兵庫県から人は出ていっていない【2026年最新】4年連続の転入超過なのに、なぜ人口は減るのか

「兵庫県は人口が減っている」。これは事実です。2025年の1年間で、28,780人減りました。朝来市の人口(26,919人)がまるごと消えたのと同じ規模です。
では、なぜ減ったのか。多くの人が「若い人が大阪や東京へ出ていくから」と答えます。
ところが、数字はそう言っていません。兵庫県の社会増減は、2022年から4年連続でプラスです。2025年は8,955人の転入超過でした。出ていく人より、入ってくる人のほうが多い。
それでも人口は減ります。理由は別のところにあります。
兵庫県が公表した「令和7年 人口の動き」から、1年間に県内で何が起きたのかを分解していきます。売却を考えている方にとって、これは「いつ売るか」を左右する話です。
この記事で使うのは、兵庫県が毎年公表している「人口の動き」と、月ごとの推計人口、そして総務省と厚生労働省の統計です。推測は入れず、公表値と、そこから計算できる数字だけで組み立てます。
まず、1年でどれだけの人が生まれ、亡くなったのか
結論:2025年の兵庫県の出生数は30,829人、死亡数は68,564人。亡くなった人は、生まれた人の2.22倍でした。

1日あたりに直すと、わかりやすくなります。兵庫県では毎日、およそ84人が生まれ、およそ188人が亡くなっています。差し引き103人。1日で103人ずつ、県から人が消えていく計算です。
前年と比べると、出生数は31,360人から30,829人へ531人減りました(▲1.7%)。死亡数は68,420人から68,564人へ144人増えています(+0.2%)。
注目すべきは、死亡数がほぼ横ばいだという点です。人口減少というと「加速している」印象がありますが、亡くなる人の数は前年比0.2%増にとどまっています。動いているのは出生のほうです。
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人口が減った理由は、転出ではなかった
結論:自然増減が▲37,735人、社会増減が+8,955人。減少の原因は100%、自然減にあります。

社会増減の内訳は、転入等223,340人に対して転出等214,385人。差し引き8,955人のプラスです。
つまり、兵庫県は「人が逃げていく県」ではありません。むしろ4年連続で人を集めています。それでも人口が減るのは、自然減37,735人が社会増8,955人の4.2倍あるからです。社会増が打ち消せているのは、自然減のうち23.7%にすぎません。
この構図は、住宅市場の読み方を変えます。「人が出ていくから家が余る」のであれば、空き家は郊外から順に増え、値段は一様に下がっていくはずです。しかし実際に起きているのは、入ってくる人はいる、しかしそれ以上に世帯の主が亡くなっているという現象です。
1年で44万人が動いている
もうひとつ、見落とされやすい数字があります。
転入223,340人と転出214,385人を足すと、437,725人。1年間にこれだけの人が県境をまたいで動いています。県人口5,306,208人に対して8.25%です。
1日あたりでは、612人が入ってきて、587人が出ていく。兵庫県の住民の12人に1人が、1年のうちに入れ替わっていることになります。
不動産の売買が成立するのは、この動きがあるからです。人口が減っていても、毎年22万人が県内に入ってきます。住む場所を探している人の絶対数は、けっして少なくありません。
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結論:兵庫県が毎月公表している推計人口を並べると、月間の減少幅は縮んできています。社会増が効きはじめているためです。

2025年7月中は1,215人の減少でした。9月中は1,038人、10月中は610人。3か月で減少幅がほぼ半分になっています。
内訳を見ると、自然減はむしろ拡大しています(▲2,318人→▲2,588人→▲2,904人)。減少幅が縮んだのは、社会増が+1,103人→+1,550人→+2,294人と倍増しているからです。
ただし、ここは慎重に読む必要があります。転入・転出には季節性があり、3〜4月は移動が集中し、秋は留学生や技能実習生の入国が増えます。3か月の数字だけで年間の傾向を判断することはできません。それでも、社会増が県全体の減少をどれだけ打ち消せるかが今後の焦点になることは、この推移から読み取れます。
同じ「転入超過」でも、統計が違えば答えが逆になる
結論:兵庫県の統計では+8,955人の転入超過。総務省の統計では▲2,102人の転出超過。どちらも正しく、数えている範囲が違います。
ここは、数字を扱ううえで大事なところなので、正確に書きます。

兵庫県の「人口の動き」でいう社会増減には、国外との移動や国籍異動等が含まれます。だから+8,955人になります。
一方、総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」は、国内の市区町村間の移動だけを数えます。この統計での兵庫県は、2025年に2,102人の転出超過。日本人移動者だけに絞ると3,617人の転出超過です。
整理すると、こうなります。国内だけで見れば、兵庫県からは人が出ていっている。しかし国外からの転入がそれを上回っているので、県全体では人が増えている。
ただし、転出超過は急速に縮んでいます。2024年の兵庫県は7,287人の転出超過でした。それが2025年には2,102人。1年で5,185人ぶん改善しています。日本人移動者で見ても、7,324人の転出超過から3,617人へ半減しました。
「兵庫県から人が流出している」という話は、10年前ならその通りでした。いまは、その勢いが目に見えて弱まっています。
兵庫県だけの現象ではない。ただし全国よりは緩やかである
結論:全国の2025年の出生数は671,236人で過去最少、合計特殊出生率は1.14で過去最低。兵庫県で起きていることは、全国で同時に起きています。

厚生労働省の人口動態統計によると、2025年の全国の出生数は671,236人。前年から14,937人(2.2%)減り、過去最少を更新しました。死亡数は1,589,489人で、こちらは前年から15,889人(1.0%)減少しています。死亡数の減少は5年ぶりです。
自然増減は918,253人のマイナスで、19年連続のマイナスとなりました。
兵庫県と比べると、出生の減り方は全国が2.2%減、兵庫県が1.7%減。死亡数を出生数で割った比率も、全国2.37倍に対して兵庫県は2.22倍です。兵庫県のほうが、わずかに緩やかです。
ただし正確を期すために書いておくと、全国の数字は戸籍にもとづく人口動態統計、兵庫県の数字は住民基本台帳にもとづく推計人口で、集計の基礎が違います。水準そのものを単純に比べることはできません。傾向の比較として読んでください。
もうひとつ、明るい材料もあります。全国の婚姻件数は489,119組で前年比0.8%増、2年連続の増加でした。婚姻は出生の先行指標なので、この動きが続けば出生数の減り方は将来的に鈍る可能性があります。ただし1年や2年で住宅需要が変わるものではありません。
41市町のうち、増えたのは6市区町だけ
結論:2025年に人口が増えたのは、神戸市中央区・神戸市兵庫区・伊丹市・尼崎市・明石市・播磨町の6つでした。

最も増えたのは神戸市中央区の+1,741人。三宮の再開発とタワーマンションの供給が続いており、県内で群を抜いています。次いで神戸市兵庫区+693人。
注目したいのは3位以下です。伊丹市+647人、尼崎市+500人。どちらも阪神地域で、大阪への通勤距離がきわめて短い市です。
6市区町を地図に置くと、性格がはっきりします。
- 神戸都心――中央区、兵庫区
- 大阪至近――尼崎市、伊丹市
- 神戸と播磨の結節点――明石市
- 工業地帯の町――播磨町
6つのうち5つが、神戸都心か大阪寄りです。人が減る県のなかで人が集まっているのは、職場に近い場所だという結論になります。
もうひとつ、増えた6市区町に共通するものがあります。6つとも、鉄道の便がよいということです。中央区は三ノ宮、兵庫区はJR兵庫・新開地、伊丹市はJR伊丹と阪急伊丹、尼崎市はJR尼崎と阪神・阪急、明石市はJR明石と山陽明石、播磨町はJR土山。すべて複数路線または新快速停車駅を抱えています。
人口が減る局面では、便利な場所とそうでない場所の差が開きます。増えている6市区町は、その「便利な側」に立っている地域です。
ただし規模は大きくありません。6市区町の増加分を合計しても3,927人。県全体の減少28,780人の7分の1にしかならず、都心の増加が県全体を支えるには程遠いのが実情です。
減り方が大きいのは、郊外の住宅地だった
結論:減少数の上位は姫路市▲2,959人、神戸市北区▲2,493人、神戸市西区▲2,416人、加古川市▲1,611人、神戸市須磨区▲1,599人。上位5つのうち3つが神戸市の郊外区です。

ここに、住宅市場にとって重要な事実が隠れています。
神戸市北区、西区、須磨区。この3区は、いずれもニュータウンを抱える区です。北区の鈴蘭台や北神地域、西区の西神ニュータウン、須磨区の名谷・北須磨。高度経済成長期からバブル期にかけて、神戸の人口を受け止めるために開発された住宅地です。
当時30代で家を買った人は、いま70代から80代です。同じ時期に同じ世代が入居した街は、同じ時期に世代交代を迎えます。3区が同時に減少上位に並んでいるのは、偶然ではありません。
姫路市▲2,959人と加古川市▲1,611人も、構図は似ています。播磨臨海の工業地帯で働く人の住宅地として広がった街が、いま同じ局面に入っています。
逆に言えば、これらの地域では今後、売却の判断を迫られる家が同時期にまとまって出てくるということでもあります。

この「同時期に同じ世代が入った」という性質は、住宅そのものにも表れます。同じ団地・同じ分譲地の家は、建った年も、間取りも、設備の古さもほぼ同じです。つまり売りに出たとき、買い手から見て差がつきにくい。
差がつかない商品が同時に複数出れば、比較されるのは価格だけになります。これが郊外住宅地の売却でいちばん警戒すべき状況です。
一方で、こうした地域には強みもあります。神戸市北区や西区、須磨区の名谷などは、区画が整っていて土地が広く、道路付けも良い。建て替えや二世帯化を前提にした買い手には、都心では手に入らない条件です。売り方次第で結果は変わります。
5年で見るか、1年で見るかで、景色が変わる
結論:2025年の国勢調査(速報)では、5年間で人口が増えたのは明石市だけでした。しかし2025年の1年間で見ると、増えたのは6市区町です。

この差は、単なる統計の綾ではありません。直近1年で、神戸都心と大阪寄りの市が増加に転じたということを示しています。
5年前――2020年は、コロナ禍の始まった年です。あの時期、都心の人口は伸び悩みました。在宅勤務が広がり、「郊外の広い家」への関心が高まったからです。
それが反転しています。通勤が戻り、都心のマンション供給が進み、人はふたたび駅の近くへ集まりはじめました。中央区+1,741人、兵庫区+693人、尼崎市+500人という数字は、その動きの結果です。
長期のトレンドと、直近の動き。この2つを混同すると、売り時の判断を誤ります。「兵庫県は人口が減っているから、早く売らないと」という説明は、5年スパンでは正しくても、いま都心で家を持っている人にはあてはまりません。
この数字が、売却にとって何を意味するか
ここまでの人口動態を、売る側の視点に翻訳します。
1.家の総需要は、人口ほどには減らない
人口は減っていますが、住まいを必要とする単位は「人」ではなく「世帯」です。神戸市の2025年国勢調査(速報)では、人口が1.8%減る一方で世帯数は4.3%増え、1世帯あたり人員は1.95人になりました。
単身世帯と夫婦のみ世帯が増えているため、必要な住戸数は人口ほど減りません。ただし必要とされる広さは縮んでいます。4人家族を前提に建てられた郊外の戸建ては、買い手の想定より大きいということです。
2.売り出しが集中する時期が来る
年間の死亡数68,564人という数字は、住宅市場から見ると「持ち主が代わる家の数」でもあります。全員が持ち家とは限りませんが、規模感は把握しておくべきです。
そして減少上位に並んだ北区・西区・須磨区・姫路市・加古川市は、同じ時期に開発された住宅地を抱えています。売り出しが同じ時期に、同じエリアで重なる可能性が高いということになります。
同じ団地から同時に5件出れば、価格競争になります。この地域で売却を考えているなら、周囲より先に動けるかどうかが結果を分けます。
3.買い手は「職場の近く」を選んでいる
増えた6市区町のうち5つが、神戸都心か大阪寄りでした。買い手の行動は明確です。通勤時間で住む場所を選んでいる。
したがって、郊外の物件を売るときに「静かで環境がいい」だけを訴えても、いまの買い手には刺さりません。駅までの実際の所要時間、バスの本数、車での通勤距離。数字で示せる利便性のほうが効きます。
4.外国人が買い手・借り手になる場面が増える
県の社会増減がプラスなのに、国内移動では転出超過。この差を埋めているのは国外からの転入です。
実務上、これは賃貸から先に表れます。播磨臨海の工業地帯、神戸市中央区、そしてインバウンドの伸びている但馬。これらの地域では、日本人だけを買い手・借り手として想定していると、需要を取りこぼす可能性があります。
5.売る時期は「周囲より先」が原則になる
人口動態から導かれる、いちばん実務的な結論がこれです。
減少数の大きい地域では、これから同じ団地・同じ分譲地から複数の売り物件が出てきます。ところが買い手の数は増えません。供給が増えて需要が横ばいなら、価格は下がります。
だから「いつか売る」と決めているなら、近所でまだ売り出しが少ないうちに動くほうが有利です。相場が下がってから慌てて売り出すと、すでに同じ地域に競合が並んでいます。
これは「急いで売るべき」という意味ではありません。売るつもりがない家を焦って手放す必要はまったくありません。「いずれ売る」と決まっている家について、その順番を後回しにする理由が人口動態には見当たらない、という話です。
やらないほうがよいこと
逆に、この記事の数字から導いてはいけない結論も書いておきます。
ひとつめ。「兵庫県は人口が減るから、いくらでもいいから早く売るべき」ではありません。社会増減は4年連続でプラスで、毎年22万人が県内に入ってきています。神戸都心と大阪寄りの市では人口が増えており、これらの地域では慌てる理由がありません。
ふたつめ。県全体の数字を、自分の家の相場と結びつけないことです。2025年の1年間で、中央区は1,741人増え、姫路市は2,959人減りました。同じ県内で真逆のことが起きています。判断に使うべきなのは、市区町単位、できれば町名単位の数字です。
みっつめ。人口動態は、価格を直接決めるものではありません。実際に値段を決めるのは、その地域で直近に成約した事例です。人口動態は「この先どちらへ向かうか」を知るための材料であって、査定額そのものではありません。
まとめ
- 兵庫県の2025年の人口は28,780人減。朝来市の人口(26,919人)より大きい規模
- ただし社会増減は+8,955人で、2022年から4年連続の転入超過
- 減少の原因は自然減。出生30,829人に対し死亡68,564人で、亡くなる人が生まれる人の2.22倍
- 1日あたり84人が生まれ、188人が亡くなる
- 総務省の統計(国内移動のみ)では▲2,102人の転出超過。ただし前年の▲7,287人から大幅に縮小
- 人口が増えたのは中央区・兵庫区・伊丹・尼崎・明石・播磨町の6市区町。うち5つが神戸都心か大阪寄り
- 減少上位は姫路市・神戸市北区・西区・加古川市・須磨区。ニュータウンを抱える地域が並ぶ
- 1年間で437,725人が県境をまたいで動いている(県人口の8.25%)
「人口が減っているから不動産は売れない」という言い方は、正確ではありません。減っているのは事実ですが、毎年22万人が県内に入ってきており、社会増減は4年連続でプラスです。
変わっているのは、どこに人が集まるかと、誰が売り手になるかです。売却の判断は、県全体の数字ではなく、自分の家がある市区町の数字で行うべきです。
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