兵庫区の旧耐震のマンションは、本当に売れないのですか?

「買いたいという方が現れたのに、銀行の審査で落ちました」
神戸市兵庫区の築古マンションで、実際に起きる話です。買主本人の年収にも勤務先にも問題がない。それでも通らない。理由は、買おうとしている部屋のほうにありました。1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物——いわゆる旧耐震です。
では、旧耐震のマンションは売れないのか。結論から言うと、売れます。ただし買える人の顔ぶれが変わる。そこを知らずに売り出すと、時間だけが過ぎていきます。
何が起きているのか——2つの制度
旧耐震マンションで買主がつまずくのは、たいてい次の2つです。どちらも「日付」で線が引かれています。
1つめ。住宅ローンそのもの。【フラット35】では、建築確認日が昭和56年(1981年)5月31日以前の住宅は、耐震評価基準等に適合していることを示す必要があります。共同住宅の場合、ラーメン構造と壁式構造の混用がないこと、平面形状が著しく不整形でないこと、セットバックが大きくないこと、ピロティ部分が偏在していないこと——この4項目が問われます(出典:住宅金融支援機構【フラット35】中古住宅の技術基準)。民間銀行も、旧耐震には融資期間を短くしたり、そもそも取り扱わなかったりします。
2つめ。住宅ローン控除。こちらは日付が半年ずれます。昭和57年(1982年)1月1日以後に建築された家屋であれば、耐震基準に適合するものとして扱われます。それ以前の建物は「要耐震改修住宅」となり、耐震改修を行ったうえで、居住の用に供する日(取得の日から6か月以内)までに耐震基準適合証明書等を取得しなければ、控除は使えません(出典:国税庁 タックスアンサーNo.1211-5)。
買主にとっては、この2つが同時にのしかかります。ローンが通りにくく、通っても年間十数万円の控除がない。同じ価格なら、新耐震の部屋を選ぶのが当然です。

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兵庫区で、旧耐震マンションはどれくらい取引されているのか
ここで、実際の成約データを見てください。直近1年、兵庫区の中古マンションの成約は398件。建築年の帯で分けると、こうなります。

- 1980年以前——21件、560万円、専有60㎡
- 1981〜2000年——124件、1,700万円、専有55㎡
- 2001〜2010年——67件、2,600万円、専有65㎡
- 2011年以降——183件、2,200万円、専有25㎡
まず伝えたいのは、旧耐震にあたる帯は21件しかないということです。398件のうち5.3%。兵庫区で売れているマンションの大半は、新耐震です。
そして、その21件の中央値は560万円。1981〜2000年の帯(1,700万円)の3分の1です。この差のすべてが耐震のせいではありません——専有面積も立地も違います。それでも、ローンが使いにくい物件が、現金で買える価格帯まで下がってから成約している、という構図は読み取れます。

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2011年以降の帯を見てください。183件と最多なのに、専有面積の中央値が25㎡しかありません。
これはワンルーム——投資用の物件です。兵庫区は新開地・大開・湊川といった駅が近く、単身向けの供給が続いています。この183件が、区全体のマンション中央値(2,000万円・専有45㎡)を強く引っ張っています。
つまり、ファミリータイプの部屋をお持ちの方が「兵庫区のマンションの相場は2,000万円らしい」という数字を基準にすると、ご自宅を過小評価することになります。面積帯をそろえた比較を出してもらってください。
旧耐震でも、買う人はいます
買える人の顔ぶれは、こう変わります。
- 現金で買う方——ローン要件が関係ありません。価格が下がっている分、利回りで見ると合う
- 投資家——住宅ローン控除を使いません。賃料と管理費のバランスだけを見ます
- 耐震評価基準に適合できる建物を探している方——旧耐震でも、上の4項目をクリアすればフラット35が使える可能性があります
- 近隣の区分所有者——同じマンションの別の部屋を持つ方が買い増すケースは、実際にあります
売り方が変わるということです。一般の実需向けに広く出すより、現金買いと投資家に届く出し方をしたほうが早い。ここを最初に決めておくと、無駄な値下げをしなくて済みます。
やってはいけないこと
ひとつめ。旧耐震であることを伏せて売り出す。建築確認日は登記や管理組合の資料で必ず判明します。伏せたところで買主の銀行が見つけ、そこで話が壊れます。最初から出したほうが、買える人だけが来ます。
ふたつめ。管理組合に確認せずに「耐震診断済みです」と言う。診断を受けているマンションと、そうでないマンションがあります。診断結果があるなら強力な材料ですが、思い込みで書くと契約不適合の問題になります。総会議事録を確認してください。
みっつめ。値下げだけで解決しようとする。560万円という中央値は結果であって、目標ではありません。まず「耐震評価基準に適合しうるか」を管理組合に確認する。適合するなら、フラット35が使える可能性が出て、買主の層が一気に広がります。値下げは、その確認をしてからです。
まずやること
- 建築確認日を確認する(1981年5月31日以前かどうか)
- 新築年月日も確認する(確認日が不明な場合は1983年3月31日が基準になります)
- 管理組合に、耐震診断の実施有無と、その結果を問い合わせる
- ファミリータイプなら、面積帯をそろえた査定を依頼する
※税制・融資基準は改正されます。また個別の適用可否は建物と買主の条件で変わります。実際の判断は金融機関、税理士、所轄税務署にご確認ください。
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ここまでの数字は、あくまで兵庫区全体の中央値です。同じ区のなかでも、築年・面積・耐震診断の有無・管理状態で価格は大きく変わります。
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。国土交通省の成約データと、各自治体の統計をもとに、お住まいの地域の実勢に沿った査定をご提供しています。
「いま売ったらいくらか」を知っておくだけでも、判断の材料になります。売却を決めていない段階でのご相談も承っています。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。土地の形状・間口は成約価格情報には記録がないため、これらを扱った集計は不動産取引価格情報に基づきます。
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