北区でローンを完済している方へ|売却損の特例は、買い換えないと1円も使えません

北区で築古のマンションや戸建を売るとき、ほとんどの方が同じ条件に当てはまります。住宅ローンは、もう完済している。
1970年代から1990年代に分譲された鈴蘭台・唐櫃台・泉台・南五葉・有野町といった住宅地では、30年の返済が終わっている世帯が大半です。それ自体は喜ばしいことですが、売却損が出たときの税制については、これが決定的な制約になります。
マイホームの売却損を給与や年金と損益通算できる特例は2つあります。そのうち買換えを必要としない「ローン残ありパターン」は、売買契約日の前日に住宅ローンの残高があることが要件です。完済していると、この道は使えません。残るのは買換えパターンだけ——つまり、新しい家を買わなければ1円も戻りません。
この記事では、国土交通省の不動産情報ライブラリに登録された取引価格情報をもとに当社が集計した北区の成約データを使い、実額で説明します。
まず、2つの特例の違いを正確に
| — | 買換えパターン | ローン残ありパターン |
|---|---|---|
| 正式名称 | 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 | 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 |
| 買換えの要否 | 必要(新しいマイホームの取得が要件) | 不要 |
| 売った家のローン | 残高がなくても可 | 売買契約日の前日に償還期間10年以上の残高が必要 |
| 買った家のローン | 償還期間10年以上の残高が必要 | — |
| 通算できる額 | 譲渡損失の額(上限なし) | ローン残高−売却価額が限度 |
| 所有期間 | 売った年の1月1日で5年超 | |
| 繰越 | 翌年以後3年間(合計所得金額3,000万円以下の年に限る) | |
完済している方は、右の列が最初から消えます。そして左の列を使うには、新居を買い、しかもその新居に償還期間10年以上の住宅ローンを組む必要があります。
神戸市北区のご自宅が、いま実際にいくらで売れるか。この記事の取引データと、間取り・築年・接道などの条件を突き合わせて、具体的な金額でお出しします。
査定は無料です。その後の売却をお約束いただく必要はありません。
株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
唐櫃台のマンション830万円で計算します
前提:唐櫃台のマンション(唐櫃台徒歩10分・85㎡・1994年築)を830万円で売却。1996年に2,600万円(うち建物1,300万円)で購入し、所有30年。住宅ローンは完済済み。
| 項目 | 金額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 830万円 | 実際の成約価格 |
| 建物の減価償却費 | 526.5万円 | 1,300万円×0.9×0.015×30年(非事業用RC) |
| 取得費 | 2,073.5万円 | 2,600−526.5 |
| 譲渡費用 | 34.5万円 | 仲介手数料34.0万円+印紙税5,000円 |
| 譲渡損失 | ▲1,278.0万円 | 830−2,073.5−34.5 |
1,278万円の損失が出ています。これをどう扱えるかが、ローンの有無で正反対になります。
| — | A:売って賃貸に移る | B:買い換える(新居にローン) |
|---|---|---|
| 使える特例 | なし | 買換えパターン |
| 通算できる額 | 0円 | 1,278.0万円 |
| 戻る税額(課税所得400万円の場合) | 0円 | 約257.0万円 |
差は約257.0万円です。内訳は次のとおりで、売った年と繰越3年の計4年で使い切る計算になります。
| 年 | 使える損失 | 減る所得税 | 減る住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 売った年 | 400万円 | 38.0万円 | 40.0万円 | 78.0万円 |
| 繰越1年目 | 400万円 | 38.0万円 | 40.0万円 | 78.0万円 |
| 繰越2年目 | 400万円 | 38.0万円 | 40.0万円 | 78.0万円 |
| 繰越3年目 | 78万円 | 15.1万円 | 7.8万円 | 22.9万円 |
| 合計 | 約257.0万円 | |||
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10秒LINE査定 → 今いくら?がすぐわかるただし、買換えパターンには現実的な壁があります
「では買い換えればいい」と単純には言えません。要件を並べます。
- 買換資産に償還期間10年以上の住宅ローン残高があること——現金で買うと使えません。そして高齢の方ほど、10年以上のローンは組みにくくなります
- 買換資産は、譲渡の年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得すること
- 取得の日から翌年12月31日までに居住すること(または居住見込み)
- 買換資産の床面積50㎡以上であること
- 売った資産は、売った年の1月1日で所有期間5年超であること
- 繰越控除を受けられるのは、その年の合計所得金額が3,000万円以下の年に限られること
「北区の家を売って、駅前の便利なマンションに住み替える」という計画なら要件を満たせます。逆に「売って賃貸に移る」「売って子ども世帯と同居する」「現金で小さな家を買う」という選択では、特例は使えません。
売却の相談より先に、住み替え先をどうするかを決めておいてください。順番が逆になると、選べたはずの道が閉じます。
令和8年度改正で、買換資産に新しい制限が加わりました
この特例は、もともと令和7年12月31日までの譲渡が対象でした。令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)および国土交通省「令和8年度税制改正概要」で、「現行の特例措置を2年間(令和8年1月1日〜令和9年12月31日)延長する」とされています。
あわせて一定のハザードエリア内に所在する買換資産を対象外とする見直しが入りました。制限がかかるのは「買い換えて取得する側」の物件です。買う予定の物件がこの制限に当たると、せっかく買い換えても特例が使えません。契約前にご確認ください(ハザードエリアの具体的な範囲については政省令等での確認が必要です。この点は確度70%程度の理解として記載しています)。
なお、国税庁タックスアンサーの本記事執筆時点の記載は「令和7年12月31日まで」のままです。
北区で、この論点が特に効く理由
北区の中古マンションは、成約事例30件のうち11件——ちょうど半数が800万円以下です。有野町140万円、南五葉270万円、花山東町330万円、有馬町380万円、日の峰620万円、泉台680万円、唐櫃台830万円。1970年代から1990年代の分譲価格を下回っている住戸が多数を占めます。
一方で北区は成約の約7割が戸建で、戸建の中央値は2,400万円。土地面積の中央値は広く、こちらも購入時の価格を下回るケースが出ています。
つまり「損は出ているが、ローンは終わっている」という組み合わせが、北区でいちばん多く発生します。町別の価格差は町名ひとつで、値段が9倍変わる、高齢化が進む団地の実態は高齢化率43%の町で、土地225㎡の戸建が1,700万円で動いている(泉台)で扱っています。
買換えができない場合に、ほかに手はあるか
正直に申し上げると、譲渡損失については代替の制度がありません。ただし、損が出ているなら譲渡所得税そのものは発生しません。「戻らない」だけで、「取られる」わけではない点は押さえておいてください。
そのうえで、確認していただきたいことが2つあります。
- 本当に損が出ているかを、取得費で確かめる——購入時の契約書がないと取得費は売却価格の5%しか認められず、実際には損をしていても計算上は利益が出て課税されます。830万円の物件なら取得費41.5万円とされ、譲渡所得は754万円、税額は約153.2万円です。契約書があれば0円。ここが最大の分かれ目です
- 相続した住戸なら、別の制度を見る——ご自身が住んでいない相続物件はそもそもマイホームの特例の対象外です。かわりに空き家の3,000万円特別控除や取得費加算を検討することになります
費用と税金の全体像は北区の不動産売却にかかる費用と税金で扱っています。
よくある質問
Q. 住宅ローンを完済しています。売却損の特例は使えますか?
A. 買い換える場合に限り使えます。買換えを必要としない「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があることが要件です。完済していると使えません。残るのは「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」で、こちらは新しいマイホームを取得し、その新居に償還期間10年以上の住宅ローン残高があることが要件になります。
Q. 売って賃貸に移る場合はどうなりますか?
A. どちらの特例も使えません。唐櫃台のマンション830万円・1996年に2,600万円で購入という前提で試算すると、譲渡損失は1,278万円ですが、買い換えなければ通算できる額は0円です。買い換えて課税所得400万円の方が4年かけて使い切った場合は約257.0万円が戻る計算ですので、その差がそのまま生じます。売却の相談より先に、住み替え先をどうするかを決めておいてください。
Q. 現金で小さな家を買う場合は使えますか?
A. 使えません。買換えパターンは買換資産に償還期間10年以上の住宅ローン残高があることが要件です。現金購入では対象になりません。また買換資産の床面積は50㎡以上である必要があります。
Q. 損が出ているのに税金がかかることはありますか?
A. あります。購入時の売買契約書がないと取得費は売却価格の5%しか認められず、実際には損をしていても計算上は利益が出ます。830万円の物件なら取得費41.5万円とされ、譲渡所得は約754万円、長期譲渡20.315%で税額は約153.2万円です。契約書があれば0円になりますので、権利証・売買契約書・当時の領収書は売却を考え始めた段階で探してください。
Q. 期限はいつまでですか?
A. 令和9年12月31日までの譲渡が対象です。令和8年度税制改正で2年延長されました。あわせて一定のハザードエリア内に所在する買換資産を対象外とする見直しが加えられていますので、買う予定の物件がこの制限に当たらないかを契約前にご確認ください。なお国税庁タックスアンサーの記載は本記事執筆時点で「令和7年12月31日まで」のままです。
まとめ
- 完済していると、買い換えない限り特例は使えません——北区でいちばん多い組み合わせです
- 差は約257.0万円——唐櫃台830万円・課税所得400万円の試算です
- 買換えには新居のローンが必要——現金購入では対象外。高齢の方ほど組みにくい点にご注意ください
- 住み替え先を先に決める——売却を先に決めると、選べたはずの道が閉じます
- 購入時の契約書を探す——なければ損をしていても課税されます。830万円の物件で約153.2万円の差です
北区の相場データは北区の不動産売却のページで、駅別・町丁別に公開しています。
査定は無料で、その後の売却をお約束いただく必要はありません。「買い換えるかどうかで、税金がどれだけ変わるのか」だけを整理したい、というご相談でも構いません。
出典:成約データは国土交通省 不動産情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)に登録された不動産取引価格情報をもとに株式会社Estate&Co.が集計。税制は国税庁タックスアンサーNo.3258・No.3370・No.3390、および令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)・国土交通省「令和8年度税制改正概要」。所得税額は令和8年9月時点の所得税の速算表および復興特別所得税2.1%、住民税は所得割10%で試算しています。掲載の金額はいずれも一定の前提を置いた試算で、取得価額・建物と土地の按分・課税所得は仮定値です。ハザードエリアの範囲および買換資産の個別要件については、最終的に税理士または所轄税務署にご確認ください。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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