須磨区で売って損が出たら|繰り越せるのは3年。使い切れなかった分は消えます

須磨ニュータウンで売却のご相談をお受けすると、こう言われることがあります。「損が出ても、税金が戻るから大丈夫なんですよね」
半分は正しく、半分は違います。マイホームの売却損は給与所得などと損益通算でき、控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越せます。ただし「通算できる額」と「実際に使える額」は別ものです。
須磨区の実例で計算すると、通算できる額は500万円。単純に税率30.42%を掛ければ約152.1万円になりますが、実際に戻るのは約95.2万円でした。差は約57万円。しかも所得の小さい方の場合、3年繰り越しても使い切れずに消える部分が出ます。
この記事では、国土交通省の不動産情報ライブラリに登録された取引価格情報をもとに当社が集計した須磨区の成約データを使い、繰越控除を「どう使い切るか」を実額で説明します。
須磨区で買値割れが起きる構造
須磨ニュータウンの成約価格を、築年順に並べます。
| 町名 | 最寄駅 | 専有面積・築年 | 成約価格 |
|---|---|---|---|
| 高倉台 | 妙法寺 | 65㎡・1974年 | 100万円 |
| 菅の台 | 名谷 | 45㎡・1975年 | 240万円 |
| 横尾 | 妙法寺 徒歩10分 | 75㎡・1982年 | 300万円 |
| 白川台 | 名谷 | 80㎡・1978年 | 460万円 |
| 友が丘 | 名谷 | 70㎡・1970年 | 530万円 |
| 竜が台 | 名谷 徒歩7分 | 65㎡・1977年 | 1,000万円 |
| 西落合 | 名谷 徒歩5分 | 75㎡・1978年 | 1,400万円 |
| 中落合 | 名谷 徒歩10分 | 90㎡・1982年 | 1,500万円 |
これらの住戸を中古で買い直した方——つまり分譲時の所有者ではなく、2000年代・2010年代に取得された方が、いま売ると買値を下回ります。須磨区のマンションは市全体では㎡単価が16.3万円から18.9万円へ約16.0%上がっていますが、上がっているのは海側で、ニュータウン側の名谷は13.3万円です。
神戸市須磨区のご自宅が、いま実際にいくらで売れるか。この記事の取引データと、間取り・築年・接道などの条件を突き合わせて、具体的な金額でお出しします。
査定は無料です。その後の売却をお約束いただく必要はありません。
株式会社Estate&Co.(不動産売却専門店)/宅地建物取引業免許 兵庫県知事(2)第12171号 会社概要
まず、通算できる額には上限があります
マイホームの譲渡損失を給与所得などと損益通算できる特例は2つあります。
- 買換えパターン(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)——新しいマイホームの取得が要件。通算できるのは譲渡損失の額
- ローン残ありパターン(特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)——買換え不要。ただし通算できるのは「住宅ローン残高−売却価額」が限度
前提:西落合のマンション(名谷徒歩5分・75㎡・1978年築)を1,400万円で売却。2016年に2,400万円(うち建物1,000万円)で中古購入、所有10年。売買契約日の前日の住宅ローン残高1,900万円。
| 項目 | 金額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 1,400万円 | 実際の成約価格 |
| 建物の減価償却費 | 135万円 | 1,000万円×0.9×0.015×10年 |
| 取得費 | 2,265万円 | 2,400−135 |
| 譲渡費用 | 53.8万円 | 仲介手数料52.8万円+印紙税1万円 |
| 譲渡損失 | ▲918.8万円 | 1,400−2,265−53.8 |
| 損益通算できる額 | 500万円 | ローン残高1,900万円−売却価額1,400万円 |
譲渡損失は918.8万円ありますが、ローン残ありパターンで通算できるのは500万円までです。ここまでは、ご存じの方も増えてきました。
読みながら、今の価格だけ先に知る。
10秒LINE査定 → 今いくら?がすぐわかる【本題】500万円通算しても、152万円は戻りません
ここからが、ほとんど説明されていない部分です。
「500万円を通算できる」と聞くと、所得税・住民税の合計税率30.42%を掛けて約152.1万円が戻ると考えたくなります。実際には、そうなりません。
損益通算は、課税所得を0円より下には下げられないからです。
ケース1:会社員・課税所得350万円の方
| 年 | 使える損失 | 課税所得 | 減る所得税 | 減る住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売った年 | 350万円 | 350→0万円 | 27.8万円 | 35.0万円 | 62.8万円 |
| 翌年(繰越1年目) | 150万円 | 350→200万円 | 17.4万円 | 15.0万円 | 32.4万円 |
| 翌々年 | — | 使い切り | — | — | — |
| 合計 | 約95.2万円 | ||||
500万円を2年かけて使い切って、戻るのは約95.2万円。単純計算の152.1万円とは約57万円の差があります。
理由は税率です。課税所得350万円の方の所得税率は20%ですが、損失を当てて課税所得が200万円まで下がると、そこから先は10%の区分になります。高い税率の部分から先に消えていくため、後半ほど効果が小さくなります。
ケース2:年金生活者・課税所得100万円の方
所得が小さい方では、話が変わります。
| 年 | 使える損失 | 減る税額 | 残る損失 |
|---|---|---|---|
| 売った年 | 100万円 | 15.1万円 | 400万円 |
| 繰越1年目 | 100万円 | 15.1万円 | 300万円 |
| 繰越2年目 | 100万円 | 15.1万円 | 200万円 |
| 繰越3年目 | 100万円 | 15.1万円 | 100万円 |
| 期限切れ | 合計60.4万円 | 100万円が消滅 | |
繰り越せるのは翌年以後3年間まで。売った年と合わせて4年かけても、課税所得100万円の方は400万円分しか使えず、残る100万円は使われないまま消えます。
ここから導かれる結論は、あまり語られていないものです。損失が大きいほど得になるわけではありません。ご自身の課税所得のおよそ4年分を超える損失は、税務上は活用しきれません。
繰越の年も、毎年の確定申告が必要です
見落としが多いのがここです。売った年に確定申告をすれば、あとは自動的に繰り越されるわけではありません。
繰越控除を受けようとする各年について、確定申告書を提出する必要があります。1年でも申告を飛ばすと、そこで繰越が途切れます(この点は確度85%程度の理解として記載しています。必ず税理士または所轄税務署にご確認ください)。
会社員の方は、年末調整だけで済ませてしまうと繰越が使えません。売った翌年からの3年間は、毎年2月16日〜3月15日に確定申告をしてください。手間はかかりますが、ケース1では2年目だけで32.4万円の差になります。
あわせて、次の制限があります。
- 繰越控除を受けられるのは、その年の合計所得金額が3,000万円以下の年に限られます
- 売った年の1月1日で所有期間が5年超であること
- ローン残ありパターンは、売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があり、売却価額がその残高を下回ること
期限は令和9年12月31日です
この2つの特例は、もともと令和7年12月31日までの譲渡が対象でした。令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)および国土交通省「令和8年度税制改正概要」で、「現行の特例措置を2年間(令和8年1月1日〜令和9年12月31日)延長する」とされています。
あわせて一定のハザードエリア内に所在する買換資産を対象外とする見直しが加えられました。制限がかかるのは「買い換えて取得する側」の物件です(買換えパターンを使う場合。この点は確度70%程度の理解として記載しています)。
なお、国税庁タックスアンサーの本記事執筆時点の記載は「令和7年12月31日まで」のままです。申告の際は最新のタックスアンサーをご確認ください。
使えないケース
- 相続した家で、ご自身が住んでいない——マイホームの特例ですので対象外です。須磨ニュータウンでは「親から相続した住戸を売る」ケースが多く、ここで外れる方が相当数いらっしゃいます
- 所有期間が5年以下——売った年の1月1日で判定します
- ローン残高が売却価額以下——ローン残ありパターンでは差額が出ないため通算できません。買換えパターンを検討することになります
- 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日を過ぎた
- 別荘・投資用・賃貸中の物件——マイホームに限られます
よくある質問
Q. 500万円通算できるなら、152万円戻るのですか?
A. 戻りません。損益通算は課税所得を0円より下には下げられないため、実際に戻る額はご自身の課税所得の大きさで決まります。課税所得350万円の会社員の場合、売った年に350万円、翌年に150万円を使って合計約95.2万円です。単純に30.42%を掛けた152.1万円とは約57万円の差が出ます。高い税率の部分から先に消えるため、後半ほど効果が小さくなるためです。
Q. 3年で使い切れないとどうなりますか?
A. 使われないまま消えます。繰り越せるのは翌年以後3年間までです。課税所得100万円の方が500万円を通算する場合、売った年と繰越3年で400万円分しか使えず、残る100万円は消滅します。目安として、ご自身の課税所得のおよそ4年分を超える損失は活用しきれないとお考えください。売却前に源泉徴収票で課税所得を確認しておくと、戻る額の見当がつきます。
Q. 売った年に申告すれば、あとは自動で繰り越されますか?
A. いいえ。繰越控除を受けようとする各年について確定申告書を提出する必要があり、1年でも飛ばすとそこで繰越が途切れます(確度85%程度の理解です)。会社員の方が年末調整だけで済ませると使えません。売った翌年から3年間は、毎年2月16日〜3月15日に確定申告してください。なお繰越控除を受けられるのは、その年の合計所得金額が3,000万円以下の年に限られます。
Q. 相続した実家を売って損が出た場合も使えますか?
A. 使えません。この2つの特例はマイホーム(居住用財産)を売った場合の制度で、ご自身が居住していたことが要件です。相続した住戸にご自身が住んでいなければ対象外になります。須磨ニュータウンではこのケースが多いため、事前の確認が特に重要です。
Q. いつまでに売ればいいですか?
A. 令和9年12月31日までの譲渡が対象です。令和8年度税制改正で2年延長されました(国土交通省「令和8年度税制改正概要」に「現行の特例措置を2年間(令和8年1月1日〜令和9年12月31日)延長する」と記載)。加えて、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限も同時に走ります。空き家のまま置いている場合は、こちらのほうが先に来ることがあります。
まとめ
- 通算できる額と、戻る額は違います——500万円通算しても、課税所得350万円の方で約95.2万円。単純計算の152.1万円とは約57万円の差です
- 目安は課税所得の4年分——それを超える損失は、3年繰り越しても消えます
- 繰越の各年も確定申告が必要——年末調整だけでは使えません
- 期限は令和9年12月31日——令和8年度税制改正で2年延長されました
- 相続した住戸は対象外——ご自身が住んでいたことが要件です
須磨区の相場データは須磨区の不動産売却のページで駅別・団地別に公開しています。費用と税金の全体像は須磨区の不動産売却にかかる費用と税金、団地別の水準は高倉台(専有60㎡が225万円)をご覧ください。
査定は無料で、その後の売却をお約束いただく必要はありません。「うちの課税所得だと、いくら戻るのか」という試算のご相談でも構いません。
出典:成約データは国土交通省 不動産情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)に登録された不動産取引価格情報をもとに株式会社Estate&Co.が集計。税制は国税庁タックスアンサーNo.3370・No.3390、および令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)・国土交通省「令和8年度税制改正概要」。所得税額は令和8年9月時点の所得税の速算表および復興特別所得税2.1%、住民税は所得割10%で試算しています。掲載の金額はいずれも一定の前提を置いた試算で、取得価額・建物と土地の按分・課税所得は仮定値です。繰越控除の各年における申告要件およびハザードエリアの範囲については、最終的に税理士または所轄税務署にご確認ください。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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