旧耐震の家が1軒もない町。長田区・若松町で30年に起きたこと

神戸市長田区の若松町で、直近1年に成約した17件。その建築年を並べると、あることに気づきます。
1981年以前に建てられた建物が、1件もありません。
旧耐震基準の建物がゼロ。神戸市内でこれは珍しいことです。理由は、この町が一度まるごと失われ、作り直されたからです。
国土交通省の成約データと、神戸市長田区が公表している震災の記録から見ていきます。
若松町では、どんな建物が動いていますか?
結論:成約17件のうち旧耐震は0件。築2001年以降が10件を占めます。

内訳は1982〜1990年が1件、1991〜2000年が6件、2001〜2010年が6件、2011年以降が4件。
1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建物は、住宅ローンの審査や住宅ローン控除の要件で不利になることがあります。買主にとっては大きな判断材料です。若松町では、その層の売り物がそもそも市場に出てきていません。
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なぜ古い建物が残っていないのですか?
結論:1995年の震災で、長田区の建物が大きく失われたからです。

神戸市長田区が公表している区の概要に、被害の記録が残っています。
- 直接死者 921名
- 全半焼 4,772棟・約30ヘクタール(神戸市全体の全半焼の約6割)
- 全半壊 23,803棟(神戸市全体の全半壊の約2割)
神戸市全体で焼けた面積の約6割が長田区でした。若松町は新長田駅の北側にあたり、被害の中心に近い場所です。
その後、この地域は復興のなかで整備が進みました。2009年に若松公園へ鉄人28号モニュメントが完成し、2010年には旧二葉小学校を改修した「ふたば学舎」が開館。2019年には新長田合同庁舎(職員約1,050人)が完成しています。
つまり若松町の建物が新しいのは偶然ではありません。30年前に一度失われ、そこから積み上げ直した結果が、いまの中古市場に表れています。
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結論:戸建は土地50㎡・築2017年で2,800万円。狭小地の三階建てが中心です。

戸建6件の中央値は総額2,800万円、土地50㎡(約15坪)、延床80㎡。延床が土地を上回っているので、三階建てが標準です。中古マンションは11件で1,700万円、専有65㎡、築2001年でした。
一方、人口は5年で2,928人から2,822人へ3.6%減っています。世帯数は1,720から1,768へ2.8%増加。1世帯あたり1.60人。年少人口比率は10.0%から7.8%へ、2.2ポイント下がりました。
建物は新しくなりましたが、住む人は減っています。長田区全体の人口も5年で2.5%減っています。
売主にとって、この数字は何を意味しますか?
1つめ。建物の新しさは、この町では差別化になりません。周囲も新しいからです。旧耐震ゼロの市場では「新耐震である」ことは前提であって、売りにはなりません。差がつくのは土地の形、接道、駐車の可否です。
2つめ。買主のローンは通りやすい市場です。築2001年以降が17件中10件。金融機関の担保評価で建物の残存年数が問題になりにくく、買主の資金計画が組みやすいということです。これは売主にとって、商談が流れにくいという利点になります。
3つめ。土地50㎡という規模が標準だと理解してください。もし土地が80㎡以上あるなら、この町では希少です。分割や、より広い間取りを求める層への訴求が可能になります。逆に40㎡台なら、周辺と比べて狭い部類に入ります。
やらないほうがよいこと:震災前の記憶や、隣接する別の町の古い相場観で価格を考えることです。若松町の建物は30年で入れ替わりました。市場も入れ替わっています。
まとめ
- 若松町の直近1年の成約17件に、旧耐震(1981年以前)は0件
- 長田区の震災被害は全半焼4,772棟・約30ha(神戸市全体の全半焼の約6割)、全半壊23,803棟、直接死者921名
- 戸建は2,800万円・土地50㎡・築2017年(6件)、マンションは1,700万円・築2001年(11件)
- 人口は5年で▲3.6%、年少人口比率は10.0%→7.8%
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。若松町の売却について、狭小地の条件と接道を踏まえた査定をご提供しています。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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