畑がついてくる土地は、どう売るのか|神戸市西区

「実家の裏に、畑が少しついてるんです。母がずっと野菜を作っていて。もう誰も作らないので、家と一緒に売ろうと思うんですが」
神戸市西区で、ときどきいただくご相談です。そして、この「少しの畑」が、売却の手続きをまるごと変えてしまうことがあります。
家と畑は、同じ土地でも、まったく別の法律で動いているからです。
まず、登記地目を確認してください
やることは1つだけです。法務局で登記事項証明書を取り、地目(ちもく)の欄を見る。ここが「宅地」なのか「田」「畑」なのかで、話がまったく変わります。
地目が「田」または「畑」なら、それは農地法上の農地です。実際に耕作をやめて何年も経っていても、地目が農地のままなら、農地として扱われます。「もう畑じゃないから大丈夫」は通りません。
農地を売るには、次のどちらかが必要になります。
- 農地のまま、農家に売る——農地法3条の許可(農業委員会)。買主が農業従事者であることなどの要件があります
- 宅地などに転用して売る——農地法5条。市街化区域内なら「届出」で済みますが、市街化調整区域なら「許可」が必要で、許可が下りないことも珍しくありません
この違いが決定的です。市街化調整区域の農地は、宅地として売れない可能性がある。買主が住宅を建てられないなら、宅地としての値段はつきません。

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西区には、もう一つ、独自のルールがあります
ここが西区の特殊なところです。
神戸市には「人と自然との共生ゾーンの指定等に関する条例」があり、西区と北区が対象になっています。共生ゾーン内の17,935ヘクタールは、「農業保全」「集落居住」「環境保全」「特定用途」の4つの農村用途区域に区分されています。
この区域では、建築物の新築・増築・改築・用途変更、そして宅地の造成や土地の形質変更などを行う場合、着手する30日前までに市への届出が必要です(出典:神戸市「人と自然との共生ゾーン」)。
また西区では、106集落のうち96集落(91%)で里づくり協議会が設立され、地域が独自の「里づくり計画」を持っています。地域によって、何が建てられるかのルールが違うということです。
なお2015年以降、7回にわたって規制緩和が行われており、後継者による新築、新規移住者の住宅建築、古民家を活用したカフェの開業などが可能になっています。「調整区域だから何もできない」という時代の情報のまま止まっている方が多いので、ここは必ず最新を確認してください。

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直近1年、西区の成約は809件。内訳を見ると、農地の成約が9件ありました。林地が1件です。
9件という数字をどう見るか。県内19市区で比べると、姫路市24件、加古川市17件、淡路市14件に次ぐ規模で、神戸市9区のなかでは北区の6件を上回って最多です。取引されていないわけではありません。ただ、宅地(土地のみ50件)と比べれば、動く量は5分の1以下です。

参考までに、西区の更地(土地のみ)は50件、中央値1,450万円、面積188㎡、1㎡あたり約8.85万円です。戸建は416件で中央値2,600万円(土地165㎡)。宅地の市場は厚い。だからこそ、宅地として売れるかどうかが、金額を大きく分けます。
順番を間違えないでください
農地が絡む売却では、順番がすべてです。
1. 登記事項証明書で地目を確認する(法務局・1通600円)
2. 都市計画情報で、市街化区域か市街化調整区域かを調べる(神戸市の都市計画情報検索で確認できます)
3. 共生ゾーンの農村用途区域に入っているかを確認する(神戸市経済観光局/該当区役所)
4. 神戸市農業委員会に、転用の見込みを相談する
5. そのうえで、査定を依頼する
1〜4が終わる前に査定を取っても、「転用できれば◯円、できなければ◯円」という幅のある答えしか返ってきません。幅を確定させてから動くほうが、結果的に早い。
やってはいけないこと
ひとつめ。許可を取る前に売買契約を結ぶ。農地法の許可を条件とする契約(停止条件付き)にすることは可能ですが、許可が下りずに白紙に戻るリスクがあります。買主にも先に説明が必要です。
ふたつめ。「もう耕していないから宅地扱い」と自己判断する。登記地目が農地なら農地です。無許可で転用すると、農地法違反として原状回復命令の対象になり得ます。
みっつめ。家と畑をまとめて1つの査定にしてもらう。手続きも買主層も別です。宅地部分と農地部分は、分けて金額を出してもらってください。まとめると、農地の不確実性が宅地の値段まで引き下げます。
まずやること
- 法務局で登記事項証明書を取り、地目を確認する
- 神戸市の都市計画情報検索で、市街化区域か調整区域かを調べる
- 共生ゾーンの農村用途区域に該当するか、区役所に問い合わせる
- 神戸市農業委員会に転用の見込みを相談する
- 宅地部分と農地部分を分けて査定を依頼する
※法令や区域指定は改正・変更されます。実際の可否は神戸市農業委員会および所管部署にご確認ください。
ご自宅がいくらで売れるか、調べてみませんか
ここまでの数字は、あくまで西区全体の中央値です。同じ区のなかでも、地目・区域区分・接道条件で価格は大きく変わります。
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。国土交通省の成約データと、各自治体の統計をもとに、お住まいの地域の実勢に沿った査定をご提供しています。農地が含まれる場合は、宅地部分と分けてご説明します。
「いま売ったらいくらか」を知っておくだけでも、判断の材料になります。売却を決めていない段階でのご相談も承っています。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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