ。
神戸市の1世帯あたり人員は1.95人になりました。世帯数は増えているので家の必要戸数は減っていませんが、4人家族を前提につくられた家は、買い手の想定より大きいことになります。
延床145㎡の但馬の家、153㎡の丹波の家。これらが安い理由の一部は、立地だけでなく「1.95人には大きすぎる」という需要側の変化にもあります。広さは、もう自動的にはプラスに働きません。
逆に言えば、広い家を売るときは「広さをどう使うか」を提案とセットで出す必要があるということです。在宅ワークの部屋、二世帯、民泊、アトリエ。使い道が見えたとき、はじめて広さが値段になります。
まとめ
- 兵庫県の人口は5,306,208人。2025年国勢調査速報では2.6%減で、41市町のうち増えたのは明石市だけ
- 神戸市は人口150万人を割り込んだ(1,497,630人、1.8%減)が、世帯数は4.3%増。1世帯1.95人ではじめて2人を割った
- 神戸市で人口が増えたのは中央区・兵庫区・灘区の3区のみ
- 播磨臨海地域の製造品出荷額は7.5兆円で全国2位。世界シェア1位の製品が5つ立地する
- 姫路城の2025年度入城者は1,567,674人、うち外国人34.9%
- 豊岡市の外国人延べ宿泊は2024年上半期39,100人泊で、2019年比13.2%増
- 取引されている不動産の中身が五国で違う。摂津はマンション53.4%、播磨は戸建て52.1%、丹波は農地32.9%でマンション0件
- 戸建て成約中央値は摂津3,200万円〜但馬350万円で9.1倍。市町別では芦屋6,300万円〜養父125万円で50.4倍
- ただし安い地域ほど家は広い。値段を決めているのは面積ではなく、その土地の仕事
兵庫県は、ひとつの県ではありません。5つの違う経済が、たまたま同じ県境の中にあるだけです。だから「兵庫県の相場」で自分の家を測ると、必ず外れます。
自分の家がどの経済圏にあり、その経済圏の買い手が何を見ているのか。売却の第一歩は、そこを間違えないことです。
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。兵庫県内の売却について、地域ごとの事情を踏まえたご相談を承っています。
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