垂水区で親が施設に入りました。家はいつ売ればいいですか?

去年の秋、母が施設に入りました。家はそのまま。週に一度、換気に行っています。売ることは考えているけれど、母はまだ元気だし、本人も「いつか帰る」と言っている。だから、もう少し様子を見よう——。
神戸市垂水区で、いちばん多いご相談です。そしてこの「もう少し」に、はっきりした期限があることを、ほとんどの方がご存じありません。
期限は2つ。ひとつは税金の期限で、もうひとつはお母様の判断能力の期限です。後者のほうが、はるかに重い。
期限1——住まなくなってから3年
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除は、いま住んでいる家だけの制度ではありません。以前住んでいた家でも使えます。ただし、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です(出典:国税庁 タックスアンサーNo.3302)。
たとえば2025年10月に施設へ入られたなら、2028年12月31日までが期限になります。
3,000万円というのは、譲渡所得——売却価格から取得費と譲渡費用を引いた利益——から控除できる金額です。長く持っていた家ほど取得費が小さく、利益が大きく出やすい。この控除を使えるかどうかで、手取りが数百万円変わることがあります。
※親子や夫婦など特別の関係がある人への売却では使えません。また前年・前々年に同じ特例を受けている場合も対象外です。適用可否は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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期限2——こちらのほうが重要です
不動産の売買契約は、所有者本人の意思で結びます。お母様の判断能力が失われると、ご家族であっても代わりに売ることはできません。委任状も、本人に判断能力があるうちに書かれたものでなければ効きません。
その場合に取れる手段は、成年後見制度です。家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらう。ただし、居住用不動産を処分するには、さらに家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。申立てから選任まで数か月、そこから売却許可の手続きにさらに時間がかかります。
そして後見人は、本人の利益のために動きます。「相続税対策で今のうちに売っておきたい」という家族の都合は、原則として通りません。
つまり「もう少し様子を見る」は、選択肢が消えていく時間でもあります。これは急かすために書いているのではなく、実際にご相談の場で「あと半年早ければ」と申し上げることが、年に何度もあるからです。

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数字も見ておきましょう。直近1年、垂水区の成約は1,002件。戸建500件、マンション425件、更地77件です。

戸建は、1980年以前が108件で505万円(土地83㎡)、1981〜2000年が121件で1,700万円(土地130㎡)、2001〜2010年が37件で2,700万円、2011年以降が223件で3,700万円。
マンションは、1980年以前が121件で380万円、1981〜2000年が180件で1,400万円、2001〜2010年が73件で2,900万円、2011年以降が48件で4,350万円。
ここで気づいてほしいのは、1980年以前の帯が、戸建108件・マンション121件と、どちらも100件を超えていることです。垂水区は1960〜70年代に大規模な住宅供給があった地域で、いま、その世代の家が一斉に市場に出ています。
そして、その帯の価格は505万円と380万円。供給が多く、価格が低い帯で競争しているということです。同じ帯の売り物が近所に何件も出ている状況で、「もう少し様子を見る」のは、待っている間に競争相手が増えるということでもあります。

逆に、いま売らないほうがよい場合
もちろん、待つべきケースもあります。
- お母様が「帰りたい」と明確に意思表示されている——ご本人の意思に反した売却は、後々ご家族の関係に残ります。数字の話より優先されるべきことです
- 施設が合わず、退所の可能性がある——戻る場所を先に手放すのは危険です
- 相続人になる予定の方の間で、話がついていない——親御様がご存命でも、将来の相続を見据えた話し合いは先にしておいたほうがよい
- お母様に十分な資産があり、売却で得た現金の使い道がない——現金化すると相続税の課税評価は不動産より高くなる傾向があります。この点は税理士にご相談ください
大事なのは「決めない」のではなく、「いつまでに決めるかを決める」ことです。
やってはいけないこと
ひとつめ。名義を子に移してから売る。贈与税がかかります。また、3,000万円特別控除は「その家に住んでいた人」が売る場合の制度です。名義を移すと、この控除が使えなくなる可能性があります。順序を間違えると、税負担が大きく変わります。
ふたつめ。お母様に確認せず、家財を処分する。思い出の品を勝手に捨てられた、という話は、ご家族の関係に深く残ります。売却の話とは別に、必ず一度、ご本人に確認してください。
みっつめ。「元気なうちは大丈夫」と考える。判断能力の低下は、ある日突然わかることがあります。売る可能性があるなら、意思がはっきりしているうちに、方針だけでも書面で残しておくことをおすすめします。任意後見契約という制度もあります。司法書士にご相談ください。
まずやること
- お母様が住まなくなった日を確定させる(住民票の異動日や施設の入所日)
- そこから3年後の12月31日を、カレンダーに書く
- 登記事項証明書で、名義と抵当権を確認する
- お母様の意思がはっきりしているうちに、売却の方針を話し合う
- そのうえで、査定を取る(売ると決めていなくても構いません)
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ここまでの数字は、あくまで垂水区全体の中央値です。同じ区のなかでも、築年・土地面積・駅距離・傾斜の有無で価格は大きく変わります。
株式会社Estate&Co.は神戸市中央区京町に本店を置く不動産売却専門店です。国土交通省の成約データと、各自治体の統計をもとに、お住まいの地域の実勢に沿った査定をご提供しています。
「いま売ったらいくらか」を知っておくだけでも、判断の材料になります。売却を決めていない段階でのご相談も承っています。
この記事の数字の出典について(2026年9月21日 追記)
この記事の件数・価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報(宅地建物取引業者が登録した成約)と不動産取引価格情報(取引当事者へのアンケートに基づく実取引価格)を合わせて集計したものです。本文で「成約」と表記している箇所も、この2種類を合わせた取引を指します。
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