灘区の戸建はマンションより高く売れますか?そうとは限らない話

「うちは戸建だから、マンションよりは高く売れますよね」
神戸市灘区でご相談を受けるとき、いちばん多く聞く前提がこれです。土地がついている、建て替えもできる、だからマンションより上——。気持ちはよくわかります。ただ、灘区の実際の成約データを建物の年代で並べ直すと、この前提は途中で一度、ひっくり返ります。
どこでひっくり返るのか。そして、それはご自宅にとって良い知らせなのか、悪い知らせなのか。順に見ていきます。
まず、区全体の数字だけを見ると
国土交通省の成約データ(直近1年・灘区657件)で、いちばん大きな数字だけを取り出すと、こうなります。
- 戸建(土地と建物)209件、中央値4,800万円(土地80㎡・延床110㎡)
- 中古マンション416件、中央値3,100万円(専有70㎡・駅徒歩6分)
差は1,700万円。これだけ見れば「やはり戸建が高い」で終わります。多くの査定サイトが出してくるのも、この形の数字です。
でも、この比較には決定的な穴があります。戸建の中央値の築年は2001年、マンションの中央値の築年は1997年。年代がそろっていない相手を比べているのです。

神戸市灘区のご自宅が、いま実際にいくらで売れるか。この記事の取引データと、間取り・築年・接道などの条件を突き合わせて、具体的な金額でお出しします。
査定は無料です。その後の売却をお約束いただく必要はありません。
株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
ひっくり返るのは、2001〜2010年の帯
年代をそろえると、こう並びます。
- 1980年以前——戸建1,600万円(31件)/マンション690万円(79件)。戸建が2.3倍
- 1981〜2000年——戸建3,100万円(71件)/マンション2,800万円(189件)。ほぼ横並び
- 2001〜2010年——戸建4,400万円(21件)/マンション4,450万円(96件)。逆転
- 2011年以降——戸建5,700万円(81件)/マンション4,950万円(48件)。戸建が上
2001〜2010年の帯で、マンションが戸建を50万円上回りました。金額としては誤差の範囲です。ここで言いたいのは「マンションが勝った」ということではなく、「戸建だから上、という優位は消える帯がある」ということです。
理由ははっきりしています。灘区の戸建は土地の中央値が80㎡——約24坪です。都市部の狭小地で、駐車場が取れないケースも珍しくない。一方この年代のマンションは専有75㎡あり、駅徒歩6分圏に立っています。買主が「戸建の土地」に払ってくれるプレミアムを、駅距離と面積が食い切ってしまう水準なのです。

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逆に、1980年以前の帯では戸建が2.3倍です。ここは、まったく違う理由で説明がつきます。
灘区の更地(土地のみ)の成約は29件、中央値3,400万円、80㎡。1㎡あたり約38万円です。この単価に、築古戸建の土地中央値80㎡をかけると、約3,040万円になります。
ところが、1980年以前に建った戸建の成約中央値は1,600万円。土地から計算した数字の、半分ほどです。

ここは慎重に読んでください。「築古戸建は土地の半値でしか売れない」と結論づけるのは早すぎます。更地として売買される29件は、そもそも接道条件がよく、整形で、すぐ建てられる土地が中心になりがちです。一方、築古戸建には、幅員4m未満の道路にしか接していない土地や、旗竿地、急な傾斜地が混ざります。比較しているのは、土地の質がそろっていない2つの集団です。
それでも、実務の感覚としてはこう申し上げられます。灘区の築45年を超えた戸建は、「建物の価値」ではなく「土地としていくらか」で値がつく段階に入っています。だとすれば、売り出す前に見るべきは、内装ではなく、接道の幅と、境界標の有無です。
売るタイミングを分けるもの
年代帯によって、意識すべきことが変わります。
築25年より新しい戸建をお持ちの方へ。灘区では2011年以降の戸建が81件と、この年代の供給の中では多いほうです。同じ帯の売り物が同時期に並ぶと、価格ではなく設備と方角で比べられます。急ぐ理由がないなら、周辺の売り出し状況を見てからでも遅くありません。
築45年を超えた戸建をお持ちの方へ。こちらは時間が味方をしません。空き家として3年以上放置すると、特定空家等に指定される可能性があり、そうなると固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が外れます。税額が実質3〜4倍になるケースがあります。
また、相続で取得した空き家を売る場合の「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」には期限があります。相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。制度自体も期限つきで延長されてきた経緯があるため、該当しそうな方は早めに税理士へご確認ください。
やってはいけないこと
ひとつめ。「戸建だから」で価格を決める。この記事の通り、2001〜2010年帯では優位が消えます。年代と面積をそろえた比較を出してもらってください。出せない会社は、データを見ていません。
ふたつめ。築古戸建で、先に解体してしまう。更地にすると、その年の1月1日時点で建物がなければ翌年から住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がります。売れるまでの期間が読めないうちの解体は、コストが積み上がるだけになりかねません。買主が古家付きのまま買うケースも十分あります。
みっつめ。境界が未確定のまま売り出す。灘区の80㎡クラスの土地では、境界が50cmずれるだけで数十万円が動きます。測量には1〜2か月かかります。売り出してから慌てると、その分だけ引き渡しが遅れます。
まずやること
- 建物の建築年(登記事項証明書の「原因」欄)を確認する
- 接道の幅員と、間口の広さを測る(メジャーで十分です)
- 境界標が四隅にあるか、現地で目視する
- その情報を持って、年代をそろえた比較で査定を出してもらう
ご自宅がいくらで売れるか、調べてみませんか
ここまでの数字は、あくまで灘区全体の中央値です。同じ区のなかでも、築年・土地の形・接道条件・駅距離で価格は大きく変わります。
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。国土交通省の成約データと、各自治体の統計をもとに、お住まいの地域の実勢に沿った査定をご提供しています。
「いま売ったらいくらか」を知っておくだけでも、判断の材料になります。売却を決めていない段階でのご相談も承っています。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。土地の形状・間口は成約価格情報には記録がないため、これらを扱った集計は不動産取引価格情報に基づきます。
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