同じ市の中に645mの落差がある。川西という細長い街

川西市が公表している「川西市の概要」には、海抜という欄があります。最高660.1メートル、最低15.0メートル。同じ市の中に、645メートルの高低差がある、ということです。市域は南北に15.0キロメートル、東西はわずか6.5キロメートル。細長い短冊のような形をした市が、平地から山の頂上まで、そのまま立ち上がっています。
そしてもうひとつ、この街を考えるときに外せない一文があります。川西市自身が令和4年10月にまとめた『市人口推計報告書』の中に、こう書かれています。緑台・陽明地区などでは、65歳以上人口すら既に減少している、と。
高齢化が進んでいます、という話ではありません。高齢者が増えていく段階すら通り過ぎてしまった地区が、この街にはもう出ている。行政が自分でそう書いているのです。
その一方で、2025年7月から、市内の10のニュータウンで中古住宅を買った子育て世帯に60万円が出るようになりました。人が減っていく丘の上の家に、買う側への補助が付いた。この非対称が、いまの川西市を一番よく表しているように思います。
この記事では、川西市の「いまの姿」を、都合の良い部分だけを拾わずに書いてみます。長くなりますが、この街に長く住んでこられた方ほど、途中で「ああ、うちの地区のことだ」と思い当たる箇所があるはずです。
同じ市の中に、六百四十五メートルの落差がある
まず、地形の話から始めます。川西市を理解するうえで、これがいちばん基礎になるからです。
市が公表している数字を並べます。面積53.44平方キロメートル。東西6.5キロメートル、南北15.0キロメートル。南北が東西の2倍以上ある、極端に細長い市域です。地図で見ると、猪名川に沿って北へ長く伸びた形をしています。
そこに、海抜15.0メートルから660.1メートルという高さの幅が乗ります。645メートルというのは、東京タワーより高い差です。市の南端で川沿いに立っているときと、北端の山にいるときとでは、気温も、風も、冬の路面の状態も違います。同じ市内で雪が降っている日と降っていない日が同時に存在する、というのは、住んでいる方には説明するまでもない話でしょう。
隣接している自治体も特徴的です。市の資料によれば、西は宝塚市と猪名川町、南は伊丹市、東は池田市と箕面市、北は豊能町と能勢町。このうち池田市・箕面市・豊能町・能勢町は大阪府です。つまり川西市は、東と北という二つの方向で大阪府と接しています。
兵庫県の市でありながら、市域の東側と北側が府県境になっている。これは生活実感にも出ます。買い物や通院で池田や箕面に出る方は珍しくありませんし、北部では能勢町や豊能町のほうが物理的に近い場面もあります。行政の線と、暮らしの線が一致していない。
そしてもうひとつ、この街の骨格を決めているのが猪名川です。市域を南北に貫くこの川に沿って、平地が細く延びています。人が住める平らな土地は、川沿いの帯状の部分と、あとは丘を削って造成した場所しかありません。この地形の制約が、のちに出てくるニュータウン群の話に直結します。
細長くて起伏が大きい、ということは、住んでいる場所の密度がばらつく、ということでもあります。
川西市の統計要覧(令和4年度版)によれば、2020年のDID人口は89,585人でした。DIDというのは人口集中地区のことで、人口密度が一定以上でまとまっている区域を指します。当時の総人口が152,321人ですから、DIDに住んでいるのは全体の約59パーセント。逆に言えば、残る約4割の市民は、人口集中地区の外に暮らしていることになります。
4割というのは、かなり大きな比率です。同じ「川西市民」でも、駅から歩ける密度の中で暮らしている人と、丘の上や山あいの低密度の区域で暮らしている人が、ほぼ6対4で分かれている。
この差は、日々の暮らしにそのまま出ます。歩いて商店に行けるかどうか。バスが1時間に何本あるか。車を手放したときに生活が回るかどうか。病院まで何分かかるか。ゴミ出しの場所まで坂を上がるのか下がるのか。行政サービスは市内で均一に提供されますが、生活のコストは均一ではありません。
そして不動産という観点で言えば、この4割の側にある家は、買い手にとっての条件が6割の側とは違ってきます。同じ市内の同じ築年数の戸建てでも、置かれている状況が別物になる。この記事で何度も出てくる話ですが、川西市を一つの市として平均で語ると、実態を取り逃がします。
川西市のご自宅が、いま実際にいくらで売れるか。この記事の取引データと、間取り・築年・接道などの条件を突き合わせて、具体的な金額でお出しします。
査定は無料です。その後の売却をお約束いただく必要はありません。
株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
人は減っているのに、世帯は増えている
人口の話に入ります。ここを曖昧にしたまま先に進むと、あとの話がすべて甘くなります。
市が公表している最新の数字は、令和8年(2026年)3月末現在で151,821人、72,404世帯です。内訳は男性71,368人、女性80,453人。女性のほうが9,085人多い計算になります。
一方、2020年の国勢調査では152,321人、63,272世帯でした。高齢人口率は31.60パーセント、年少人口率は11.36パーセントです。市民のおよそ3人に1人が65歳以上で、15歳未満は9人に1人。
ここで一つ、正直に断っておきます。国勢調査と市の住民登録に基づく集計は、調査の性格が異なります。ですから152,321人と151,821人、63,272世帯と72,404世帯を、そのまま引き算するのは乱暴です。数字の性質が違うものを並べているという前提で読んでください。
そのうえで、方向としては、人口が横ばいから減少に向かい、世帯数は増えているという形が見えます。これは市の資料が明示している解釈ではなく、私たちが数字の並びから読み取ったものです。
人が減って世帯が増えるとき、そこで起きているのは1世帯あたりの人数の縮小です。3人で住んでいた家が2人になり、2人で住んでいた家が1人になる。子どもが独立し、配偶者を見送り、親の代の家に一人で残る。あるいは、同じ家に住んでいた親子が別々の住所に分かれる。世帯数だけが増えていくとき、その中身は多くの場合、単身世帯と高齢の二人世帯です。
この読み方が正しいとすれば、川西市の住宅ストックには、いま「人数に対して部屋が余っている家」が積み上がりつつある、ということになります。4人家族を想定して昭和40年代から50年代に建てられた戸建てに、いま1人か2人が住んでいる。そういう家が、丘の上に何千軒という単位で並んでいる。これがこの記事の背骨です。
読みながら、今の価格だけ先に知る。
10秒LINE査定 → 今いくら?がすぐわかる二〇〇七年から、この街では亡くなる人のほうが多い
市自身が、人口の先行きについてかなり踏み込んだ資料を出しています。令和4年10月の『市人口推計報告書』です。
この報告書によれば、川西市は2007年以降ずっと自然減が続いています。自然減とは、生まれる人より亡くなる人のほうが多い状態のことです。もう20年近く、この街では人が自然に増えていません。
加えて、2015年以降は年におよそ730人の社会減があるとされています。社会減は、転入より転出が多い状態です。つまり、生まれる数でも足りず、外から来る数でも足りない。二重に減っている、ということになります。
そのうえで示されている将来推計が、次の数字です。
| 年 | 推計人口 |
|---|---|
| 2031年 | 約14万3千人 |
| 2040年 | 約13万4千人 |
| 2050年 | 約12万5千人 |
| 2060年 | 約11万7千人 |
※川西市『市人口推計報告書』(令和4年10月)に示された推計値です。
現在の15万人台から、2060年に11万7千人。おおよそ3分の2の規模になるという見通しを、市が自分で公表しています。
この種の推計は、前提が変われば変わります。市も対策を打っていますし、実際にこの記事の後半で紹介するように、2025年からは新しい住宅補助が始まりました。推計どおりになると決まっているわけではありません。
ただ、行政が自ら「40年後に3分の2」という数字を出しているという事実は、重く受け止めてよいと思います。都合の良い見通しを出したほうが行政にとっては楽なはずですから。
六十五歳以上の人口すら、減りはじめた地区がある
同じ報告書の中に、この記事でいちばん重要だと考えている記述があります。
緑台・陽明地区などでは、65歳以上人口すら既に減少している。
この一文の意味を、少していねいに考えてみたいと思います。
一般に、「高齢化が進む」というのは、その地区の65歳以上の人数と比率が増えていく状態を指します。若い人が出ていき、残った人が年を重ね、高齢者の数が積み上がる。多くの地方都市やニュータウンが、いまこの段階にあります。
ところが、高齢者の数そのものが減りはじめる段階が、そのあとに来ます。それは、そこに住んでいた高齢者が亡くなるか、施設や子どもの家へ移るかしている、ということです。そして新しく入ってくる人が、その減少を埋めていない。
不動産の言葉に置き換えると、これは相続と住み替えによって家が空きはじめる時期に入ったということを意味します。高齢者が増えている段階では、家はまだ動きません。住んでいる方がいるからです。高齢者が減る段階になって初めて、家が市場に出てきます。
緑台と陽明。この二つの地区名を覚えておいてください。この記事の後半で、まったく別の文脈でもう一度出てきます。
そして、これは緑台・陽明だけの話ではありません。報告書の書き方は「緑台・陽明地区など」です。同じ時期に同じように開発された丘の上の住宅地は、時間差はあれ、同じ道筋をたどる可能性が高いと読むのが自然でしょう。昭和40年代に一斉に入居した街は、一斉に高齢化し、一斉に折り返します。
ここは脅す話ではありません。事実として、そういう段階が来ているというだけです。ただ、この段階に入ったということは、これから同じ地区で似た条件の家が同時期に複数出てくる可能性がある、ということでもあります。売り手の立場からすると、それは無視できない情報です。
昭和四十年代に一斉に開かれた丘が、一斉に折り返した
ここから、川西市の住宅地の話に入ります。この街の性格を決めているのは、なんといってもニュータウン群です。
川西市は「ふるさと団地再生」という取り組みを進めてきました。対象になっているのは、大和団地、多田グリーンハイツ、清和台の三つです。
市の説明によれば、これらはいずれも昭和40年代初頭からの大規模開発で造られた住宅団地です。そして市は、こう明記しています。急速な高齢化や施設の老朽化など、住宅団地の高齢化問題が顕在化している、と。
行政の文章としては、かなりはっきりした書き方です。「顕在化している」というのは、もう隠れていない、目に見えているということです。
取り組みの経緯も公表されています。平成23年度から28年度にかけて再生協議会が置かれ、平成27年度には『ふるさと団地再生の手引き』がまとめられました。10年以上前から、市はこの問題に手を付けてきたことになります。
ここで注意したいのは、「団地」という言葉の使われ方です。この文脈での団地は、集合住宅の棟が並ぶあの団地だけを指しているのではありません。丘を造成して区画割りし、戸建てを並べた大規模住宅地も含まれます。大和団地も清和台も多田グリーンハイツも、戸建てが主体です。
そして「昭和40年代初頭から」という時期が効いてきます。1966年前後に入居が始まった街は、いま開発から60年近くが経っています。入居時に30代だった方は、いま90代です。二代目、つまりその子どもの世代も、すでに60代に差しかかっています。
建物の側も、同じだけの時間が経っています。擁壁、上下水道、道路、公園、集会所。造成されたインフラは、住民の年齢と同じペースで古くなります。市が「施設の老朽化」と書いているのは、家のことだけではありません。
四千八百世帯の街で、四割が六十五歳以上
三つの団地のうち、いちばん数字がはっきり公表されているのが大和団地です。
大和ハウス工業が公表した資料によれば、大和団地(同社の呼称では阪急北ネオポリス)は1966年に開発が始まり、面積は約173万平方メートル、約4,600区画という規模です。173万平方メートルは173ヘクタール。数字だけではつかみにくいので言い換えると、これは一つの街です。区画が4,600ということは、住宅地としては相当大きい部類に入ります。
そして現在の状況が、2024年3月時点で4,794世帯・10,626人、高齢化率39.3パーセントと示されています。
この数字を読んでみます。10,626人を4,794世帯で割ると、1世帯あたり約2.2人。市全体の平均より小さい数字です。4,600区画を想定して造られた街に4,794世帯が住んでいますから、住戸自体はおおむね埋まっている。しかし、その中身は2人前後の世帯が中心になっています。
そして高齢化率39.3パーセント。およそ4,000人が65歳以上という計算になります。市全体の高齢人口率(2020年国勢調査で31.60パーセント)より、8ポイント近く高い。
大和ハウス工業の資料には、現状の説明としてこうあります。まちびらきから50年以上が経過し、空き地・空き家の増加、コミュニティの希薄化が課題になっている、と。
そのうえで、2024年7月19日、大和ハウス工業と川西市が連携協定を結びました。内容は5項目で、コミュニティの形成、住み続けられる仕組みづくり、地域内の移動環境づくりなどが含まれています。
「地域内の移動環境づくり」という項目が入っていることに注目したいと思います。丘の上の住宅地で、住民の4割が65歳以上になったとき、最初に立ちゆかなくなるのは移動です。坂を上って買い物に行く。バス停まで歩く。車の運転をいつまで続けるか。この協定に移動の項目が入っているということは、それが現実の課題として認識されているということです。
開発した民間企業が、まちびらきから58年後に、その街の維持のために自治体と協定を結ぶ。売って終わりではなかった、という点は評価されるべきだと思いますが、同時に、企業が関わらなければ維持が難しい段階に来ているという事実も、そこには含まれています。
日生中央から梅田まで、乗り換えなしで四十分
では、なぜこれだけ大きな住宅地が、丘の上に成立したのでしょうか。答えは鉄道です。
能勢電鉄が公表している通勤情報によれば、日生中央から大阪梅田まで、直通特急「日生エクスプレス」で最短40分・乗り換えなしで行くことができます。
これは、山を背にした住宅地の条件としては相当に強い数字です。梅田まで乗り換えなしで40分台。しかも始発駅ですから、朝の座席の確保という点でも有利です。北部のニュータウンが成立したのは、この鉄道があったからにほかなりません。
市内の鉄道は、大きく三系統あります。阪急宝塚本線が市の南部を通り、能勢電鉄妙見線が川西能勢口を起点に北へ延び、そこから日生線が分岐して日生中央に至ります。加えて、南部にはJR福知山線(JR宝塚線)の川西池田駅があります。
能勢電鉄の公式案内によれば、川西能勢口駅からJR川西池田駅までは徒歩約6分です。徒歩6分というのは、乗り換えとしては十分に実用的な距離です。阪急とJRという二つの系統を、歩いて行き来できる。これは市南部の大きな利点です。
もっとも、この鉄道の強さは、市域の全域に等しく及んでいるわけではありません。駅から歩ける範囲にある家と、バスかマイカーで駅まで出る家とでは、同じ「川西市内」でも通勤の実態がまるで違います。先ほどのDIDの話、市民の約4割が人口集中地区の外に住んでいるという数字は、ここにも効いてきます。
そして、丘の上の住宅地にとって、駅までの足がどうなるかは今後の大きな論点です。大和団地の連携協定に「地域内の移動環境づくり」が入っていたのは、まさにこの点についてです。鉄道が通っていることと、その鉄道に自力でたどり着けることは、別の問題だからです。
三階建ての駅に、市の北半分が集まってくる
市の南端にある川西能勢口駅は、この街の心臓部です。
この駅は阪急宝塚本線と能勢電鉄妙見線・日生線が接続する結節点で、能勢電鉄にとっては起点駅にあたります。構造は高架で3面5線。ホームが3階、改札とコンコースが2階という立体構成になっています。
実際に使っている方はご存じのとおり、この駅は上下の移動が多い駅です。地上から2階へ上がって改札を通り、3階のホームへ。乗り換えのたびに階を移動します。高低差の大きい市の玄関口が、駅そのものも立体になっている、というのは象徴的な話です。
乗降人員の数字も公表されています。2023年の1日あたりで、阪急が39,291人、能勢電鉄が45,340人。
この二つの数字の扱いには、少し注意が必要です。二社は別々に集計していますから、同じ人が両社をまたいで乗り換えれば、双方に計上されることになります。ですから単純に足して「1日8万4千人」と言い切るのは、正確ではありません。集計の方法が同じである保証もありませんから、両者を直接比べることにも慎重であるべきです。
そのうえで言えるのは、能勢電鉄の側で4万5千人規模の乗降が計上されているという事実です。能勢電鉄は市内の北半分を走る路線で、沿線人口は限られています。その路線の起点駅で、これだけの人数が動いている。市の北半分の人の流れが、この一点にほぼ全量集まっていると読んで、大きく外れないと思います。
逆に言えば、この駅がこの街の交通の単一の要である、ということでもあります。北部のニュータウンから梅田へ向かう人は、日生エクスプレスに乗るか、この駅で阪急に乗り換えるか、そのどちらかを通ります。市の南端にある一つの駅が、南北15キロの市域全体を支えている構図です。
百貨店が、百貨店をやめるかたちで残った
川西能勢口の駅前で、2025年に大きな動きがありました。
エイチ・ツー・オー リテイリングの発表によれば、2025年5月16日、「川西阪急スクエア」がグランドオープンしています。所在地は川西市栄町26-1。店舗面積15,521平方メートル、全館の約70パーセントを改装し、約50ブランドを新規導入したとされています。
注目したいのは、この改装の位置づけです。発表資料では、百貨店と専門店を融合した「新しい郊外型百貨店モデル」への転換と説明されています。
これは、正直に読めば、従来型の百貨店のままでは郊外では成り立たなくなった、ということです。全国の郊外百貨店がここ十数年で次々と閉店してきたことを考えれば、川西では閉店ではなく業態転換という道が選ばれた、と見ることができます。
名称に「スクエア」が付いたことにも意味があります。百貨店という単一の業態ではなく、専門店が集まる場所として位置づけ直された。館の7割を改装するというのは、部分的な手直しではありません。
隣接するアステ川西との連携も打ち出されており、アステ川西の「ぴぃぷぅ広場」と合わせた回遊が意識されています。川西能勢口の駅前は、複数の施設がデッキや通路でつながる構造になっていますから、この連携は理にかなっています。
駅前に百貨店規模の商業施設があり、それが2025年に大きく手を入れられた。これは、市の人口が減っていくという推計と、一見すると矛盾するように見えます。しかし矛盾ではありません。川西能勢口が集めているのは、川西市民だけではないからです。能勢電鉄沿線、猪名川町、そして府県境の向こう側からも人が来ます。市の人口推計と、駅前商業の商圏は、そのまま重なるわけではないのです。
そしてもう一点。川西能勢口の駅前は、全国的にはあまり知られていませんが、駅前再開発の分野ではよく参照されてきた事例です。
その一つの証拠が、全国市町村再開発連絡協議会です。市の資料によれば、この協議会は2001年に川西市が設立を主導したもので、54市町村が参加していました。再開発に取り組む自治体どうしが情報を交換する場です。
そしてこの協議会は、2026年6月をもって24年の活動を終了しました。
設立を主導した市が、24年後にその会の幕引きを見届けた。この事実をどう読むかは、いくつかの解釈がありえます。役割を終えた、という前向きな読み方もできますし、駅前再開発という手法そのものが一巡した、という読み方もできます。
いずれにせよ、川西市が駅前再開発において先行してきた自治体であることは間違いありません。高架3面5線の駅、駅前のデッキ、複数の商業施設。あの駅前の姿は、自然にできたものではなく、長い時間をかけて設計されたものです。そして、その設計思想を全国に広める立場に、この市はいたのです。
病院が、山のほうから街へ下りてきた
川西能勢口の南西、市の中心部に「キセラ川西」と呼ばれる区域があります。中央北地区の土地区画整理事業によって整備されたエリアで、キセラ川西という名称は市の登録商標です。
ここに整備されたのが、川西市立総合医療センター、キセラ川西プラザ、せせらぎ公園です。区画整理によってまとまった土地を生み出し、そこに公共施設を集約する。市街地の中にこれだけの面積を確保できたことが、この事業の要点です。
中でも大きいのが病院です。神戸新聞の報道によれば、川西市立総合医療センターは2022年9月1日に開院しました。地上9階建て、延床面積約36,620平方メートル、405床、28診療科。特徴的なのは全室個室であることで、405床のうち289床は室料が無料とされています。
全室個室の病院というのは、いまでもそう多くありません。しかも4分の3近くが室料無料。入院を経験された方なら、この条件がどれだけ違うかはご想像がつくと思います。
ただ、この病院にはもう一つの側面があります。これは、北部にあった市立川西病院の機能を、市街地へ移転したものだという点です。
つまり、病院が新しくできたのではありません。北から南へ動いたのです。
南部にお住まいの方にとって、これは明確な改善です。市街地に、全室個室・28診療科の総合病院ができた。徒歩や自転車で行ける方も多いでしょう。
一方、北部にお住まいの方にとっては、話が違います。それまで近くにあった市立病院が、南へ移った。市域は南北15キロあり、しかも高低差645メートルです。北部から市街地の病院まで移動する所要は、南部の住民のそれとは比較になりません。
これは市を批判する話ではありません。人口の重心が南にある以上、医療資源を集約するという判断には合理性があります。ただしその合理性の負担は、市内で均等には配分されていない。そのことは事実として置いておきたいと思います。
住まいを考えるとき、通院のしやすさは年齢とともに重みを増します。いま元気に車を運転されている方でも、10年後、20年後に同じ移動ができるとは限りません。北部の家について考えるとき、病院が南へ動いたという事実は、一つの材料になります。
山の上のケーブルカーは、六十三年で終わった
北部については、もう一つ大きな変化がありました。
神戸新聞の報道と能勢電鉄の案内によれば、能勢電鉄「妙見の森ケーブル」は2023年12月に、63年の歴史に幕を下ろしました。上部のリフトを含む妙見の森事業も、あわせて終了しています。
ケーブルカーとリフトで山上へ上がる。行楽地として長く親しまれてきた場所です。川西で育った方なら、遠足やハイキングで一度は行かれたのではないでしょうか。
それがなくなった、ということの意味は、単に観光施設が一つ減ったということにとどまりません。北部の山側へ人を運ぶ手段が、一つ失われたということです。
鉄道会社が沿線の行楽地を運営し、それが沿線人口を支える。関西の私鉄が長く続けてきたこのモデルが、ここでは維持されなかった。妙見の森が閉じたという事実は、北部の集客構造が変わったことを示していると読めます。
この記事は不安を煽るためのものではありませんから、はっきり書いておきます。ケーブルカーがなくなったからといって、北部の住宅地の価値が急に失われるわけではありません。ただ、「街に人を呼ぶ装置」が一つ減ったということは、長い目で見れば効いてきます。病院が南へ動き、山上への足が止まった。北部について考えるとき、この二つは同じ方向を向いた変化です。
市が天然記念物に指定した、炭焼きの森
とはいえ、北部に何もなくなったわけではありません。むしろ、この街の北部には、他の市が持っていないものがあります。
黒川の「台場クヌギの森」です。2021年4月22日、川西市教育委員会がこれを天然記念物に指定しました。国指定でも県指定でもなく、市の指定です。
台場クヌギというのは、幹を一定の高さで繰り返し伐って炭にし、そこから新しい枝が伸びるのを待つ、という管理を何百年も続けてきたクヌギのことです。伐られた場所がこぶのように太くなり、独特の形になります。
市の説明によれば、この地域の炭焼きは室町期からの記録があります。そして、ここで焼かれる菊炭は、茶道文化と結びついてきました。茶席で使われる炭の産地が、この市の北部にある、ということです。
指定の理由には、モザイク状の景観も挙げられています。伐る年をずらしながら区画ごとに管理してきた結果、成長段階の違う林が斑(まだら)に並ぶ。あの景観は、自然にできたものではなく、人が何百年も手を入れ続けた結果です。保全には北摂里山文化保存会が関わっています。
市が自前で天然記念物に指定したという点に、私たちは意味を感じます。国や県の指定を待つのではなく、市の教育委員会が「これは守る」と決めた。市域の北端にある森を、市が自分の財産として位置づけたということです。
もう一つ、この街の文化的な背景に触れておきます。川西市は清和源氏発祥の地とされ、多田神社と源満仲を軸にしたPR動画を市が制作しています。歴史の詳細は姉妹編の記事で扱っていますので、ここでは深追いしません。ただ、市の北に室町以来の炭焼きの森があり、中ほどに清和源氏ゆかりの地があり、南端に3面5線の高架駅と百貨店がある。この落差が、川西市という街の実像です。
統合はいったん決まり、そして取り消された
ここで、学校の話をします。この街の現在を語るうえで、いちばん生々しい素材だと思います。
市の公表資料によれば、川西市教育委員会は2015年8月、二組の小学校統合を決定しました。緑台小学校と陽明小学校、そして清和台小学校と清和台南小学校です。いずれもニュータウン地区の学校です。
児童数が減り、学校の規模が維持できなくなる。だから統合する。ここまでは、全国どこでも起きている話です。
ところが、その約10か月後にこうなりました。2016年6月、市教委は児童数の減少に「一定の歯止めがかかる可能性」を認め、統合計画を再検討することにしたのです。そして保護者や地域に謝罪しています。
統合は、実行されていません。
いったん決まった学校統合が、決定から1年足らずで白紙に近い状態に戻る。これは、行政の判断としては相当に異例です。統合を前提に説明会を重ね、地域の合意を取り付けてきたはずのプロセスが、途中で止まった。市教委が謝罪したのは、そういう経緯があったからでしょう。
私たちがこの出来事を重視するのは、批判のためではありません。この地区の将来を、行政ですら見通せなかったという事実が、そこに残っているからです。
そして、ここで先ほどの話がつながります。統合の対象になった学校のうち二校は、緑台小学校と陽明小学校でした。そして市の『市人口推計報告書』が「65歳以上人口すら既に減少している」と名指ししたのが、緑台・陽明地区です。
2016年に「児童数の減少に一定の歯止めがかかる可能性がある」と判断された地区が、その後の推計では、高齢者すら減りはじめた地区として記載されている。2016年に見えていた「歯止め」が、どこまで続いたのかは、この二つの資料からは読み取れません。ただ、統合計画が宙づりのまま10年が経ったこと、そして同じ地区名が別の文脈で出てきていることは、事実として並べておく価値があると思います。
学校の存廃は、住宅地の価値に直結します。子育て世帯が家を探すとき、学区は必ず見る条件だからです。統合するとも、しないとも決まっていない状態が続いているということは、その地区の家を買おうとする人にとって、判断材料が一つ欠けているということでもあります。
山の手が安全とは限りません
防災の話をします。ここは、住んでいる方でも気づきにくい部分です。
まず、新しい情報から。令和8年(2026年)3月27日、淀川水系一庫大路次川(一庫ダム下流)に係る浸水想定区域が、新規に指定されました。
ここで注意していただきたいのは、次の一点です。この指定は、紙の防災マップには反映されていません。市が配布している防災マップは令和5年度発行のもので、その後に指定された区域は載っていないのです。反映されているのはWeb版のみとされています。
ご自宅の冷蔵庫の横や、玄関の棚に、市の防災マップを貼ってある方は多いと思います。その紙は、いまの指定を映していない可能性があります。これは知らなければ気づきようのない話です。
もう一つ、より重要な点があります。土砂災害警戒区域が、山手の住宅地に及んでいるということです。
市の防災マップに関する案内によれば、紙面版から変更のあった地区として、加茂2丁目、久代2丁目、鼓が滝3丁目、緑台4丁目から7丁目、水明台1丁目・3丁目、平野3丁目が挙げられています。
この一覧に、緑台と水明台という、丘の上の住宅地の名前が入っていることに注目してください。しかも緑台は4丁目から7丁目までの4つです。
「低いところは水害が心配だが、山の手なら安心だ」という直感は、多くの方が持っておられると思います。しかし、丘を削って造成した住宅地は、造成の際にできた斜面や擁壁を抱えています。土砂災害警戒区域は、まさにそういう場所に指定されます。高いところに住んでいることは、土砂災害に対する安全を意味しません。
誤解のないように書きますが、これは「その地区が危険だ」という話ではありません。警戒区域の指定は、危険性を周知して備えを促すための制度です。指定されたから家の価値がなくなる、という単純な話でもありません。
ただ、次の二つは、いま確かめておく価値があると思います。ご自宅の住所が、最新の指定でどう扱われているか。そして、手元にある紙の防災マップが、いつ発行されたものか。市のWeb版防災マップを一度開いてみるだけで済む話です。
そしてもう一つ。家を売るとき、土砂災害警戒区域に該当するかどうかは、買主に伝えるべき重要な事項にあたります。売却を考えはじめた段階で確認しておけば、話が進んでから慌てることはありません。
その家を買う人に、六十万円が出るようになった
ここまで、減っていく数字の話を続けてきました。ここからは、逆方向の話をします。
2025年7月、川西市は「子育て住宅総合支援事業補助金」を始めました。
背景には、兵庫県の制度があります。県の「子育て住宅促進区域」という指定で、2025年3月にその第2弾として川西市と猪名川町が指定されました。それを受けて、市が独自の補助制度を組んだ、という順序です。
対象になるのは、市内の10のニュータウンです。名前を挙げます。
- 日生ニュータウン
- 大和団地
- 清和台
- けやき坂
- 多田グリーンハイツ
- 鶯台
- 萩原台
- 湯山台
- 鶯が丘
- 南野坂
そして補助の内容が、次のとおりです。
| 区分 | 補助額 |
|---|---|
| 新築住宅の購入 | 100万円 |
| 中古住宅の購入 | 60万円 |
| 県外からの民間賃貸への転入 | 25万円 |
| 住宅への転用改修 | 最大60万円 |
※川西市および神戸新聞の報道による、2025年7月開始時点の内容です。制度は年度によって変わりうるため、実際の適用にあたっては市の最新の案内をご確認ください。
ここで、この記事の中心にある非対称に触れたいと思います。
市は、自らの推計報告書で「65歳以上人口すら既に減少している」と書いています。ニュータウンの高齢化を「顕在化している」と書いています。学校統合の計画は宙づりのままです。
その同じ市が、そのニュータウンの中古住宅を買う人に60万円を出すと決めた。
これは矛盾ではありません。むしろ、市が問題の所在を正確に把握しているからこそ出てきた施策だと読めます。丘の上の住宅ストックを、次の世代に引き継がせる。そのために、買う側の負担を直接下げる。中古60万円、新築100万円という金額は、決して小さくありません。
この事実を、丘の上に家をお持ちの方にお伝えしたいと思います。「うちの団地はもう売れないだろう」と思い込んでおられる方は、少なくないはずです。坂の上で、駅から遠く、築年数も相当に経っている。周りにも空き家が目につく。そう感じるのは自然なことです。
しかし現在、その地区の中古住宅を買う子育て世帯には、市から60万円が出ます。買う側から見た価格は、その分だけ実質的に下がっているということです。売れないと思っている家に、買主側の追い風が付いた。これは、状況が変わったということです。
ただし、過度な期待も禁物です。補助金があれば売れる、という単純な話ではありません。補助は買主の要件(子育て世帯であること等)を満たす必要がありますし、制度は年度で変わりえます。実際にどういう条件でどこまで使えるのかは、市の最新の案内で確認するのが確実です。私たちが申し上げたいのは、「もう無理だ」と決めつける前に、いま何が動いているかを見ておいてほしい、ということです。
管理組合の担い手不足から、空き家が生まれる
もう一つ、市の住宅施策で押さえておきたいものがあります。
『川西市空き家対策・マンション管理適正化推進計画』です。これは、令和5年12月の改正空家法の施行に対応して、平成30年に作られた計画を改定したものとされています。
この計画の名前に注目してください。「空き家対策」と「マンション管理適正化」が、一つの計画に束ねられています。行政の計画として、この組み合わせは意味があります。
市が警戒しているのは、次のような連鎖です。区分所有者の高齢化 → 管理組合の担い手不足 → 管理不全 → 空き家化。
この流れを、少し具体的に想像してみます。分譲マンションの所有者が一斉に年を取ります。理事のなり手がいなくなる。総会の出席率が下がる。修繕積立金の値上げが決まらない。大規模修繕が先送りされる。建物が傷む。売りに出しても買い手が付きにくくなる。相続した子どもは住まないので、部屋が空いたままになる。空き室が増えると、管理費と積立金の徴収がさらに苦しくなる。
一度この螺旋に入ると、抜け出すのは容易ではありません。戸建ての空き家は一軒ごとの問題ですが、マンションの管理不全は建物全体を巻き込みます。自分の部屋をきちんと維持していても、建物全体が管理不全に陥れば、その影響は避けられません。
市がこの連鎖を計画に明記しているということは、市内にその予兆があるということです。昭和40年代から50年代に建てられた分譲マンションは、市内にも一定数あります。それらは、いま管理組合の世代交代という局面を迎えています。
分譲マンションをお持ちの方に、一つ申し上げたいことがあります。売却を考える段階になったとき、買い手が見るのは部屋の状態だけではありません。管理組合が機能しているか、修繕積立金が足りているか、長期修繕計画が更新されているか。これらは、いまや価格に直結する情報です。逆に言えば、管理がしっかりしているマンションは、それ自体が強みになります。
同じ川西市でも、家の条件はここまで違う
ここまでの話を、地区ごとに整理しておきます。「川西市の家」とひとくくりに語ることが、どれだけ雑なことかが分かるはずです。
| おおまかな区分 | いまの条件 |
|---|---|
| 川西能勢口周辺(市南端) | 阪急・能勢電の結節点。JR川西池田まで徒歩約6分。川西阪急スクエア、アステ川西。徒歩で生活が完結する密度がある |
| キセラ川西(中央北地区) | 区画整理で生み出された新しい市街地。総合医療センター、キセラ川西プラザ、せせらぎ公園 |
| 丘の上のニュータウン群 | 昭和40年代初頭からの開発。高齢化率が市平均を上回る地区がある。2025年7月から中古購入60万円等の補助対象。土砂災害警戒区域が及ぶ丁目もある |
| 日生線・日生中央方面 | 日生エクスプレスで大阪梅田まで最短40分・乗り換えなし。始発の利点がある |
| 北部・山間部(黒川など) | 市指定天然記念物の台場クヌギの森。2023年12月に妙見の森ケーブルが終了。市立病院機能は市街地へ移転済み |
※各項目は本文中で挙げた市および事業者の公表資料に基づく整理です。
この表を眺めると、川西市にはまったく性格の違う住宅市場が、同じ市の中に並存していることが分かります。
川西能勢口の徒歩圏にある住戸と、丘の上のニュータウンの戸建てと、北部の山あいの家。この三つを「川西市の不動産」と一括りにして相場を語ることには、あまり意味がありません。買い手の層が違い、比較される対象が違い、そして市の施策の当たり方も違うからです。
とりわけ、10ニュータウンの補助対象になっているかどうかは、いま大きな分かれ目です。日生ニュータウン、大和団地、清和台、けやき坂、多田グリーンハイツ、鶯台、萩原台、湯山台、鶯が丘、南野坂。この10の名前に自分の地区が入っているかどうかで、買い手から見た条件が変わります。
持ち続けるか、手放すか。この街で材料になるもの
ここまで、川西市の現在をひととおり見てきました。最後に、この街の姿が「家を持ち続けるか、手放すか」という判断にどう関わるのかを整理します。答えは出しません。材料を並べるだけです。
ひとつめ。市は、自分の街が縮むことを前提に計画を立てています。『市人口推計報告書』は、2007年以降の自然減、2015年以降の年約730人の社会減を記し、2060年に約11万7千人という推計を示しています。現在の3分の2の規模です。行政が自らこの数字を出しているという事実は、押さえておいたほうがよいと思います。
ふたつめ。丘の上の地区は、家が動きはじめる段階に入っています。「65歳以上人口すら既に減少している」という記述は、そこに住んでいた方が家を離れはじめたことを意味します。同じ時期に一斉に入居した街は、一斉に折り返します。これから、同じ地区で似た条件の家が、同じ時期に複数出てくる可能性があります。それは売り手にとって、競合が増えるということでもあります。
みっつめ。一方で、買い手側には追い風が付きました。2025年7月から、10ニュータウンでの中古購入に60万円、新築購入に100万円の補助があります。売り出す家がその区域内にあるかどうかは、確認しておく価値のある情報です。ただし制度は年度で変わりえますので、市の最新案内をご確認ください。
よっつめ。ハザードの前提が更新されています。2026年3月27日に一庫大路次川の浸水想定区域が新規指定され、それは令和5年度発行の紙の防災マップには載っていません。土砂災害警戒区域は緑台4〜7丁目や水明台1丁目・3丁目など、山手の住宅地にも及んでいます。「うちは高台だから」という前提を、一度Web版の防災マップで確認しておくことをお勧めします。これは売却時の説明にも関わる情報です。
いつつめ。学校の先行きは、決まっていません。2015年に決まった小学校の統合は、2016年に再検討となり、実行されていません。統合するとも、しないとも確定していない状態が続いています。子育て世帯にとって学区は重要な条件ですから、この不確定さは買い手側の判断に影響します。
むっつめ。市の中で、施設は南へ集まっています。市立川西病院の機能は市街地の総合医療センターへ移り、妙見の森ケーブルは終了しました。一方で、川西阪急スクエアの大規模改装、キセラ川西の整備と、南部への投資は続いています。北と南で、変化の向きが違います。
これらを踏まえて、私たちが申し上げたいことは三つです。
まず、ご自宅が10ニュータウンの区域に入るかどうかを確認してください。入っているなら、買い手側に補助が付きます。これは「売れないだろう」という思い込みを、事実で確かめ直す機会になります。入っていないなら、別の強みで勝負することになります。どちらにしても、知らないまま判断するのはもったいない。
次に、ハザードの情報を最新のもので確認してください。紙の防災マップは令和5年度のものです。浸水想定区域は今年3月に更新されています。土砂災害警戒区域については、丁目単位で確認できます。これは家の値打ちを下げるために調べるのではありません。売る段になって初めて知る、という事態を避けるためです。先に把握していれば、対策も説明も準備できます。
最後に、名義と権利関係を、判断より先に整えてください。丘の上のニュータウンの家は、いま多くが相続の局面を迎えつつあります。相続人が複数いて、全員が市外にいて、誰も住む予定がない。そういう状態のまま何年か経つと、話がまとまらなくなります。売る売らないを決める前に、権利関係を確認しておくほうが、選択肢は広く残ります。
川西市は、単純な物語では語れない街です。南端には阪急と能勢電鉄が交わる高架の駅と百貨店があり、その数駅先の丘の上では、65歳以上の人口すら減りはじめています。北の山では63年続いたケーブルカーが止まり、同じ北部で市が室町以来の炭焼きの森を天然記念物に指定しました。人は減る見込みなのに、中古住宅を買う人には60万円が出ます。
これらは全部、同時に本当のことです。どれか一つを取り出して「川西市はこうだ」と言うことはできません。
家を持ち続けるか手放すかは、街の状況だけで決まるものではありません。ご家族の事情、ご自身の年齢、これからの暮らし方。そちらのほうが、はるかに大きな要素です。ただ、街の状況を正確に知っておくことは、その判断の土台になります。決めるのはご本人です。私たちにできるのは、判断の材料を、都合よく加工せずにお渡しすることだと考えています。
よくある質問
川西市の人口は、これからどうなると見込まれていますか。
市が令和4年10月にまとめた『市人口推計報告書』では、2007年以降ずっと自然減(生まれる人より亡くなる人が多い状態)が続いており、2015年以降は年におよそ730人の社会減(転出が転入を上回る状態)があるとされています。将来推計は、2031年に約14万3千人、2040年に約13万4千人、2050年に約12万5千人、2060年に約11万7千人です。現在の人口は令和8年3月末現在で151,821人・72,404世帯ですから、2060年にはおおよそ3分の2の規模になるという見通しになります。なお同報告書は、緑台・陽明地区などでは65歳以上人口すら既に減少していると記載しています。高齢者が増える段階を通り過ぎた地区が、すでに市内に出ているということです。
「ふるさと団地再生」の対象になっているのは、どの団地ですか。
市の資料によれば、対象は大和団地、多田グリーンハイツ、清和台の三つです。いずれも昭和40年代初頭からの大規模開発によるもので、市は「急速な高齢化や施設の老朽化など住宅団地の高齢化問題が顕在化している」と明記しています。平成23年度から28年度にかけて再生協議会が置かれ、平成27年度に『ふるさと団地再生の手引き』がまとめられました。このうち大和団地(阪急北ネオポリス)については、大和ハウス工業の公表資料に詳しい数字があります。1966年開発開始、約173万平方メートル、約4,600区画で、2024年3月時点で4,794世帯・10,626人、高齢化率39.3パーセントです。2024年7月19日には、大和ハウス工業と川西市が5項目の連携協定を結んでいます。内容にはコミュニティ形成、住み続けられる仕組みづくり、地域内の移動環境づくりなどが含まれます。
中古住宅を買う人に補助が出ると聞きましたが、本当ですか。
2025年7月から、川西市の「子育て住宅総合支援事業補助金」が始まっています。兵庫県が2025年3月に第2弾として川西市と猪名川町を「子育て住宅促進区域」に指定したことを受けたものです。対象区域は市内の10ニュータウン(日生ニュータウン、大和団地、清和台、けやき坂、多田グリーンハイツ、鶯台、萩原台、湯山台、鶯が丘、南野坂)で、補助額は新築住宅の購入に100万円、中古住宅の購入に60万円、県外からの民間賃貸への転入に25万円、住宅への転用改修に最大60万円とされています。ご自宅がこの10地区に入っているなら、買う側にとっての条件はその分だけ良くなっているということになります。ただし補助には要件があり、制度は年度によって変わりうるものですので、実際に検討される際は市の最新の案内でご確認ください。
山の手のニュータウンは、災害の面では安全なのですか。
高いところにあるから安全、とは言い切れません。市の防災マップの案内によれば、土砂災害警戒区域について紙面版から変更のあった地区として、加茂2丁目、久代2丁目、鼓が滝3丁目、緑台4丁目から7丁目、水明台1丁目・3丁目、平野3丁目が挙げられています。緑台や水明台といった丘の上の住宅地が含まれています。丘を削って造成した住宅地は、造成でできた斜面や擁壁を抱えていますから、土砂災害の観点では平地とは別のリスクを持ちます。また、令和8年3月27日に淀川水系一庫大路次川(一庫ダム下流)の浸水想定区域が新規指定されましたが、令和5年度発行の紙の防災マップには反映されておらず、反映されているのはWeb版のみです。お手元の紙のマップが古い可能性がありますので、一度Web版でご自宅の住所を確認されることをお勧めします。売却時には、土砂災害警戒区域に該当するかどうかは買主に伝えるべき事項にあたります。
ニュータウンの小学校の統合は、結局どうなったのですか。
実行されていません。市の公表資料によれば、市教育委員会は2015年8月に、緑台小学校と陽明小学校、清和台小学校と清和台南小学校という二組の統合を決定しました。いずれもニュータウン地区の学校です。しかし2016年6月、児童数の減少に「一定の歯止めがかかる可能性」を認めて統合計画を再検討することとし、保護者や地域に謝罪しています。以後、統合は行われていません。統合するとも、しないとも確定していない状態が続いているということです。学区は子育て世帯が住まいを選ぶときの重要な条件ですから、この不確定さは、その地区の住宅を買おうとする人にとって判断材料が一つ欠けている状態だと言えます。なお、統合対象だった緑台・陽明という地区名は、市の人口推計報告書で「65歳以上人口すら既に減少している」と名指しされた地区名と重なっています。
この記事で参照した資料
- 川西市|川西市の概要(人口・世帯数・海抜)
- 川西市|川西市の位置・面積・隣接自治体
- 川西市|市人口推計報告書(令和4年10月)
- 川西市|統計要覧 令和4年度版(DID人口ほか)
- 川西市|ふるさと団地再生
- 大和ハウス工業|阪急北ネオポリス(大和団地)に関する川西市との連携協定
- 川西市|子育て住宅総合支援事業補助金
- 神戸新聞|川西市の子育て住宅補助(ニュータウン向け)
- 川西市|空き家対策・マンション管理適正化推進計画
- 能勢電鉄|通勤・通学(日生エクスプレス、川西池田駅への徒歩時間)
- 川西市|キセラ川西(中央北地区)
- 神戸新聞|川西市立総合医療センター開院
- エイチ・ツー・オー リテイリング|川西阪急スクエア グランドオープン
- 川西市|駅前再生/全国市町村再開発連絡協議会
- 川西市|小学校統合計画の再検討について
- 川西市|防災マップ(浸水想定区域・土砂災害警戒区域)
- 神戸新聞|妙見の森ケーブル、63年の歴史に幕
- 能勢電鉄|妙見の森事業終了のお知らせ
- 川西市|黒川 台場クヌギの森(市指定天然記念物)
- 川西市|観光案内(清和源氏発祥の地)
※本記事は上記の公表資料および報道に基づいて構成しています。裏付けの確認できなかった事項については、あえて記載していません。補助制度や区域指定の内容は変更されることがありますので、実際のご検討にあたっては市の最新の案内をご確認ください。
FREE ASSESSMENT
この記事を読んだ方へ。まずは、無料査定から。
ご入力およそ60秒。査定無料・秘密厳守・しつこい営業はいたしません。
お電話(078-392-2300)でも承ります。
入力が手間な方は10秒LINE査定へ。